番外編83 木の枝
魔石とか魔枝とか魔草とか魔貝とかっていいよね。
頭に魔って文字があるってことはさ?
何かいいことがありそうじゃん?
それなのにさ?
あたしったら「そこら辺に転がっているだけの木の枝」っていう、その名の通りに異世界で転生して転がるようにしながら、ただただいるだけの木の枝なんだ。
前世のあたし。
そう、あたしは、木之本志津絵というごく普通の名前。
それだというのに?
何があったの?木の枝になる程に何かあった?
周りに流されるままに生きてたし、周りに合わすのが当たり前だと思ってた。
自分の意見なんて必要ないって学校で言われたし。
というよりも人と違う意見を言った所で、冷たい目を受けるのは当然だし?
あたしは、あの子とは違うんだ。
意見が違うのは当然って言うけど、他に意見を言う方がどうかと思う。
何も変わらない人生って一番楽でしょ?
一人ひとりで変えていくんだって言うけど、それのどこがいいわけ?
ホント、わかんない。
で、気が付けばね?
そこら辺に転がっているだけの木の枝って…?
前世で普通に過ごしてただけなのに?
誰にも気付かれないまま、このまま、終わってしまうのかな?
「うーん。この枝は生成に向いていないかも」
生成?何ソレ?あたしをどうこうした所で何も使えなくて当然でしょ?
だからって乱暴に持つのは、辞めて欲しいわね。
って声、聞こえてないのかな?
やっぱり、魔を前に付くモノじゃないから?
ただの木の枝だから?
それにしたって…この世界は、いまいちと分からないまま、いつの間にやら、あたしの第二の人生は、終えてしまったっぽいのだった。