番外編38 魔石(その5)
「よーし。今日の仕事はここまでにしよう。どうせ、今週分は終わったし、明日は休みだ」
在宅勤務をしているオレは、キリのいい所で仕事を終えた。
オレの名は、大岩弾。
今年で32歳になる男である。
『ブーブー!』
ん?仕事?さっき終えた筈だが…とオレは仕事からの電話に出た。
「おいっ!何、勝手に仕事を終えてんだよ!在宅だからってな!勝手に仕事を終えていいってことはないんだよ!メール送っといたら、今日中に残り1000万枚のデータ入力しろよな!」
上司の黒田は、言うだけ言って切ったのだ。
はぁ?在宅勤務は、自己ペースで構わないと言っていたよな。
仕事内容でさ?
・一週間で1000枚、専用のソフトに入力する
・1日1~8時間勤務、自己申請する
・休憩は各自自由
その他諸々と自由で、休みの日は申請すれば、週に2日は勿論、週3、週4…と休むことも可能だと言っていたよな。
何たって1000万枚って超有り得ないことになってんだ?
とりあえず、メールを見るか…。
「はぁ!?何だ?コレ?1000万枚処か9999…有り得ない枚数だぞ!物理的に無茶だろ!つーか…オレ以外の社員、どうなってんだ!?」
可笑しなことになっているなと思いながら、同期である平中に電話を掛けてみる。
が、出ない。何だ?何なんだ?
他には…マジかよ!誰も出ないじゃねーか。
バイトも誰も出ないし、何なんだよ?
とりあえず、上司の言い分は無視だ。
寝よう。22時過ぎだし寝る!
明日、明日からどっぷりゲーム三昧予定なんだからな!
で、何だ?
オレ、寝るって言ったよな…?なんでこんなに真っ暗なんだ?
『第二の人生へようこそー!今から異世界転生やっちゃうよーん!』
は、はぁ?
夢だよな?コレ?オレ、死んだっけ?いや、寝るって言っておきつつ、死ぬって…オチは?
…考えられるかも知れない。
食事も偏ってたし、水分なんてロクに摂って無かったな。
ある意味合いで、自業自得かも知れない。
「あのー?後ろ、仕えているんで…サッサと抽選してくれません?」
後ろから誰かがオレに話し掛けて来たのだ。
「あ…すみません」
言われるままにオレは、もやっとしか見えないものの、引いてみた。
『転生名前は何となく魔石、転生種族は石、転生日は聖龍歴20015年3月2日、転生先はソルディア・カオスティック・マジフィニクッスにあるどこか、転生特典はなし、プレゼントはなし』
は、はぁ?何となく魔石って何?
って有無を言う前にオレは、異世界ソルディア…何とかへと飛ばされてしまったのだった。
ふむ…何となく魔石か。
で、何しろと?あの入力作業から解放されたのはいいが、何しろと?
何となくって何と言う雑なネーミング。
そんなオレに何しろとって言いたい。
が、誰も言葉は届かない。
届かないが、何か魔物っぽいのは飛んでいるわ、それに向かってこの世界の人っぽいのは、ファイアっぽい魔法で応戦しているわで、マジで何なんだよ!って言いたくなりながら、オレは何となく魔石として呆気なく散ってしまったのである。