番外編7 新藤龍斗
暫くの間、病気の治療の為、更新は出来ないかも知れませんので、悪しからず。
(何だ…?ここ…?)
やっとある暗闇から抜け出したかと思ったら、オレは妙な場所にいた。
第二の人生の抽選会場みたいな場所らしい。
第二の人生…?
オレ、死んだのか…?
確か、あの時。
オレ………
「よし!もう少しだ!もう少しここを堪え切れれば、応援が来るぞ」
半日以上もオレは剣を振るい続けながら、ドラゴン軍団を相手にしていた。
北の大陸へ勇者ご一行が魔王討伐しに行っている以上、残された者ものは、武器や魔法を用いて魔王が編み出した魔物討伐していた。
愛する者を守るために…!
「何たって屈強の国、ラグーン王国にドラゴン軍団が攻めて来たのだ…」
聖龍暦20000年代の今、ラグーン王国に今は魔王が編み出したドラゴンを相手に多くの傭兵を始めとする兵士は国を守るために戦い続けていた。
「ガルルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!」
ドラゴンは、炎のブレスを吐き出したのだ。
「ま、拙い!マジックシールド!」
咄嗟にオレは、国を守るために精一杯という形で、結界を張った。
「クッ…!」
「マジックシールド!」
オレ以外に同様に傭兵たちは、路銀を稼ぐためにマジックシールドを張ったのだ。
「アンタだけカッコイイ思いをさせたくねぇからな…」
「あ、ありがとう。もう少し堪えてくれよ…」
そうすれば、各国へと応援が来る筈だとオレは必死に相次ぐブレスの攻撃に結界を張り続けた。
が、長くは続く筈が無かった。
応援は来る処か所詮はお金しか目にない、ラグーン王国は、欲望のために傭兵を犠牲にしたのだ。
「クッソ…たれが…!」
「しょ、所詮は…国は…国か…」
マジックシールドを張っていた傭兵たちは、次から次へと倒れ、残されたのはオレ一人となっていた。
「す、すまない………イリア………。レイナを………頼んだぞ………」
オレは結局、ドラゴンを相手に勝つことが出来ず、愛する妻、愛する娘の名を呟きながら、意識を手放したのである。
(オレは…死んだのだな…)
あの後、イリアとレイナがどうなったのかどうか知らない。
レックスとして生きたオレは、国を守ることが出来ないまま、幕を閉じたのだな。
で、第二の人生か…。
悪くない人生だ。
もう一度、人生をやり直すことが出来るのならば、二度とこのような運命から逃れたいモノだ。
アナウンスみたいなモノが終わると同時に抽選が行われ、オレは抽選を引いたのだ。
『転生名前は新藤龍斗(男)、転生種族は人間、転生日は2022年6月18日、転生先は日本にある鹿児島県、転生特典は絶対味覚スキル、プレゼントは電気圧力鍋』
(ふむ…。前世の記憶を持ったまま、ニホンという世界に転生か…)
そう心の中で思ったまま、オレは転生したのだ。
それから20年余りの月日が流れていた。
どうやら、この世界はオレのいた世界とは異なる世界のようだ。
前世で使えた筈の魔法を試しにやってみたが、周りから『厨二病だ!』って言われたぞ。
なんでだ?
前世では、国を守るために結界を張る重要な魔法なのだぞ。
なぜか、この世界では通用しなかった。
普通に使うと『トリックだ』ってコレまた言われた。
前世で使えた魔法、この世界では普通に使えるのは有り難いが、トリックだの厨二病だの言われ放題だ。仕掛けは何一つと無いというのに。
まあいいさ。
絶対味覚というスキルで、オレは電気圧力鍋という何という優れたモノを使いながら、料理屋を営んでいる。
勿論、魔法は自重している。
何たってこの世界では、ドラゴンを始めとする魔物は存在しないからだ。
「角煮定食、注文入ったよ」
「あいよ!」
オレは、今世で新たに新藤龍斗という名で、前世では味合うことが出来なかった美味の食材に感謝しつつ、今日もまた、平和に過ごしながら、料理を作っているのである。