番外編82 魔茸
『そこら中に生えているだけの魔茸』
って何?生えているだけの茸として転生したってこと?
そりゃーよ?茸は嫌いじゃないし?
だからってさ?茸に転生って誰が夢見たよ?
つーかさ?何かした?
今日の面接で、応募者は30後半だったからさ?
面接の質問で「結婚の予定はありますか?」って聞いただけだし?
常識だし?30半ばになってまだ、していないってのはちょっと…だろ?
だから、念のために聞いたんだよなぁ。
で、気が付けばだ?
茸って何なんだ?
「魔茸って言うから期待したのに…コレでは使いモノにならないじゃん!」
何か食材になるモノはないかなって思ってたけど、茸って…。
魔茸ってただ単に生えているだけで、無味の味じゃん?
という口々に聞こえて来ただけで、使いモノにならないってどういう?
確かにそこら中に生えているだけの魔茸って…ってオレのこと?
今更ながらと気付いたけど、魔茸ってオレ?
転生って言ったよな。オレ?
だからってさ?
魔茸って…?いやいや、何度も繰り返すなって?
まぁ、そうだよな。
こんな何もない世界で、魔茸として転生って…うーん。
何かなぁ。転生ってもっとさ?
キラキラした勇者みたいな感じの人物とかギンギラギンと獲物に飢えた魔物とか転生すると思っていたよ。
つーか…オレ、前世で死んだってことだよな?
なんで?
死んだ記憶、無いんだけど?
面接で質問を終えた後、何かちょいと揺れたかなって思っていただけだし?
ま、まさかと思うけどさ?
打ち所が悪かったとか?ちょいとだけで、死ぬってないだろ?普通。
だからって…うーーーーーーーーーーん。
まあいいや。
第二の人生は魔茸だったって訳だし?
コレから第三、第四、第五と…転生していくことになるんだろうなぁと、今のオレはそう思うことにしたのだった。