番外編1 魔石
我が輩は、魔石である。
抽選会場で、5万回目となるかも知れない、石として転生した、ただの石である。
色付きの魔石でも無ければ、能力付きの魔石でも無ければ、ただ転がっているしか能がないという、魔力を込めても、ただ3秒間だけ光るだけの石である。
人間だった頃、自分の思うままに、無差別で殺戮を繰り返した結果、石として転生を繰り返すようになってから、実に時を忘れる時間だけが過ぎていた。
『あー…今回も石。何も能力もない魔石。せめて動くことが出来たら…』
ってひたすらに願い続けるも、そんな願いなんて叶わない。
いいさ。
もう、俺は諦めている。
人間として生まれ変わる処かドワーフ、コボルト、エルフといる異世界で、もう転生しても石しか生まれ変わることが出来ない人生なんぞ、諦めるしかないのだ。
俺の罪は、決して消えることはない。
いや、許される問題でもないのだ。
だからこそ、俺は石なのだ。
石のように生きるしか許されない。
ただ一言だけ言いたい。
『その辺』って止めてくれ…。
≪その辺にありふれた所に転がっている石≫というネーミングは、やめてくれ。
それをもう何万回も聞いたことか。
最初の1、2回はさすがに数えたさ。
だがな?
10回、まだいいか。数えられる。
100回、厳しくなって来たな。
1万回、もう数えられるかっての!
5万回、どこまで数えたか覚えてねぇーよ!
多分、今回で5万回…だ。
だと思いたい。多分だけど。
いや、だって知らんし?
おっ!?同じ転生者だ。
確か…名前、何だったかな?えっと…?
というよりさ?アレさ?昔のイケメンだな。
昔は長髪のキャラクターって流行ったんだよな。
何を時代遅れ系の長髪キャラクターなんだか。
再び、長髪の時代が戻るってか?
とりあえず、今度こそゆっくりと転生者との話が出来るといいなと思いながら、俺は自分から声を掛ける前にまた、踏まれてしまったのだった…。