第20話 束の間の平穏、特訓開始
異世界にある図書館『スウィート&ティアーズ図書館』で図書館の司書として働くことになった少女ミカミは、突如現れた勇者達との闘いを強いられる。勇者が本を狙う理由は? エドガが勇者を倒す理由は? ミカミは立派な司書になれるのか?
登場人物
エドガ 館長 能力【不明】 毒舌。
ミカミ 主人公 能力(白魔法】 いい子
ラナ 司書 能力【赤魔法】よくしゃべるギャル
ジーノ 司書 能力【ナイフ投げ】おじさん。
(『サンニャーチコの戦いまであと1週間』)
タヅナ来襲後、荒れ果てた図書館の整理、修理、そして来るべき戦いの準備の為、スウィート&ティアーズ図書館は1カ月間の休館をすることになった。
「1カ月も休館されたら困っちゃうねぇ」図書館に入ろうとして止められたお客様はそっと呟きながら帰っていった。
「誠に申し訳ございません」ミカミは頭を下げ続けた。休館の情報を知らず、休館の事実を知らず、図書館まで足を運んでくださったお客様に謝罪をしながら、ミカミ達はそれぞれの準備を行っていった
エドガはいつでも図書館に戻れるように100メートル程図書館から離れて、氷の魔法の練習をしていた。
目の前にあった木を凍らせようと試みた。
パラパラ……
木は凍ってしまうというよりもパリパリに固まってしまうといった状態になった。
「なぜ、上手くいかない」それからエドガは図書館の中に戻ると、氷の呪文の本を手に取り、自分の能力を把握しようと試みた。
「俺の能力は氷系だと思っていたが……」いくつか本を読み漁っていると、エドガ自身が持つ能力と実際に使われる氷系の能力には大きな違いがあった。
まず一つ。普通の氷と違い、エドガの氷には水分が含まれていなかった。
「水分が無い氷……、それはもはや氷とは呼べないような気がするな」エドガは自身の能力を改めて再確認した。
次に一つ。普通の氷と違い、エドガの氷は触れると一瞬で溶けて失われてしまう儚さがあるという点。このせいでタヅナの炎との打ち合いの際はほとんど炎に飲み込まれ、一瞬でエドガは窮地に陥ることとなってしまった。
そして最後に一つ。エドガの氷はそれぞれに命を宿っているかのように操ってもいないのに勝手にあちらこちらへ動きまわる。これは不思議だとエドガは思った。
「この小さな氷の結晶達は、それぞれ考え方や価値観を持って生きているのかもしれないな」エドガはふっと笑った。
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ミカミは図書館の入り口に立ち、率先してお客様対応をしていた。本を返しに来た人の本を受け取り、図書館の中に戻した。私は回復しかできない能無し。次の勝負は一対一の真剣勝負。私の出る幕はない。だったらほかのメンバーの準備ができるよう、私一人でも図書館の仕事をこなすんだ! ミカミははりきりながらいそいそ返却本を移動していると
「こんにちはぁ、ミカミちゃん」5メートルほどの巨体に全身白で固めたような見た目の大きな蛙が突然ミカミを尋ねた。
「あ、ゴワス様! お久しぶりです」ミカミはそういうとぺこっとお辞儀した。
「今日は一人で仕事をしているのかぁい?」
「いいえ、皆周辺でいろいろと修行しているんですよ。一週間後に彼らがまたこの地にやってくるということなので」
「その件なんだけどさぁ~」ゴワス様はあくびをするかのようにのんびりとした声で話していた。
「図書館の主に確認したのだけれどぉ~、なんでも4人対4人で各々が一人ずつ出てきて戦い合うということなのねぇ~」
「1対1の戦い……。なんだかゲームみたいです。見世物みたいで嫌ですね」
「エドガジーノラナはまあどうにでもなると思うけど、ミカミちゃんが前線で戦うのは非常に危ないことだと思うのねぇ」
「いえ、でも……私は大丈夫ですよ」そういいながらもミカミは脳裏に不安を感じていた。エドガさん達でも苦戦するような敵と私みたいな非戦闘員が戦う。こんなことになるなんて……。
