第85話
色々とアレコレソレドレと気にしないで下さい。
いや、マジで。
「で…さっき言った神聖魔法というのは、神話の時代にあったという魔法ですが、それが何か?カーミラ相手に有効とでも?」
ルシウスは、今はスリーピングのお陰で魘されることもなく、良く眠っているフリックに頭を優しげに撫でながら言った。
「あ、ああ。相手は吸血鬼だろう?神聖魔法ならば効くんじゃないかな。ただ、その肝心の魔法は…」
「それがどうしたんですか?」
ルシウスは、一通りの魔法を使いこなすシリウスに気になって返したのである。
「俺、使えないんだ。仮にも俺、魔族として転生した魔王だしさ?魔王が神聖魔法を使うって聞いたことってないだろう?」
「…言われてみればそうですね。というよりも魔王ってことをすっかり忘れていました」
というよりも、今のシリウスの格好は、ジャージ姿なのだ。
魔王という格好には似つかわしくない格好をしていた。
「そうかな?まあ、そうだよな。この格好の方が楽なんだよな」
「イケメン系なんだから…もっとカッコイイ格好すれば似合うと思うんですけどね。まあ、俺もたまにラフな格好したくなりますけど」
「だろ?って…肝心の話は逸れたな。で、カーミラは恐らくは夜に動くと思うんだが、肝心の神聖魔法の使い手ってのが…」
「…いないんですよね?」
「いや。いるにはいるんだが…この子。フリックは解析した時にあっただろう?」
「そういえば…神聖魔法が使える処か殆どの魔法は習得だったね。ただ、肝心のフリックは…」
「そうなんだよな…。魔法はまだ始めたばかりで、ましてや高度な魔法となると…失敗する可能性が高いし、何よりもカーミラが狙うというエルフの中でも希少種的な存在だし…」
「…確かにフリックは、一番狙われる可能性がありますね。マナの桁も底がありませんし…」
「とりあえず、今は別の方法を考えよう。夜まで時間は余りないけれど…」
また、フリックを始めとするエルフが狙われる存在なのは勘弁して欲しいモノだとシリウスとルシウスは、今は何か方法はないかどうか考えたのだった。
「ふぅ…やっと出来た」
400階で、とある魔導具をクレイスは作っていた。
色魔法を得意としている彼なのだが、シャガルにある協力をして貰っていた。
「シャガルさん。すみません…。貴重な葉を使わせてもらって」
「構わないぜい!お役に立てるならば、何だって言ってくれていいんだぜい」
そうシャガルは言いながら、元から人間形態では、禿げ頭に育毛剤をコレでもかと振り掛けたのである。
「で、何を作っていたんだぜい?クレイスの旦那」
「あ、ああ。コレ?僕たちってエルフだし…このままの姿で外を出歩くと危ないかなと思って人間に見える魔導具だよ。特にフリックはエルフの中で一番危ないし…」
シルヴァンエルフは、元から数少ない種族の中で、その中でももっと数少ないシルヴァンエルフの女の子である、フリックは一番狙われやすいからこそ、前回の二の舞になりたくないが故にアレコレと調べて作ったのである。
「そうだったんですかい。エルフは大変なんですかい」
「そういう魔物だって大変だよね。人間からペット扱いされたりするんでしょ」
「それは今の時代の人間だぜい。魔物は今は数減っている分、シリウスの旦那が新たに魔物を生成してくれているんだぜい」
まだ、数は多くないものの、コツコツとマイペースに魔物生成しているのは、確かだとシャガルは言った。
「そうだったね。シリウスさんは仮にも魔王だったね…」
ルシウス同様にクレイスもシリウスが魔王であることを、すっかりと忘れていたのだった。
まったりと今は<ある日、突然ですが、魔王によって異世界転移してしまった、あたしは、«魔王の城≫で、スローライフみたいなことをしていきたいと思います。>及び<転生したら、一応、剣と魔法が存在する異世界だった件>作成している為、ストック補充がなかなか出来ずにいる、今日この頃です。




