番外編71 ミーティア・エスカーシュ
「また、カレーかよ!ったくおめーは何度も同じもんを作るんじゃねーよ!」
「二週間振りに作っただけで、何よ…」
あたしだって働いているんだよ…って言い返すものの「うるせー!とっとと極厚ステーキを買ってすぐ焼けや!」と亭主は、朝から出勤前に30分掛けて作ったカレーを投げ飛ばし、いつもいつもと同じモノを要求してくるのだった。
(極厚ステーキってそういうあの人だっていつもじゃない…)
というよりも、日に日にエスカレートしていた。
結婚前は「里奈の作るカレーは美味いなぁ。コレなら毎日食べたいぐらいだよ」って言うから、二週間に1回は作るようにしていたのに。
私、高橋里奈。30歳。パートで今は仕事に出る一方、亭主は17時までというフルタイムの仕事をして帰って来て、家事・育児は一切しないというモラハラ男である。結婚前は本当に良かった。家事とか手伝うよって言っていたのに、何もしなくなった。
コレが典型的な男ってヤツなのね。
昭和の固定概念で育った男は、何もしないクズだわ。
このまま、どこかに行ってしまおうかしら。
ドドドドドドドドドドドドドドドッ…
「な、何?地震…?」
揺れを感じた突如、私の意識はどこかへと消えてしまったのである。
「えー…コレから第二の人生を抽選で決めていきたいと思います」
第二の人生?まさか…さっきの地震で?
そうよね。助かる筈もないものね。
(あら…あの人もいるのね。あの人も死んだのね…)
生まれ変わっても一緒にいるというのは、さすがに嫌だなぁ。
どうやら、あの人は…何とか草みたい。
ふ…当たり前よね。私にあんな酷いことを言ったんですもの。
さて、私はどうかしらね?
言われるままに私は、抽選したのだった。
『転生名前はミーティア・エスカーシュ(女)、転生種族はハイエルフ、転生日は聖龍歴99500年2月23日、転生先はソルディア・カオスティック・マジフィニクッス・ピーストにある、フォルダニアの森、転生特典は、カレー知識全般、プレゼントは、お手軽キッチンセット』
えっ!?ハイエルフなの…?と嬉しさ半分の中、私は、フォルダニアの森のエルフとして転生したのだった。
そこで、エルフの大長老であるシェルファ様から言われるまま、カレー作りに没頭する日々を送る、私だったのである。