第81話
「相変わらず…真っ赤だ」
ネイサスから話を聞いた、マイラスたちはフリックが作ったと思われる、形になっていないが、何から何まで真っ赤な色合いのオムライスを見ながら言ったのである。
「ボクね?がんばっちゃの!にーさまたちにたべてほしーの」
「そ、そうか。フリック…頑張ったな」
「うん!ルシウシュにーさま」
一番上のルシウスに頭を撫でられることが大好きなフリックは、嬉しそうに返した。
「そういえば、ミレイ殿は?」
「あ、ああ。まだ、故郷から帰って来ていないが」
一人で大丈夫だからとシリウスは行かせたものの、未だ帰って来ていないのである。
「何だか心配だな…」
「レイオス兄さんが人間の女の子を心配するなんて珍しい」
「だって心配じゃないか。魔法だってまだまだだし」
言われてみれば、ミレイの魔法の腕は彼らレベルからすると低いのだ。
まあ、この辺りはまだ安全な所だし、問題はないだろうと俺は思った。
「とりあえず、まずは晩飯にしないか?せっかく…おチビちゃんとアープルが作ったんだし」
「そーなの!ボク…りょーりしちゃの!たべてほしーの!」
「そ、そうだな。冷めたら美味しくないもんな…」
心の中で食べたくないものの、フリックの泣き出しそうな目に耐えられない兄たちは、恐る恐るとフリックの作ったという、真っ赤に度が超え過ぎている、オムライスを口にしたのである。
「「…………………………美味いな」」
小さくルシウスたちは、フリックを傷付けないように無理に微笑みながら言った。
「えへへ…おねえちゃまにならっちゃの」
「む、無理しなくてもいいですよ?」
アープルは、フリックには聞こえないようにルシウスたちに言うものの、フリックの手前だからと彼らは激辛に度が超えている、オムライスを食べ続けたのである。
「おチビちゃん。暫くは台所に入らない方がいいよ」
「どーして?ボクもなにかしちゃいの!にーさまたちにやくにたちたいの!」
いつも、兄たちはコツコツと魔石を加工していることから、フリック自身も何か城で役に立ちたいと思いながら言ったのだ。
「フリック。お前はまず…魔力の制御と精一杯遊ぶことだ」
「うー…ボク。あしょびあいていないもん」
ルシウスに言われるものの、確かにハイエルフの中からフリックと同世代だろうと思われるエルフは一人もいないのである。
「せーぎょばっかりあきちゃの」
「別に魔法って制御が出来ないと駄目なのか?おチビちゃんは、一応は召喚魔法が少々使えるようになっているのに」
「それはそうだけど、制御に失敗すると…ふ、フリック!」
「ううぅ…ヒック……ヒック……せーぎょにしっぱいしたからなの…?ボク…あのころのこと…おもいだしぇないの…」
自分自身の魔力制御が失敗で、両親のことを思い出せないフリックは、泣き出しそうになってしまったのである。
「フリック。俺が悪かったから…。悪かったから俺のケーキをあげるから」
「そ、そうだよ。僕の分だってあげるよ」
夕飯後のデザートである、イチゴのショートケーキを兄たちはフリックに差し出しながら言うと、フリックは何とか涙を抑えたのである。
その日の夜遅くとミレイは、何とかリーベルタース城へと戻って来たものの、故郷の皆は準備してから来るということを伝えたのだった。




