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番外編16 齋藤神奈惠

神様はいるのでしょうか?

もし、神様がいらっしゃるのならば、この世界を救って下さい。



「ヒール」

私は、治療班として毎日のように戦場へと駆り出されていました。

私の名前は、エリシア。

今、この世界は、魔王グレイズ・リノベイションが編み出したという魔物が街へと攻めて来たから。

天幕の中は、魔物との戦いで傷付いた騎士・傭兵で溢れていました。

だからこそ、治療魔法が使える私は、ひたすらにヒールを唱えることしか無かった。

この時代は、誰もが魔法が使えるから。

「つぅ…!お、お母さん………」

ただ、一人の重傷負った騎士は、もう治療魔法を何度掛けても助かる術が見えなかった。

「大丈夫。大丈夫。お母さんはここにいますから…」

慰めにしか過ぎないものの、こうすることしか道は無かった。

私と同じく治療魔法を行う彼女たちも疲労の目が明らかだった。

いつになったら、終わるのでしょうか?

どうして、魔王はこの世界を憎むのでしょうか?

私たちが何をしたというのでしょうか?

その答えが出る筈もないというのに、私は問い掛けるしか無かった。

「ここはもう危ない!お前たちも逃げろ!ドラゴンが攻めて来たぞ!」

急いで走って来た騎士フェイは、私たちを逃げるようにと言いました。

ですが、私たちは逃げる訳にはいかないのです。

「は、早く逃げろ!ドラゴンは勝ち目がないんだぞ!」

「ですが、この方たちを置いて逃げるなんて出来ません!」

「そんなことを言っている場合か!いいから逃げろ!自分の命を無駄にするな!」

命があれば、本当に平和な時代が来ると言うのでしょうか?

この世に生まれた時から、この世界は魔物で溢れ返っているというのに?

この世界に生まれた時から、私たちは治療魔法の修行を受け、人々を助けるために動いているのに?

今更、逃げるなんて…。

「エリシア!命あってこそだ!だから…逃げろ!」

「………分かりました。行きましょう。皆さん。生きるために…」

私は、それでも傷付いた人たちを置いて逃げたく無かった。

ですが、もし。

もしも、平和な世界があるのならば、逃げるのも悪くないと今、思ったから。


「クソッ…!ここまでやって来たか」

フェイは、ボロボロになった剣を抜きながら言い放った。

「私たちも戦います…!」

「ダメだ!お前たちを戦いに巻き込みたくない…!」

「そんなことを言っている場合ではないでしょう!」

ドラゴンを相手に私は、少し身を震わせながら言うと、私に付いて来た彼女たちも杖を手に取ると「サンダー」を唱えたのだ。

「お、お前たち…」

「大丈夫。精霊魔法も少しは囓っているわ…!みんな…一斉にサンダー攻撃よ」

エリシアは、周りの彼女たちに指示しながら、自らも杖を手に取りつつ、サンダーを唱えたのである。


「キュォオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!」

ドラゴンは、悲鳴を上げたのだ。

「おおっ!効いてる…!よし…今だ!」

フェイはサンダーが効いていることを良い事に剣を思いっきりと振るうが…?

「ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオン!」

ドラゴンは、弱った素振りを見せただけで、一気に灼熱の炎を吐いたのである。

「つぅ…!ば、バリアーが…!」

「や、破られる…!」

とうとうバリアーは破れてしまい、私たちは何も残らなかった。



(そう。私…死んだのですね…)

生き残るために逃げる道を選んだ。

結局、逃げても同じだった。

魔物は、より強大な力を持っていたから。

勇者一行が魔王を倒してくれると信じながら、私たちは生まれ育った街を救えなかったのだから。

ここはどこ?

第二の人生を抽選?

どういうことかしら?

ただ、第二の人生があるということは、また同じ人生を歩むのかしら?

それとも、別の世界があるのならば、平和な世界で生まれたい。

魔物との戦いとは、縁のない世界として生まれ変わりたいわ。



そして、私は抽選をすることにしたわ。


≪転生名前は齋藤神奈惠(サイトウカナエ)、転生種族は人間、転生日は2025年2月14日、転生先は日本にある小豆島、転生特典は麺スキル、プレゼントは讃岐のノウハウ書≫


良く分からないけれど、私はショウドシマへと転生することになったわ。



で、今。

私は、平和で長閑な世界で生きていた。

この世界は、平和そのものであり、何よりも食が豊富ということ。

前世のような世界とは掛け離れた世界の中、私は今日も齋藤神奈惠という名前で、うどんをひたすらに打つ人生を歩み始めたのである。





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