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第72話

「食べるのがやっとって…良く15年も雑草だけで過ごせたモノだな」

シリウスは、改めてミレイの故郷に不憫を感じながら言った。

「だって…あたしのいた故郷に生えている雑草は万能だし」

「確かアーノルド連邦だったか?ミレイ殿の故郷は」

「うん。そうだけど、それが何か?ルシウスさん」

「アーノルド連邦の雑草について聞いたことがあるんだ。そのまま食べると味はないものの、栄養だけはちゃんと摂れるとか。で、煎じて飲むと甘味が出て疲労回復するとか」

ルシウスは、以前、シェルファに聞いたことを思い出しながら言った。

「へぇ-…いつもそのまま食べてたけど、他に方法があったんだ」

「そのままって…ホントにミレイさんの故郷って食事情が恐ろしく無かったんですね」

生活魔法を扱うマイラスは、雑草は調べた上でお茶やポーションとして使用する方法が幾らでもあると言った。

「そうは言っても…他国との繋がりとか当の昔に絶って以来、生きてくのがやっとだったし」

昔は勇者がいた頃、活気に満ちた国だったと故郷にいる、爺さん婆さんから口伝として伝わっているだけで、実際の所は分からないだけなのである。

「まあ、勇者のことを知っているのは、今の時代はシェルファ殿だけだけどな」

「そうか。まあ、そうだよな。5万年近く生きているんだっけ?」

「そうだ。何でも前世で相当、死について悔やんでいたとか」

「それで…エルフに転生することに喜んでいたんだな。あのオッサン…」

シリウスは、ふとシェルファが転生する様子を抽選会場で聞いていたことから、思い出しながら言った。

「お、オッサン…?」

「そうだけど?シェルファの前世は、スッゲーオッサンがエルフに転生することに喜んでいたんだ。今世では可憐で大人しい女性として振る舞っているかも知れないけど、内面はオッサンだと思うんだよな」

「………それ、フォルダニアの森にいる皆の前では言うなよ?聖女として謳われているから」

「あ、ああ…」

シリウスは、確かに聖女として謳われているのならば、内面がオッサンだというのは、黙っておいた方がいいだろうなと思いながら、ルシウスの言葉にそう返したのである。






「くっしゅん!こんちくしょーだぜ!」

フォルダニアの森にある、シェルファ・L・フォルダニアの隠れ家で、シェルファは一人でくしゃみを連発していた。

「誰かがオレを噂してんな。まあ、いいんだけどな。可憐な容姿のエルフとして転生してからもう5万年近くも経つからかも知れんな…。で、大魔王は今頃になって転生したようだが、今世の魔王はどうやら人間たちに別の意味合いで厄介な存在になりそうだぜ…」


まあ、歴代の魔王に比べれば遙かにマシな存在なのは間違いないだろうと、特にシェルファは気にする様子も無く、再びとアレほどと無茶はするなと言ったにも関わらずとリリアが倒れたと聞いたことから、ノイント都市国家へと往診に行く準備を始めたのだった。








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