番外編58 ジョセフィーヌ・フォン・エンゲンバーグ
コレで何回目だろうか?
前職を辞職してから転職活動しているものの、前職の評判が余りにも悪いことから、なかなか次の仕事は見付からず、不採用連続を繰り返していた。
私の名は、新島優樹。女。誰でも優しい人になれと意味として名付けられた。
ただ、優しい人というのは、難しい。
前職で、ひたすらに暴言を言う主婦がいたのだ。
「サッサとやれよ!このボケが!」とか「とっとと死ねば!?このトロマ!」と繰り返し言う主婦がゴロゴロいる中、「何もそこまで言わなくてもいいんじゃないの!?15kgってすぐに運べるモノじゃないよ?」って思わず、優しさから庇うように言った途端、「あんたに言われる筋合いはないわね!このクズボケ女が!15kgぐらいとっとと0.0000…1秒で100メートル先まで運べる重さだ!」って返されたわ。
15kgの割れ物、あんなに早く運べるならば、あんたらが運べよって話。
グダグダ言う暇あるなら、運べばいい話なのよね。
そもそも、身長130cm台の子に一人で運ばせる時点で可笑しいのよね…。
オマケにその作業は、いつもは男性の方がやっている作業だし。
さすがにコレは私も無理だわ。
このままだと、私まで腐ってしまうと思い、辞職。
で、ひたすらに転職活動しているものの、コレが上手くいかない。
ああ…惜しかったなぁ。
前職の時給は1500円からという高時給。
でも、背に変えられないわ。あのままいたくないのも事実。
と気付いた途端、ここはどこ?
『第二の人生。コレから始まりますよ。今なら異世界人としてやり直そう』
という謎めいた声。
異世界人としてやり直す?
それも悪くないかなぁと思った途端、ある言葉が私の頭というか魂に響いたのだ。
『転生名前はジョセフィーヌ・フォン・エンゲンバーグ(女)、転生種族は人間、転生日は聖龍歴99980年5月12日、転生先はソルディア・カオスティック・マジフィニクッス・ピーストにあるノイント都市国家・ティーリアの街、転生特典は鑑定スキル、プレゼントは貴族の家庭』
何だか上品そうな名前として第二の人生が始まるのね…。
何か堅苦しい貴族生活だと嫌だなぁと思いつつ、何とか普通に過ごす日々を送ることになった、私であった。