番外編37 マルシア・岡本
「お問い合わせありがとうございます。株式会社ABCです」
私は、コールセンターとしてお客様対応のお仕事をしていた。
毎日、朝から晩まで、家電を始めとするお客様対応は、クレームばかりで、終わるのは、23時前後の日々。
募集当初、勤務時間は9時から17時の上に週2からという条件だった筈なのだが、人手不足というよりも、役員が替わってから、常にブラックという状態が続いていた。
「はい。そのように行えば問題はありません。この度は大変申し訳ありませんでした…」
私はこの言葉を最後に意識は、突然失ってしまったのである。
(あ、アレ…?ここは…?)
意識から目覚めると、暗闇の中だった。
今、夜だっけ?
確か、朝の10時過ぎだったんじゃ…?
PCで時刻確認していた時、まだ、10時過ぎだったことは覚えている。
それなのに、暗い。
オマケにアレ?アレって…人魂?
(あ、アレ!?私の体がない?)
ということは、さっきフラッと意識を失ったということは、それと同時に過労で…?
言われてみれば、そうだよね。
毎日、13時間近い勤務の上に休憩時間ゼロ。
お昼は勿論、夕飯も食べる時間なんて無かった。
飲み物?そういえば、朝、出勤前に飲んだっきりだったけ?
職場内は、飲食不可だから。
色々と考えている内に何かが聞こえ出した。
『皆様、大変お待たせしました。これより第二の人生の抽選を行いたいと思いまーす』
は、はい?第二の人生?
今よりもマシの人生として歩めるのかな?
この私、村岡優衣は、経った18年しか生きてないのだから。
次から次へと今はエルフとして転生する中、私は人間に転生することを夢見ていた。
何しろ、ファンタジーのような世界で人生をやり直すなんて考えていないから。
今度こそ、大金持ちの家に生まれ変わりたい。
平凡で何も出来ないまま、高校卒業後、コールセンターとして就職する道なんて真っ平ごめんだから。
そうしている内に私は、抽選することになってしまった。
どうか、今度こそ…と思いながら、引いてみた。
『転生名前はマルシア・岡本、転生種族は人間、転生日は2115年3月2日、転生先は日本にある石川県、転生特典は理数系特化、プレゼントは絶対儲かる株本』
はぁ?人間として転生を願ったけど、何それ?
コレって…第二の人生も平凡ってことではないか!と思いながら、私は、日本にある石川県へと転生したのだった。
それから10年余り過ぎた頃。
私は、特典の理数系知識を活かしながら、株をやっている。
ただ、両親は傲慢で、すぐにお金を目に付けられてしまい、早く独り立ちしたいと願うが、第二の人生は、何がどうなっていったのか分からないまま、あっという間に終わってしまったのだった。
転生ってやっぱり…夢見るモノじゃないんだな…と思った、私であった………。