番外編44 レニー・グラス
「せっかくの休みだってのに常務から急の飲み会かよ…」
「俺なんか有給取って休んでたんだぜ?」
しかも、23時過ぎという終電は既に終わっている、時間帯に会社から無理矢理と呼び出され、今日は、嫌なことに常務である、林山邦男の50歳(独身)の誕生日であることから、社員一同はスーツ一式で飲み会に強制参加をさせられていた。
「おらおら!飲め飲め~!」
「も、もう飲めないですよ…」
一人ひとりと飲まされ、潰れていく中、常務は問答無用で社員に飲ませまくっていた。
無理もないだろう。
大半は翌日、朝早くから緊急の取引先との5連続の会議なのだ。
その準備だってあるというのに、朝早くから取引先の資料をまとめたり、会議室の清掃等もしなければいけない等という作業があるのだから。
ったく…社員のことを少しは考えやがれ!
社長の息子だから仕方ないとはいえ、甘過ぎるだろ!って俺は心の中で思っていた。
しかも、ここの飲み代。社員支払いってなんだよ!?
スッゲーバカ高い酒ばかり注文の上に煽りながら飲んでいるし!
誰が払えるかっていう額ばかりだ。
いい加減にしろ!って言いたい。
俺なんか今日、シフト制で休みだった。
因みに俺の名は、飯塚渉。良くも悪くも25の男である。
まぁ、どうでもいいな。この情報。
で、隣にいる男は俺の同期で、植村誠。俺と同じく25歳。
「どーした!お前ら。お前らも飲め飲めー!」
「ぐっ………!」
常務は無理矢理と高いボトルを俺の口に押し込みながら、俺の意識はここで途切れてしまったのだった。
後のことは何も覚えていなかった。
というよりも、ここってどこ?俺、ちゃんと家に帰った記憶がない。
隣にいた筈の植村の姿もない。
うるせー常務の声も聞こえない。
ここは、マジでどこなんだろうか?
(なんでもここって第二の人生が強制的に抽選されるらしいぜ?)
誰かの念みたいなモノが俺に聞こえた。
強制的に抽選?何だよ?俺、死んだってことかよ?
認められるかよって言いたいけど、この状況は受け入れるしかないよな。
恐らくは記憶がないってことは、あの後は俺、死んだってことだと思う。そうとしか思えない展開だから。
まあいいさ。あの常務から離れられるのならば、どこでもいい。
ただ、ゲームとかできない世界は勘弁してほしいが、そう贅沢は言ってられないな。
ぶつぶつと考えている中、第二の人生の抽選が始まるみたいな声が聞こえた。
その辺の石とかばっかり転生していく中、俺は俺の道を行きたいと思いながら、順番が来たことから、抽選することにした。
『転生名前はレニー・グラス(男)、転生種族は人間、転生日は聖龍歴99984年2月3日、転生先はソルディア・カオスティック・マジフィニクッス・ピーストにある、ノイント都市国家・サフィリア、転生特典はのんびりスキル、プレゼントは異世界でのんびり本』
何だ?と思いつつ、俺は新たなる名前で転生する羽目になったのである。
のんびりスキル?異世界のんびり本?
何なんだと思いつつ、第二の人生は案外、のんびりし過ぎて平穏しかない日々を今の俺に出来ることであった。