番外編43 魔石(その6)
うーむ。
魔石は何度転生しても嫌になるモノだ。
何しろ≪その辺に落ちてるんだから、色々と仕方ない魔石≫として、今回は転生したのだ。
確かに言われてみれば、その辺にオレは落ちている。
ただな?色々と仕方ないって何だ?
オレ、前世で何をした?
前世以前に人間だった頃、何をした?
もう、人間だった頃の名前。覚えてないぞ?さすがにこう何万回も魔石として転生していたら、前世の記憶なんて言葉ぐらいだ。
とは言うものの、オレの声は誰にも届かないんだよな。
前に転生した魔石の時も何だかんだと声は聞こえるのは、一定のマナを持つ者だけだった。
この世界を生きる者は、余りマナを持たないのだろうか。
転生者は桁がとにかく違う。
最初からチートか!って言いたくなる位のマナを持ち合わせているのだ。
まぁ、最も相手が魔族だったから仕方ない。
魔族は、昔からマナだけは桁外れだと言われてるし。
最も魔族もこの世界では、一人しかいないのだな。
血を使って子孫を増やすとかしないのだろうか?
魔族は、自らの血を用いて子孫を増やすしかないと聞いたことがあるからだ。
まぁ、声が届くのは、あの魔族であり、大魔王であり、転生する際の独り言のような心の声がダダ漏れしていた、あの男なのだが、今、この場にいる以上は声は届かない。
何しろ、今のオレはさ?
リベルダ領土から遠く掛け離れた、南だぜ?
南は、エルフ。エルフ。エルフ。エルフ。エルフ。エルフ。エルフしかいない!
ただ、多くのエルフはどっかの国の人間に攫われそうになった所、吸血鬼によって…ああ、もう想像したくない。
とりあえず、今のオレは精一杯の仕方ない魔石をしよう。
色々と仕方ないのだ。
こういう事情があるのだから。
特に何をすればいいのかどうか分からないまま、オレの生って………こんなにも短かったんだなと思いながら、次の魔石へと転生するんだろうなと心持ちしつつ、今度こそはキチンとズバズバと言える魔石として転生出来るといいなと密かに思ってしまった、オレであった。