番外編21 レノス・アルファード
この世界は醜い。
常に死と隣り合わせの中、終わりの見えない戦いの中に身を置く者は、子どもから老人までいる現状である。
今日もまた、魔物との戦いで、10歳になったばかりの子どもが死んだ。
なぜ、魔王はこの世界を滅ぼそうとするのだ?
我々が何をしたというのだ?
我々の祖先が真っ先に初代魔王ヴァレス・リノベイションを憎んだからなのか?
だとしたら、我々は罪を償いしなければならないだろう。
どうか、話し合いの場を設けて欲しいモノだ。
我の名は、クリストファー・オルス。
オルス家の者として、我は平穏を望んでいる。
「魔王よ。どうか話を聞いてくれ…」
我は、北に向かって話を始めた。
北は、昔から魔王が降臨する領土なのだ。
また、北から魔物があちこちと街を滅ぼすのだ。
だが、魔王から返事は当然ながら返って来る筈もないまま、魔物が次から次へと向かって来たのである。
「クッ…!魔王は人の話を聞く気は無いようだな」
「それは分かりきったことでしょう。クリストファー様」
「そうだな。だが、ここを守り通すぞ。我らが故郷を守るために」
こうして、我は仲間と共に魔物を戦い、そして、戦いの中で命を落としたのである。
(人生に苦は…幾らでもある。が、今度の人生こそ…)
そう我は思いながら、第二の人生を抽選で決める場所で、我は変わり果てた元の異世界へとレノス・アルファードという名で転生したのである。
「世界は平和になったのだな…」
我は人々が楽しそうに行き交う姿を見ていた。
何でも今、ソルディア・カオスティック・マジフィニクッス・ピーストという名の下、世界は平和へと動き始めたばかりだという。
ということは、勇者様が魔王を倒してくれたのだな。
だが、平和は長くは続かないだろう。
このまま、平和の世界が永遠と続く筈がないであろう。
人は、とても欲深い生き物なのだ。
そう思いつつも我は、いつしか、平和の世界の中に馴染んでいってしまったのである。