番外編81 イアン
「スマートフォンと冷蔵庫の連携は従来通りとはいえ、冷蔵庫内で調理ってのは、何かちょっとなぁ…」
何か案としてはひと味足りないなと、上司の葛原俊男は言ったのだ。
「スマートフォンで食べたい料理を入力して送信するだけなんですよ?」
「だからってそれはちょっと…だろう」
というよりも、冷蔵庫の中なんだし、冷たいままだろうと、葛原はOK出す気になれなかったのである。
「とにかく…コレは没だ」
「は、はい…」
コレで何百回目だろうと没に増永英輝は、新たなる案を考えるために、少し外へと出てみることにしたのだった。
「はぁ~…今度こそイケると思ったんだけどなぁ」
冷蔵庫内で調理って個人的に楽に出来ていいのではないかと思う案は、あのお堅い上司には、受け入れられなかったのだ。今、テレビを通して調理も出来るようになるという噂もある以上、ここは負けていられないなと思ったものの、何かひと味は足りない結果だったのである。
「いっそのこと…冷蔵庫とかない異世界で夢を羽ばたきたいモノだ…」
ってアレ?ここ?どこ?
さっきまで、会社の屋上にいたよな?俺?
『転生名前はイアン(男)、転生種族は人間、転生日は聖龍歴99985年2月22日、転生先はソルディア・カオスティック・マジフィニクッス・ピーストにある、ノイント都市国家・サフィリア、転生特典は魔石鑑定スキル、プレゼントは家電のカタログ』
として転生しますか?という疑問形に流されるまま、俺はYESを無意識にしてしまったのだった。
「何か…騙されているような気がする」
転生してから15年余り過ぎた今、ノイント都市国家は、リベルダ領土への移住として、イアンは流されるままに移住し、リベルダ領土内にある、魔石を鑑定しながら、家電製作に取り掛かっていた。
「まぁ…そう言うなよ。オレだって異世界初だぜ?」
「そうそう。俺たち家電コンビとして…異世界にはない家電を作るんだからさ」
そう、俺、増永英輝は、同じ転生者の仲間と共に新たなる道として、家電製作する道を地道に拓いたばかりなのであった。