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第22話ジーノVSタヅナ タヅナの求める強さ

闘技場のステージの上に、ジーノとタヅナが出そろう。


「俺は魔王と戦うつもりで来たってのによお! 何で見ず知らずのおっさんなんだよ! あんた先週いたかあ!?」


タヅナは顔を歪ませて地団駄を踏んでいる。歯ぎしりの音がギリギリとジーノの方まで聞こえてくる。


「まあまあ。確かに私は魔王ではないが、油断していると痛い目を見るぞ。ちなみに先週はちゃんといた。君が覚えてないだけだ」

ジーノは余裕の表情でナイフを片手でクルクル回している。


「いけー! ジーノ! 特訓の成果を見せちゃえー!」

ラナが指笛を吹いて応援する。

ミカミはとてもそんな気持ちで見てはいられなかった。

「(あんなに強かったタヅナとジーノさん……。大丈夫かな? ジーノさん死んじゃわないかな?)」

ミカミは祈るような気持ちでジーノを見つめた。


「心配しなくてもいい。どーんと大船に乗った気持ちで見ていたまえ」

ジーノは仲間の方を振り返って笑ってみせた。


『試合開始!!』


図書館の主の声が聞こえた瞬間、ジーノが先に動き出した。

「トリャアアア!!」

ジーノの手から何百ものナイフが放たれた。タヅナを囲むようにナイフが移動し、全てのナイフがタヅナの周りを取り囲んで浮遊している。


「これで君の動きは封じた。私の合図でナイフは一斉に君を貫くだろう。……降参するなら今のうちだぞ」


「ふざけんなおっさん!!! こんなもんが俺に効いてるとでも思ってんのか!!」


タヅナは全身から炎のマグマを爆発させた。その豪熱でナイフは吹き飛んで溶けていく。


「俺を刺せるもんなら刺してみろおおお!!」

タヅナは炎のマグマを手のひらに集めて、赤く燃える大剣を形作った。それをジーノに向けて構える。


「やれやれ。説得は無駄なようだな。仕方ない」

肩をすくめるジーノ。ジャケットの裏から追加のナイフを取り出して構える。

タヅナは大剣をジーノにめがけて突き出し、勢いよく走り出した。





この世界に転生した者は勇者となり、魔王を倒す旅にでる。

タヅナは勇者と名乗っているが、転生者ではなかった。別の世界ではなく、この世界で生まれ、育ったタヅナ。なぜ彼は勇者を名乗っているのだろうか。

話はタヅナが幼い子どもだったころに遡る。



「タヅナにいちゃ~ん! 助けてえ!」


「クララ! 大丈夫だ。なんてことないから跳んで降りろ!」


「ええ~ん、怖いよう……」


妹のクララと遊んでいた。木登りをしたクララが、怖くて降りられなくなってしまった。そんなに高くないのに、仕方ないやつだなあ。


「大丈夫。にいちゃんが受け止めてやるから、思い切って跳んでこい!」


「うう……絶対受け止めてね。絶対だよ」

クララはタヅナを目掛けてピョンと跳んだ。


「えいっ!」


タヅナはクララを包み込むように、ガシッと受け止めた。


「な? 全然高くなかったろ? 上から見下ろすと高く見えるだけだよ」


「ほんとだ! へへへ。にいちゃんありがとう!」


俺とクララは仲のいい兄妹だった。いつもクララの世話を焼き、クララは嬉しそうに俺の後ろをついてまわった。優しい両親とともに、幸せな生活を送っていた。



ある日、森の中を探検して遊ぼうと、出掛ける準備をしていた。

水筒に水を入れる俺を目ざとく見つけて、クララは言った。


「にいちゃん、どっか行くの? クララも一緒に連れてって」


「ええ~……。森の中を探検するんだ。クララにはまだ危ないよ」


クララは一瞬で目に涙を溜めて大泣きし始めた。俺が構ってくれないと言ってすぐこれだ。


「泣くな泣くな。じゃあクララも来いよ。あんまり森の奥の方には行かないようにするから」


「……ほんと?」

大泣きしていたのが噓のように、クララは一瞬で泣き止んで自分の水筒を探し始めた。


「にいちゃん、、ありがとう!」


「はいはい」


クララを連れて家を出て、畑仕事をしている両親に声をかけた。


「森の方に遊びに行ってくるよ!」

「行ってくるよー!」

俺のマネをしてクララも大きな声を出す。


「はあい! 森の奥には行かないのよ。晩ご飯までには帰ってね」


「気をつけろよ~!」


母さんと父さんは、稲穂の光る畑の中から顔を出し、手を振って見送ってくれた。俺とクララも手を振る。村を出て、森へ向かう。


最後に見た両親は、汗水たらして俺たちのに働いてくれていた。





森の中を歩き回り、きのこを採ったりかっこいい枝を拾ったり。くたくたになるまで探検した。


「そろそろ帰るか!」


「うん。お腹へってきたよ~」


日が暮れ始めた頃、家のある村へ帰ってきた。

村はゴウゴウと炎を上げて燃え上がっていた。


「に、に、にいちゃん……」


