番外編70 間野優馬
魔王が生み出す魔物との戦いが終わってから10年余りの年月が経っていた。
だが、戦いで負った傷は早々癒える筈もないまま、未だ後始末が残っているのである。
俺の名は、ディーン・バルゲール。
前線に立ち、人々を魔物から守るために剣を振るい続けていた男だ。
そう、魔王が生み出す魔物との戦いは終わった筈だった。
それでも、まだまだ、魔物は、世界各地散らばっているが故に壊滅させなければ意味が無いのだ。
「やっとソルディア・カオスティック・マジフィニクッス・ピーストと名を変えたというのに、キリがないっスね。ディーン先輩」
俺を慕う後輩、イルスは愚痴りながら言った。
「そうだな。その平和を完全平和にするために、俺たちは魔物を壊滅しなければ意味がないさ」
何年掛かるか分からないものの、今はそれしか道がないのだ。
完全に魔王は絶たれたというものの、それは、信用して良いのかどうか分からない。
何しろ、魔王の最期は、案外、呆気ない終わりだったと噂で聞いているからだ。
「う、うわっ!」
「ど、どうした!イルス!」
イルスは、何らかの触手に囚われていた。
いや、絡まってしまったのだ。
「こいつは…触手系の魔物か。こんな所に…」
「せ、先輩…!」
「待ってろ…俺が…!」
イルスを助けるために剣を抜くものの、遅かった。
触手は、瞬く間にイルスの胸を貫いてしまったのだ。
「イルス…!よ、良くも…イルスを…!」
俺は、無我夢中で斬り掛かった。
無数ある触手を切り落としながら、核を探した。
どんな魔物にも、核が存在しているからだ。
傷だらけになりながら探すものの、見付からず。
俺は、立っているのがやっとだったのである。
「俺は……俺は……こんな所で……負ける訳には…いかねぇんだよ…!」
コレからも大事な者を…守っていくんだ…と最期の力を振り絞りながら、触手の魔物と同時に俺は倒れ込んだのだった。
ただ、コレで終わりではないのだ。
まだまだ、各地に散らばる魔物。
どうか、完全に…滅してくれることを願いながら、俺は命を落としたのである。
『第二の人生、抽選しちゃおうかい!?』
何なんだ?気が抜けるような声は…?
第二の人生?抽選?何でもいい。とにかくと何でもいいさと思いながら、俺は抽選した。
俺は、新たに間野優馬という名を与えられ、今はゲームの世界で魔物退治している。
「う、うーん。このドラ…いや。ゲーム。前世と何か似たような感じがするなぁ…」
所詮は、あの世界はゲームのような世界だったのだろうか。
現実と前世の違いがいまいちと俺には分からないまま、平穏の世界を生きることにしたのだった。