第79話
「うーん。賢者のローブ、何となくという感じでイメージしながら召喚魔法で出したのはいいんだが、何だか安っぽいというか厨二病みたいなデザインだな…」
さすがは、土産物でも可というだけあるよな…と俺は、マジックストーキョーで販売されているという、国民的RPGに出て来るような賢者のローブを見ながら思ったのである。
まあ、それしか浮かばなかったし。
ゲームは、基本的にマニアック系しかやってこなかったからなぁ。
でもまあ、これで材料は大丈夫だな。
普通の石ころも周辺にざっくりとあったし。
いつ拾ったんだという突っ込みは、無しって方向性で。
「さてと…コカトリスを生成しますか」
どこか生成方法について突っ込みたくなる衝動に襲われながら、俺は生成に沿ってコカトリスの生成を始めたのである。
「ねーねー!アープルおねえちゃま」
フリックは、人面樹であるアープルに甘えていた。
「どうしました?」
「ボクもりょーりしちゃいの」
料理と聞いてネイサスは、青ざめてしまった。
「お料理ですか?」
「うん!ボクもやりちゃいの!」
「フリック。お前はまだ早いだろう」
「どーしてなの?まえにボク…りょーりしたとき、にーさまたちたべてくれちゃの」
「そ、そりゃー…お前が作った料理だからな。だけど、肝心のお前は…」
ネイサスは、続きを言おうとしたものの、ぐっと気持ちを抑え込んだのである。
「…ええ、いいわよ。教えてあげるわ。それにそろそろ夕飯の時間ですし」
「うん。ありがとーなの。おねえちゃま」
嬉しそうにフリックは礼を言いながら、アープルに連れられるままに台所へと向かってしまったのだった。
(拙い。あいつに料理をさせたら…。べ、別に不味い訳じゃないんだけど、あいつらに伝えておかないとな…)
今は各部屋で、各々のやりたいことをするためにアレコレとしている、弟たちのところへとネイサスは向かったのだった。
「卵の納品が出来ないというのは、どういうことですかな?奴隷29君」
ゼノア帝国で、食糧庫を任されているレスターは、卵を管理している29の所へと来るなり言った。
「そ、それがだべ…スッと煙のように消えてしまったんだべ…」
「スッと煙のように?そんなトリックみたいなことを言っても無駄ですよ」
「ほ、ホントだべ!本当に消えてしまったんだべ。ちゃんと100個数えて置いておいた卵が消えてしまったんだべ…!」
奴隷29は、レスターとの目を離さずに正直に卵がいつの間にか消えてしまったことを報告していた。
「………ふむ。煙のようにという話はあながち嘘ではないようですな」
城の食糧庫も時折と無くなることから、奴隷たちの仕業ではないようだとレスターは、確信したのだった。
「そうなると、何者かだべ。きっとまた、魔王が復活したんだべ…!?」
「魔王?古の時代にいたという魔王ですかな?しかし、復活しているのならば、この世界は終わっていますな」
「…そうだべな。だとすれば、何だべ…。何が起きているんだべ…」
「とにかくと今回の件は目を瞑りますが、原因はこちらの方でも調査しておきましょう。奴隷の仕業がないと分かれば、皇帝も分かってくれる筈ですからな…」
貴族と市民である奴隷との格差社会は、レスターも無くしたいものの、皇帝の手前ではどうしても、奴隷と言ってしまう我が身も変えなければと思いつつ、今はあるだけ卵の納品を10個ほど馬車へと持ち運ぶと、その場を後にしたのだった。