「クララ!! 俺から離れるな!! 父さんと母さんのところへ行くぞ!」


俺は家に向かって走り出した。クララは必死で俺に着いてきた。

走っている間、何体もの魔物が見えた。

……村は魔物に襲われたんだ。


家に戻ると、俺とクララは茫然と立ち尽くした。金の稲穂がなびいていた畑は灰になっていた。家は焼け落ちて、黒い焦げた木材の塊になっていた。


隣でクララが声も上げずに泣いているのが分かった。


何も考えられないでいると、後ろで魔物の声が聞こえた気がした。振り返ろうとしても、錆びついたように体が動かない。


ここから逃げよう、とクララに言おうとして、隣を見た。その時、クララの体が魔物の爪に貫かれた。


「にいちゃん、たすけて……」


と言って、クララは魔物の手の中で絶命した。


「うわああああああああ!!!」


俺は魔物に向かって走り出した。何が何だか自分でも分からなかった。

どんどん魔物の顔が近づいてくる。


「グオオオオオオオ!!」


いきなり魔物の腹部が爆発して倒れた。よく見ると、離れたところに人影があった。


魔物は黒い煙のようになって消えてしまった。後にはクララの遺体だけが残った。


「クララあ!!」

クララに駆け寄って体を抱きしめる。もう冷たくなっていた。

魔物を倒した人間がこちらへ歩み寄ってきた。


「すまなかった。君しか助けられなかった。もっと僕が強ければ……。僕はまだ弱いんだ。勇者であることが恥ずかしい」


「……勇者?」


何が勇者だ。倒すべき敵がいるのに、まだ勝てないから指をくわえて見ていたっていうのか?


「……お前は勇者じゃない」


「え?」


「転生したら弱くても勇者なのか? お前は自分が弱いというのに勇者を名乗るのか?」

俺はクララの体から手を放して立ち上がった。


「俺だけ助けてなんになる。お前がもっと早く来ていればこの村は助かったんだ!! お前がもっと強かったら父さんも母さんも、クララも生きていたんだ!!」


勇者は何も言えずに立ち尽くしている。


「お前みたいな弱い勇者に存在価値はない。……俺が強い勇者になってやる。最強の勇者になってやる!!」



その日からタヅナは旅にでた。勇者を名乗り、強さだけを求める旅だ。

何度も何度も戦いを繰り返し、タヅナの人生は戦いと強さを求めること。それしか無くなってしまった。





「俺は強いぞおおおおおおお!!!」


タヅナはジーノに向かって走り、距離を詰めて大剣を振り下ろした。

ジーノはナイフでそれを受け止めるが、ナイフはミシミシと音を立てている。今にも折れてしまいそうだ。


ジーノは足元からナイフを飛ばしてタヅナを狙う。

タヅナは身を翻して距離をとった。


「確かに君は強いなあ!!」


タヅナが飛ばしてきたマグマの塊を、ナイフを投げて相殺するジーノ。ナイフでは相殺しきれなかったマグマが、ボジュウ!と音をたててジーノにぶつかった。


「グアア!」


「ジーノ!!」

ラナは思わず声を上げた。

煙の中から現れたジーノの姿は、胴と左腕が焼け焦げている。

今すぐにでも回復したい衝動を、ミカミは必死で抑え込む。

ミカミの肩にエドガが触れた。

「大丈夫だ。あいつはまだ負けてない」


何度も放たれるマグマの塊を対処しているジーノに、間髪入れずにタヅナが大剣で切りかかっていく。


「防戦一方じゃねえか!! 俺はまだ全然本気出してねえぞ!!」

その言葉通り、タヅナの炎のマグマは勢いと大きさを増していっている。


「俺は最強の勇者だあああああああ!!」


タヅナの咆哮が闘技場を轟かせた。それに呼応するかのように、タヅナを熱気が包んでいく。


「まるで戦いしか知らん獣のようだな」

ジーノはジャケットのポケットから小瓶を取り出した。中には薄桃色の液体が入っている。


「これはできれば使いたくなかったが……背に腹は代えられんな」


ポンと、コルクの蓋を抜いて、一気に液体を飲み干したジーノ。

飲んだ途端、喉から全身にかけて痛みが走った。ジーノは苦しみだした。

「うううう……」


「なんだなんだ!? 服毒自殺か~!?」

ワダチがわくわくしたように叫んだ。


「……バカなことを言うんじゃない」

そ言いながら、ジーノの体は薄桃色の煙で包まれた。ジーノの姿が一瞬見えなくなったかと思うと、すぐに煙は消えた。


そこにいたのはジーノには違いないが、いつもより20年は若返っているであろう姿だった。


「ジーノ……だよね?」

「ジーノさんだと……思うけど」

ラナとミカミは声を揃えた。

「「かっこいい~!!」


ジーノは、ふう、と息をついて、ジャケットの合わせ目を直した。いつもよりサラサラとなびいてくる前髪を手で抑えた。


「この姿は……嫌な思い出が蘇ってくるのだよ」


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