第24話 ゴライオスVSコウエン 猫パニック
『第二試合 ゴライオス VS コウエン』
ミカミの助っ人として現れた、マントを着た人物がステージ上へと足を進めた。
ミカミが声をかける。
「ゴライオスさんっていうんですね! 頑張ってください。一生懸命、応援してます!」
ゴライオスはミカミを見て頬を赤くした。
「う、うむ……」
ステージの向こうからは、小さな女の子が現れた。
「コウエンちゃん頑張れ~!」
「……」
「ちぇっ。相変わらず不愛想っすね~」
ワダチはいつものように無視される。
ステージ上に二人が揃う。
『試合開始』
ゴライオスは着ていたマントを勢いよく脱いだ。
ラナとミカミが思わず叫んだ。
「「えええええええ!!??」」
マントの下から現れたのは大きな白いカエル……図書館一帯の守り神と言われているゴワス様だ。
「ゴワス様! 私の助っ人を連れて来てくれると言っていたのはなんだったんですか!?」
ミカミが驚きを隠せずに叫ぶ。
「うん……。最初から僕が代わりに出てあげようと思ったんだよ」
「ゴ、ゴワス様って戦えるの?」
ラナが不安そうに呟く。
エドガがラナに答えた。
「ゴワス様が戦うなんてことは見たことも聞いたことも無いが、あれだけ体格差があるなら、なんとかなるのかもしれんな」
「希望的観測う……」
ラナは口を尖らせる。
コウエンが今日初めて口を開いた。
「カエルちゃん……可愛い」
「ありがとう。君もとっても可愛いよ」
「普通に世間話するじゃん……」
ラナが呆れたように言った。この不思議な二人の試合はどうなってしまうのか。
コウエンが、ハイと手を挙げた。
「提案があります。私は戦う力はありません。なので違う勝負をして勝敗を決めませんか?」
「うん。僕はそれでも構わないよ。どんな勝負?」
「私の飼っている101匹の猫を、多く捕まえた方が勝ちです」
コウエンはワンピースの裾を少し上げた。
コウエンの服の中から、猫が大量にこぼれ落ちてくる。
ニャーニャーニャーニャーニャニャーニャーニャーニャーニャーニャ
喧嘩をしている猫が雄たけびをあげている。ブシャーー!!
昼寝をしていて今目が覚めたという風に動きの鈍い猫。子猫をくわえたまま歩きだす親猫。真っ白の猫が三匹列になって走り回っている。兄弟の猫なのだろう。ヨボヨボで見るからに老猫で、ボトッと落ちて出てきたまま寝ている猫。いかつい顔でのしのし歩きはじめるトラ猫。
白猫、黒猫、三毛猫、ハチワレ、ぶち猫、トラ猫、シマ猫、ロシアンブルー、アメリカンショートヘア、スコティッシュフォールド、シャム猫、ペルシャ猫、ノルウェージャンフォレストキャット、スフィンクス、ベンガル、メインクーン、マンチカン、ラグドール、ブリティッシュショートヘア、エキゾチックショートヘア、古今東西いろんな猫が闘技場を駆け回り始めた。駆け回らずに寝ている猫もいる。
「でたー! コウエンの四次元猫ワールドだー! おいでおいでー!」
ワダチが大興奮で言う。
「変な名前をつけないで」
ゴワス様が驚きながらも返事をする。
「わ、わかった。この勝負のろうじゃないか。僕が守り神だということを見せつけてやる!」
ゴワス様は魔法を使い、空中に大きな箱を作った。一匹ずつ猫を浮かせてそこへ入れ始める。
コウエンはポケットから木のかけらのようなものを取り出した。
「あ、あれはまさか……! いいのかあんなものを使って!」
エドガが身を乗り出す。
「そう。……またたびよ」
コウエンがまたたびを猫たちに差し出した途端、一気に猫が集まってきた。ゴロンゴロンと猫は転げまわりながら骨抜きになっている。コウエンはその猫たちを捕まえて、服の中にしまっていく。
「私は猫の事ならなんでも知ってる。……私は猫を愛してるの」
猫獲得数 ゴワス様 9
コウエン 21
コウエンが物心ついた時には親はいなかった。いつも近くにいてくれる猫が、コウエンの家族だった。
猫と人間の寿命は違う。幼い歳月を共に過ごしてくれた猫が死んでしまった時、コウエンは旅に出た。
「世界中の、困っている猫を助けよう」
怪我をして動けなくなっている猫。人間からいじめられて危険な状態の猫。風邪をひいている猫。お腹をすかしている猫。
