番外編40 ミランダ・ロンシュタイン
「おーいっ!次のデータ、手伝ってくれ」
「は、はい!」
「次はコレ!」
次から次へと上司に言われるまま、あたしは、PCにデータを入力していた。
あたしの名前は、美田星華。
転々と職をリストラされ、今は10回目の転職先で仕事をこなしていた。
ただ、最低限の福利厚生しかないものの、今は生きていくにはお金がいる。
だからこそ、最低限の生き方しか今は出来なかった。
「只でさえ、人手不足で来てくれて助かったよ」
「そ、そんな…まだ、私なんて…」
特技のタイピングを活かせるのならば、どこでもいいやって思っていた。
次から次へとデータ入力することになるとは、思いもしなかったけど。
その際、何でもいいと思った。
「まぁ、今日限りで辞めてくれないか?」
「えっ…!?」
突然の解雇通告。
今までミスなんて最初の数回だけだった筈。
「いや、何。お前さんは名前と違って顔が平凡だから」
普通顔でひたすらに仕事されると気分悪いんだよなと身勝手な理由で、クビになってしまったのだ。
な、名前と違って顔が平凡…?
だ、だったら…面接の際に落とせよって心の中で思いながら、その後のことは良く覚えていなかった。
で、気が付けばとあたしは、真っ暗な暗闇の中にいた。
ここは、どこなんだろう?
ホント、社会に出る前からそうだけど、人付き合いが上手くいかないな。
口下手だからなるべく相手に話し掛けようと努力して来た。
だけど、言い間違いする度に相手に嫌な思いをしてしまうわ、相手に暴言を言われるわで、もう、色々としんどくなっていた。
『え、ええー…これより第二の人生の抽選を始めていきたいと思いまーす』
だ、第二の人生だって?ということは…記憶が無かったってことは、いつの間にという感じで命を落としたってこと!?ま、まだ、あたしは30前だよ?と言いたくなる気持ちになる中、強制で抽選する羽目になってしまったのである。
『転生名前はミランダ・ロンシュタイン(女)、転生種族は人間、転生日は聖龍歴99982年5月12日、転生先はソルディア・カオスティック・マジフィニクッス・ピーストにあるノイント都市国家・マティリア、転生特典は騎士の心得、プレゼントは騎士の剣』
な、何!?異世界…と思いながら、あたしは異世界ソルディア・カオスティック・マジフィニクッス・ピーストへと転生したのである。
「平凡…だな」
父親らしき男は産まれたばかりのあたしの顔を見ながら言った。
「そうね。平凡ね…」
「10年越しでやっと出来たと思ったら、残念…だな」
「…ええ。どうするの?この子」
「仕方ない。平凡だと騎士になるのは難しいだろう。どこかに養女を出すしかないな」
「そうね…」
せめて、名前だけは付けてあげないといけないわと母親らしき女も父親同様に平凡呼ばわりしながら、あたしの名前は「ミランダ・ロンシュタイン」と先程、転生名で聞いた名前で名付けられると、すぐに養女として出されてしまったのである。
異世界に転生すると、チート人生だと良くライトノベルで書かれていたけど、そうじゃないんだなと今のあたしは、何も出来ない赤ん坊ものの、マジックトーキョーで、運良くもらい手が見付かり、そこで、あたしは、アニメの世界同様の魔法が使用出来ることを知ったのだった。