番外編78 ファル・オーネス
「コレで1000社目…か」
転職活動で、なかなか次の仕事が決まらない。
今、私は、ドン底に落ちていた。
前職は、仕事内容と時給はそこそこ良かったのだけど、人間関係が過去最悪の職場だったので、数年足らずで辞職してから、転職活動しているものの、なかなか決まらず、貯蓄も尽き掛けていた。
「もー…マジで条件に合う仕事はないのー!?」
求人内容を見て、応募。
応募して、面接。
面接で、詳細を聞く度に超説ブラック環境だと知るばかり。
求人では良いことしか触れていないから、口コミも今は読むようにしているんだけどさ?
この前の職場は、過去最悪よ!
まだ、年齢的に若いからってさ?
会社に50年缶詰勤務出来ませんか?って何よ!?
缶詰勤務って何!?
50年いたら、80近いババアじゃん!
9時~17時勤務に完全土日祝・GW休暇10日・夏期休暇10日・年末年始10日に加え、時給は1350円~とそこそこだったから、応募したのに、缶詰勤務はないわ!
「はぁ~…異世界にでも転生したいなぁ」
まぁ、そんなお伽話なんてないよね。うん。ないない。
って思っていたら、マジでどこよ!
つーか…異世界転生あるあるみたいな感じの雰囲気が出てるし!?
『ご、ごほん!今、ソルディア・カオスティック・マジフィニクッスは、大変危機になっていますので、あなたに特別にですが、ファル・オーネスという新たなる名前で、魔法をガンガンと使ってくださーい』
は、はぁ?何それ!?マジで異世界!?
つーか…何?
と気が付けば、もう15年だよ!
確かに魔法は、ガンガンと使えるけどさ?
何の断りも無しに剣と魔法の世界に放り込むってどうかと思うんだよね。
まだまだ、やりたいゲームもあったのに。
まだまだ、未完結のマンガだって読みたいままだったのに。
「仕方ない!今はこの場を乗り切るしかないっしょ!」
そう、魔王が生み出す魔物に向かって私は、無我夢中になりながら、新たなる第三の人生に向け、魔法をズカズカと使い続けたのだった。