「そこでさぁ、助っ人がいるのよぉ~。彼を呼ぶからミカミちゃんは試合の時は応援してぇ~」
「助っ人……ですか?」
ゴワス様はそれから大きく息を吸い込み、はいた。
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スウィート&ティアーズ図書館内
「ジーノーどこ連れて行くのよ~?」ラナと共にジーノは閉架書庫の奥深くまで歩いていった。
「とにかくラナ、君は使いすぎた魔力を回復させる必要がある。」
「そんなこといったって、MPを回復させるにはもう寝るしかないのよ~。私はあと300時間以上の睡眠が無いとまともに魔法は使えないってお医者に言われたし~。どのみち来週までには間に合わないよ~」
「この図書館は元々魔王の城だったんだ。エドガの前にこの図書館を経営していたガーネットさんも魔王だったんだからね。魔王の城は勇者に倒されるためにある。あるんだ。回復ができる場所が」
「そんなこと言ったってさ~そんな都合のいいのあるわけ……」
彼ら二人は閉架書庫の部屋をひとつひとつしらみつぶしに見ていった。すると
「ほら、あった」そういうとジーノは部屋にある巨大ベッドを指さした。
「えー、絶対ホコリやばいっしょ~、なんか古臭い匂いするし~。無理―」
「つべこべ言わず! ほら!」ジーノはラナをベッドまで押し倒した。
「ガー」ベッドに寝転んだ瞬間一瞬でラナは眠った。
「ほら、疲れてるのに無理して図書館に来て。まったく」パチン!とジーノはフィンガースナップすると、暖かそうな毛布と布団が出てきた。
「ここで眠ったら多分半日もせずに回復するだろうって図書館の主様が言ってたよ。お休みラナ」そういってラナに毛布と布団をかけ、ジーノは部屋を出た。
「さて、私は来週襲い掛かる敵を前にどうしたらいいかな……」ジーノはやりたくないなあと思いながらも禁断とされている部屋へと入っていった。
「これしかないのかねぇまったくさ」ジーノとラナはそれから約6時間閉架書庫から出てこなかった。
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ここは闇の世界。ミケランドール(スウィート&ティアーズ図書館のあるところ)、サンニャーチコ、ハナマチのはずれにある町"モジャラ"の隅にある謎の場所。
タヅナは寝転がり、空を眺めていた。この闇の世界にある月は赤く妖しく光っていた。
「俺はこの赤い月が好きだ。ワダチも見てみろ」タヅナは団子を食いながらそう言った。
「あいにくそんなセンチメンタルな感情もってないっすね~タヅナさん。月が赤いのがそんなに良いもんですかね~」
「ふ、わからんやつにはわからんのだ。この幻想的な美しさが」
「ってか、二人はまだっすかねぇ。もう2時間も来ませんよ~真面目に30分前から集合していた俺らがバカみたいじゃないっすかーいくらなんでも腹立ってきましたね~」
「ふ、そうだな。こんなきれいな月が無かったら俺も呆れて帰っていたかもしれん」そんな会話を二人がしていると、
ゴゴゴゴゴゴゴ……威圧感が二人を襲った。
「お、来たな!」タヅナは起き上がった。ワダチも立ち上がり、ため息をついていた。
「ハァーやっときたよ」
一人は全身黒ずくめに身を包んだ長髪の男。もう一人は120センチほどの背たけの小柄な女の子。
「久しぶりだな。タヅナ、ワダチ」タヅナは男が挨拶をする間もなく剣を抜き襲い掛かった。男は刀を指でつかんだ。
「相変わらず凄まじい反射速度だなあ!」
男は青黒いオーラを放った。タヅナは吹き飛ばされた。
「やはり、お前と遊ぶのが一番楽しそうだ。ここでお前を殺す!」
「えっ、ちょ……タヅナさん何やってんの?……いくら遅刻したからってさ……マジで修羅場?……これマジ? 楽しそうじゃん!!」ワダチは持っていた刃物を体中にめった刺しにして、そのまま男の下へ襲い掛かった。
男は襲い掛かるタヅナとワダチをみてニヤリと笑った。女の子は3人から50メートルほど下がり、正座して見学した。




