番外編69 ワイアット・ペンネンバーグ
コレで1000回目となる、面接へと挑むものの、見事に不採用となってしまった。
俺の名は、浅野裕真。
面接で度々と「両親は何のお仕事をされていますか?」と聞かれ、既にあちら側へと渡っていることを説明する度、「両親は普通、自分らが60代から80代になった時に旅立つもんだろ。勝手に両親を死人のように言うってことは、君は親への感謝はないのかい!お前のようなヤツはいらん!」と言いながら、勝手に価値観を押し付けるような態度急変する、面接官を何度も当たってしまった。
つーか…両親が早くに旅立っていることに何の不満があるっていうんだか?
面接官の態度、毎度ながら苛立つ。
誰もが病気一切ならない保証だってないんだし、価値観を押し付ける面接官ばかり当たる。
そう、俺の両親は、共に病死している。
だからこそ、正直に答えるしかないんだ。
嘘吐いてまで、両親は、○○会社にて勤務していますと言うと、ハイスペかと思われるし。
金持ちのボンボンがって言われてしまうんだよな。
何しろ、父が現役時代、ザッと3000万は超える年収だったから。
「はぁ~………どっかいい仕事、ないものかねぇ…?」
ぶつぶつと呟いた途端、俺は上から落ちて来る看板に気付かず、そのまま、倒れてしまい、動かぬ身体へとなってしまったのである。
(な、何だ?ここ?)
確か…俺、何か頭上に落ちて…って死んだってことか。
あー…アッサリ過ぎる。
まだ、30を手前だというのに、実にアッサリ過ぎるって。
『え、ええー…今からとりあえずという形で、第二の人生を抽選していきたいと思いまー…す』
ん?何かダルそうな声が脳裏に響いたんだが?
第二の人生?抽選?
まあ、何でもいい。とにかくと今の状況を変えたいし?
で、言われるままに抽選してみた。
『転生名前はワイアット・ペンネンパーク(男)、転生種族は人間、転生日は聖龍歴85850年2月22日、転生先はソルディア・カオスティック・マジフィニクッス・ピーストにある、ノイント都市国家・グランリア、転生特典は魔法が使える、プレゼントは魔法辞書』
という、魔法が使える異世界へと俺は転生したのだった。
それから20年余りの年月が経った。
「ふむ。この世界の魔法は誤った発音で浸透しているが故に正しい魔法が使えないんだな…」
あの魔法使いとあの僧侶が後世のために残したという、魔法はどれもこれも変な読みとして残されていることから、俺は、今を生きる人たちに正しく魔法が使えるようになれるよう、黙々と魔法研究の道を歩んだのである。
が、俺の魔法研究は、今の時代を生きる者には、余り理解出来ないまま、俺の生は、70年余りで終わってしまったのだった。