前編
「こんばんは、大阪の俳優みぶ真也です」
カメラに向かって話しかける。
「今夜は、とっておきのお話を致します」
こういって、怪談を語り始める。
この春から始めたリモート怪談ライブ。
ラジオでやってる「深夜のみぶ」の二番煎じの話もあるのだが、そこそこ視聴してくれるファンがいるのだ。
会場を借りて入場者を集めるライブが今はやりにくいので、動画の配信で怪談を紹介することにした。
参考にしているのは、下駄華緒さんの「火葬場奇譚」というyoutube番組だ。
下駄さんは火葬場の職員という前職の体験を生かし、あまり一般の人が知らない葬儀や火葬にまつわるエピソードを紹介している。
中には怪談っぽい内容のものもあるが、下駄さんの親しみやすいキャラクターもあって、誰が聴いても楽しい内容だ。
ぼくの怪談も怖がらせることより楽しんでもらうことを目的にしているので、おどろおどろしい効果音や擬音を使わずサラリと仕上げることにしている。
「…というわけで、その女の人の方がこの世のものではなかったのです」
と語り終え、
「じゃ、またお会いしましょう。
みぶ真也でした」
スイッチを切ろうとして、
「あ、それから、このお話の感想などコメント欄に書いていただくか、メールでいただければ嬉しいです。
直接、うちに来て聞かせてもらってもいいですよ」
そこまで話した時、カメラが急に光りだした。
まぶしくて目が開けられない。
何があったのか…
しばらくして目を開くと、そこはぼくが配信していた部屋ではなかった。
何もない空間と言えばいいのか、その空間で体がふわふわ浮いているのだ。
「お待ちしてましたよ、みぶさん」
どこからか声が響いてきた。
つづく