コウエンは片っ端から困っている猫を助け、
看病した。もう一度野生に帰そうとしても、コウエンに懐いて離れたがらない猫も多かった。そういう猫はみんなコウエンが面倒を見ている。
「私は懐に別の空間を持っているの。それは全部猫のため」
コウエンは踊るようにくるくる回って、かつお節を撒いていく。猫がどんどん集まっていく。
ゴワス様も負けじと猫を集めていく。物静かな猫や老猫は、すみっこに集まってじっとしている。きっといつもそうしているのだろう。そんな猫たちを狙って、すくい上げるように魔法で移動させていく。
「あなた、とても扱いが丁寧ね。そういう人は猫に好かれるのよ」
「へへへ。猫もカエルも人間も、神様だって同じ生き物だもの」
ゴワスは魔法で応戦していたため、常にじっと動かずにいた。動かなくて暖かいものが猫は好きだ。気づくとゴワス様の上に猫がたくさん集まり、ゴロゴロと日向ぼっこをしている。
「わ~い! 大量ゲットだ~!」
ゴワス様は猫の為に衝撃を与えないようにソーっと移動させる。ぐっすり寝ている猫がピクリとも動かない丁重さだ。
「なかなかやるわね」
「えっへん!」
猫獲得数 ゴワス様 50
コウエン 50
「最後の一匹!」
ミカミが叫ぶ。
ステージの中央には、一匹の若い黒猫がいた。毛を逆立ててフー!フー! と威嚇している。
「やっぱりあの子が残ったのね……」
コウエンが愕然としている。
「一匹なら僕の魔法で囲んじゃえばすぐだよ!」
ゴワス様は、ヤアー!と言って、見えない壁を作って黒猫を囲んだ。
ニャアーー!!と猫は猛進した。
バリイイイン!!
ゴワス様の魔法が打ち砕かれる音がした。
「無駄よ。……あの子は最近保護した新入りなの。やっと昨日、後ろ脚の怪我が治ったんだけど……。気が立っていて手が付けられないの」
猫はステージの上を縦横無尽に走り始めた。速すぎて見えないほどだ。
「名前はブラックミサイルよ」
「君ネーミングセンスはいまいちだねえ」
ゴワス様はどうしたものかと頭を悩ませる。
ブラックミサイルはフギャアー!!! と言いながら走りまわる。
コウエンはちゅ~るを片手に優しく呼びかける。
「ブラックミサイル~おいで~怖くないよ~」
他の猫ならイチコロだろうちゅ~るも、ブラックミサイルは見向きもしない。
ゴワス様は考えた。この黒猫は怯えている。「コウエンさん、この子が怪我をしていたところに他の猫はいなかったの? 飼い主が探していたりとか」
「それはないわ! 本当に気を付けているもの!」
コウエンは確信に満ちた表情で言った。
「私が保護するのは一人ぼっちで困っている猫だけよ」
「でも君のところはこの子の為にならないよ。たくさん猫がいて落ち着かないんじゃないのかな」
「そうなの?」
コウエンはブラックミサイルを見た。
ブラックミサイルはコウエンに向かってフシャアー!! と威嚇する。
「もう怪我も治ったし、それだけ走れるなら様子見も必要ないわね。いいわ。好きなところへ行きなさい。もう捕まえようとしないから」
ブラックミサイルはコウエンに背を向けて走り出した。勢いよくゴワス様へと突進した。
「うわあ!」
ゴワス様が叫んで口を開けた瞬間、ブラックミサイルはゴワス様の大きな口の中に飛び込んだ。
「ああ!」
「た、食べちゃった……!?」
ミカミとラナが叫ぶ。
ゴワス様はしばらく動かなかったが、やがてそっと口を開けた。
ゴワス様の大きな口の中で、疲れ果てたブラックミサイルがすやすや寝ていた。
猫獲得数 ゴワス様 51
コウエン 50
『第二試合 勝者 ゴワス』
「……ブラックミサイルは一人でゆっくりしたかったのね。ゴライオスさん、ありがとう。ブラックミサイルをよろしくね」
ゴワス様はニッコリ笑ってうなずいた。口の中にはぐっすり眠っているブラックミサイルがいるので、返事に困った。
「(図書館の裏にある森の奥。僕の家の洞窟なら、この子も安心してゆっくり暮らせるだろう。友達ができて嬉しいな)」
ゴワス様は皆のいる方を振り返った。エドガ、ミカミ、ラナは勝利したゴワス様と、新しい仲間の黒猫を歓迎していた。
『第三試合 ラナVSワダチ』




