番外編6 鈴木星蘭
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詳細は「活動報告」の「お知らせ」にて触れていますので、宜しくお願いします。
俺の名前は、グラン・L・エスティード。
ノイント都市国家の1つにあるマティリア出身の騎士である。
趣味は、星の観察。
星はいいものだ。戦いの勝利の日の夜に見る星空は、格別だった。
そんな俺は、マティリア騎士団・第24団騎士団長として、街を守るため、首都レフィリアを守るために部下を率いながら、3代目魔王ユリウス・リノベイションが編み出した魔物と戦っていたのだ。
そんなある日。
魔王が編み出す魔物は、いつにも増してより凶暴と化して来ていた。
「危ない!リッツ!」
咄嗟に俺は、まだ、茶髪に碧の目のした、15歳の見習い騎士になったばかりのリッツに向かって馬を走らせながら、身を挺して庇った。
「だ、団長!」
「だ、大丈夫だ…」
俺は深手を負うものの、何とか魔物を倒すことが出来たのだ。
「さ、さあ…皆のところへ…戻ろうか」
「で、ですが…だ、団長。この傷では…」
「大丈夫だ…。すぐに良くなる…。分かってるだろう…?」
いつものように俺は良くなると信じていた。
その日ばかりは、特に思っていたのだ。
「は、はい…。グラン団長」
リッツに肩を借りながら、俺は何とか天幕を張る皆の所へと戻ることが出来たのである。
「つぅ…!」
「だ、駄目ですよ。動いては…」
金髪に青い目をした、看護騎士エレンは、動こうとしたグランをベッドへと寝かし付けながら言った。
「す、すまない…」
「ほら。傷がまた…だ、団長?グラン団長…?」
「あー…すまない。少し…寝かせてくれ」
「は、はい………」
ホッとエレンは息を吐きながら、治療魔法を再開したのである。
だが、グランの容体は悪化し始めていた。
「ぐっ………!」
「だ、団長!しっかりしてください。団長…!だ、誰か!」
治療魔法が効いていないことに気付いた、エレンは天幕の外から呼び掛けていた。
「ど、どうした!?エレン」
「団長の容体が…」
見回りしていた騎士の一人である、シグルはエレンに気付いて中に入ったのである。
「だ、団長…!?」
「クッ…!は、はぁ……はぁ……」
「ま、まさか…コレは…毒!?」
傷口から未だ溢れる出血の中に混じった色を見ながらシグルは言った。
「ど、どうしよう。私…キュアルは使えないの…」
治療魔法は本来、僧侶の血を引く者しか使えないのだが、勇者と魔王との戦いが起きている以上、この時代を生きる一般の人間は、辛うじてヒールレベルの治療魔法を教会でお金を払えば、誰でも教えてくれる制度を設けていることから、エレンは、ヒールを習得したのである。
「エレン…。じ、自分を…責めるでは…ない…」
「だ、団長…」
「シグル…。お前が…皆を率いて…今すぐ…帰還するのだ…」
「で、ですが…団長」
「い、良いか…。団長の…最期の…命令だ…。帰還せよ…」
グランは、そう息も切れ切れになりながら、絶えてしまったのである。
「だ、団長…!」
シグルとエレンは、涙を後にしながら、グラン団長の最期の言葉を聞き入れ、レフィリアへと帰還することにしたのだった。
俺は…死んだのか。
悔いのない人生だったと思う。
次の人生こそ、平穏な時代で過ごしたいモノだ…。
(ん?何だ…アレは?)
暗闇の中にある光の方へと俺は向かうと、そこは抽選会場という場所だった。
幸い、俺以外に誰もいないな。
まあいい。そういうこともあるさ。
ふむ。第二の人生がここで抽選されて決まるというのか。
面白い。
どういう人生が待っているにしろ、俺は俺だ。
すると、ゴロゴロと知らない連中が俺の後ろにぞろぞろと並び始めたのだ。
見たことのない連中ばかりだが、気にしないでおこう。
で、遂に抽選が始まったのだ。
俺は一番乗りだったんで、その可笑しな箱に突っ込んでみた。
すると、俺は………
『転生名前は鈴木星蘭(女)、転生種族は人間、転生日は2025年9月25日、転生先は日本にある福岡県、転生特典は超絶美少女+超絶美味の豚骨ラーメンレシピスキル、プレゼントは博多豚骨ラーメンセット』
と言われるまま、俺は良く分からないが、ニホンという所へと転生したのである。
「んー…いつもラーメン、最高!」
俺はニホンへと転生してから10年余りの月日が流れていた。
この世界で俺は、鈴木星蘭という名前を新たに名乗っている。
意味は、最初良く分からなかったが、この世界に転生してから“漢字”を始めとする文字に触れる機会が出来、何とか今はその名前を理解している。
それに何と俺は、あんな前世では男らしい身体のある筋肉系から俺のいた世界では見たことのない服に美少女系へと転生していたのだ。
前世の記憶があるとはいえ、美少女って難しいモノだな。
だが、この転生特典は良い。
前世では食べたことのないというか、見たことすら無かった『豚骨ラーメン』ってヤツ。
マジで美味い。
前世は、野菜と肉のスープと堅いパンだったからな…。
貴族生活が長いとはいえ、魔物討伐で戦場に出る機会が多かったから。
それにこの世界では、オマケに自分自身でも作れてしまうし、この世界における俺の家族にも大評判だ。
第二の人生も案外、悪く無いものだと平穏な時代に転生して良かったと俺は思ったのである。
何よりも、この世界では魔物というモノは存在しないからな…。