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第67話

「ううぅ………どーちてなの?」

フリックは、ミレイにアドバイスを受けてぬいぐるみの前に猫を付けたものの、召喚魔法は出来なかったことから、泣き崩れ出していた。

「う、うーん…このことを言っていいかどうか分からないけど、言っていいかな?」

「何だい?ミレイさん」

「この子の言葉遣い…まだまだ舌足らずだからじゃないかな?さっきのぬいぐるみの発音。あたしの聞き間違いじゃなければ、『ぬいぎゅるみ』って聞こえたんだけど…」

「言われてみれば…そうかも。何たってフリックはまだ幼いから」

年齢は12歳であるものの、両親を失ったことが切っ掛けで、幼い子どもと変わらない精神年齢になってしまったのだと、エリックはフリックには聞こえないようにしながら返したのである。

「ひっく……ひっく……まほーちゅかいたいの………」

「フリック。ゆっくりと発音してみようか?さっきのぬいぐるみさ?ゆっくりと『ぬ・い・ぐ・る・み』って言ってみようか?」

泣き崩れるフリックにエリオスは、舌足らずのフリックに発音しやすいように言いながら言った。

「ゆっくりいったら…できりゅ?エリオシュにーさま…」

「うん。兄さまの言葉の後に続いて言ってみよう」

「うん。わかっちゃの…にーさま」

エリオスに言われるまま、フリックは召喚魔法を改めてやってみたのである。


≪いでよ…ぬ・い・ぐ・る・み≫

まだ、幼い言葉遣いであるものの、フリックは、目を瞑りながら、お気に入りのぬいぐるみを思い浮かべると、召喚魔法を唱えてみた。


「あっ…!」

「で、出来たね」

ミレイとエリオスは、フリックの魔法を見ながら同時に言った。

「にーさま…ぼ、ボク…ボク…できちゃの?」

「そうだよ。フリック…初めて魔法が上手く出来たね」

生まれて初めて両親からプレゼントで貰ったという、仔猫のぬいぐるみをフリックは、召喚魔法で出したことから、エリオスはフリックの頭を優しげに撫でながら言うと、ノックと共にマイラスが入って来たのである。

「そろそろ夕飯が出来るよ…ん?」

「マイラシュにーさま…!」

フリックは、マイラスに飛び付いた。

「フリック…。どうした?ま、まさか…人間のミレイに何か酷いことを言われたの?」

「そんな…あたしがそんな酷いことをこの子に言う訳がないでしょ」

「そうですよ。兄さん。フリックがね…初めて魔法が出来たんだよ」

「にーさま。あのね?ボクね?まほーできちゃの。みてて?」

もう一度と召喚魔法としてフリックは、マイラスの前でやってみせたのである。


≪いでよ…ぬ・い・ぐ・る・み≫

先程と同じ魔法をフリックは、意図も簡単にしたのだ。


「おおっ!フリック…いつの間に出来るようになったんだ」

「しゃっき…エリオシュにーさまにならったの」

「そ、そうなのか。ってエリオス。お前は治療魔法専門だっけ?」

「そうだけど、召喚魔法は、前にシェルファ殿にイメージだと聞いたから見様見真似で出来るかなとやってみただけだから。僕の召喚魔法は失敗したけど」

未だ何ともいえない形のぬいぐるみにエリオスは、苦笑しながら言った。

「そ、そうか。フリック…良く出来たね」

「うん…!ボク…これで…みんなからいわれないよね?」

「ああ…。それよりもシリウス殿がさ?そろそろ夕飯だからって…」

マイラスはフリックを抱き上げながら言うと、ホールへとみんなで向かったのである。



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