番外編36 粉モノカップル
少し修正しました。
戦うことが全てだった。
そうしなければ、この世界では生きていけないからだ。
終わりの見えない戦いの中、俺はひたすらに剣を振るい続けていた。
故郷を守るために。
故郷に残して来た、愛する人を守るために。
魔物は、北からやって来ると同時に俺たちの国を襲い始めた。
何しろ、ここは、目と鼻の先にある場所だから。
故郷では地下に籠もって、俺たちの帰りを待ち続けている人がいるのだ。
アーノルド連邦は、今は廃墟同然の街並みだ。
だが、地下がある。
愛する人たちがいる限り、復興は出来る筈だ。
少しでも勇者ヒカル一行の助けになるために、俺たちは戦い続けていた。
「クソッ…!少しでもヒカル殿の力になるためとはいえ、コレではキリがない」
リベルダ領土前線で、魔物の進行を食い止めるためとはいえ、あちこちと散っていく魔物に到底ながら適う筈がないのだ。
それでも、俺たちは諦めたくない。
平和をこの手で掴むと決めたから。
「あ、危ない…!」
咄嗟にある女性が魔物の攻撃から俺を庇ったのだ。
「なっ…!お、お前………」
「だ、大丈夫…?あ、あなた…」
「ち、地下で待ってろって…言った筈だ…!」
俺を庇ったのは、俺が愛した女性ミリアだったのだ。
「もう…待っていられなかった…の…。地下は…もう…」
「喋るな…。ま、待ってろ…い、今すぐ…!」
治療係を連れて来るつもりだったが、俺もミリアも更なる魔物の攻撃を受けてしまい、そのまま、意識が飛んでしまったのである。
(な、何だ?ここは?ん?ミリア…?)
(あ、あなた…?ここはどこ?)
(俺こそ知りたいさ。ん?第二の人生?)
(それってどういうことかしら…?)
(さあな…)
何が何やらと分からないまま、俺たちは第二の人生を抽選する羽目になったのだ。
ミリアは、以下のように言われるままに転生した。
『転生名前は山本光輝、転生種族は人間、転生日は2105年8月15日、転生先は日本にある大阪府、転生特典はたこ焼きマスター、プレゼントは超最新型たこ焼き器』
何が何やらと分からないが、俺も以下のように転生した。
『転生名前は山本咲希、転生種族は人間、転生日は2102年7月15日、転生先は日本にある大阪府、転生特典はイカ焼きマスター、プレゼントは超最新型イカ焼き機』
で、2125年の夏頃。
俺たちは、お互いに前世の記憶を持ったまま、出会いと共に結婚した。
平和に満ちた世界に感化されてしまった俺たちは、お互いに今世の性は前世と真逆とはいえ、世界超絶不況の中、何かちょっとイケてる?って感じのたこ焼きとイカ焼きを切り盛りしながら、何とか生活を送っているのだった。