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第17話 ガチで強い勇者達、ついに現る。

異世界にある図書館『スウィート&ティアーズ図書館』で図書館の司書として働くことになった少女ミカミは、突如現れた勇者達との闘いを強いられる。勇者が本を狙う理由は? エドガが勇者を倒す理由は? ミカミは立派な司書になれるのか? 


登場人物


エドガ 館長  能力【不明】 毒舌。

ミカミ 主人公 能力(白魔法】 いい子

ラナ  司書  能力【赤魔法】よくしゃべるギャル

ジーノ 司書  能力【ナイフ投げ】おじさん。

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・

大地が震え、ドラゴン達が雄たけびを上げている。

ドラゴン達は一人の男を囲んでいる。男は剣を抜いて大胆不敵に笑っている。


「お前ら! 俺を楽しませてくれるんだろうな?」


一瞬の出来事だった。男は剣を四方八方に振り回し、ドラゴン達は攻撃する間もなく、次々と倒れ去っていった。


「弱いな! お前ら! つまらんぞ!」


男は倒れたドラゴンの体を輪切りにしていき、その肉片を剣で刺し、そのまま魔法で火をつけ、焼き始めた。肉はみるみるうちに焼けていった。


「そろそろだな!」そのまま男はこんがり焼けたドラゴンの肉に大口を開けて思いきり食らいついた。


「うめえええええええ!」


男はそのままそこにあったドラゴンすべて残らず一人で平らげてしまった。


「ひさびさの焼肉も捨てたものじゃないな!」


満腹感を得た男はその場に大の字で寝ながら、次の食事のことを考えた。


「この世界の生き物は一通り食べてしまった気がする。あとは何を食おうか」


その時、ポケットに手を突っ込みながら一人の男が現れた。


「満腹のとこ悪いんすけどー、タヅナさん、そろそろ出発しない?」


「俺に命令するのか?」タヅナと呼ばれた男は全身に炎を纏い、男を睨みつけた。


「そうっすよー。こんなんじゃいつまで経っても目的地に着きやしない。もう出発して1カ月にもなるんすよ。タヅナさんが狩りばっかりしているから」男は言い終わると噛んでいたチューンガムを膨らませた。


「ワダチ、お前は事を焦りすぎる。旅は楽しむものだ」


「楽しむも何もねー。楽しみすぎなのよーアンタ」ワダチと呼ばれた男はいい加減にしろと言わんがばかりの態度でそう言った。


「スウィート&ティアーズ城までもうすぐっすよ。魔王はもうすぐそこにいるんすから」


「魔王……か。今まで何回魔王と呼ばれている生き物と戦ったことだろう。ワダチは初めてか?」


「まぁそっすねー。でも今までこの世界で強いやつに出会ったことないから楽勝じゃねぇ?って感じっす」


「そうか。気持ちは分かる! 俺もいままで魔王に苦戦したことなど一度もない! だがここの世界は誰もクリアできたことがないと聞く」


「絶対ハッタリっすよ」


「まあな。だがアレクがそいつに殺されているんだ」それを思い出すと急にタヅナは涙をぼろぼろとこぼしながら大声で男泣きを始めた。


「うっせーっすよーもうー。そんなに仇を討ちたいなら早く行きましょーぜ」


「確かにな」タヅナは炎を足に集中させた。


ボン!!!!!!!!!!!


その時、爆発が起こった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「なんですかね、今の音?」今日もスウィート&ティアーズ図書館でのんびりと働いていたミカミは窓を眺めた。


「とてつもない爆発音。間違いなく敵襲だ。ラナ、準備しろ」


「ハイハーイ、ラナ頑張りまーす」ラナは呪文の詠唱を始めていた。


エドガは図書館の中心部を触れ、目をつぶり迷走した。


ジーノとミカミはいつものことだと思い、まだぽかぽかと晴れる陽気な空を楽しんでいた。


すると

バリバリバッシャーン!!


突然窓が割れた。割れたガラスが雨のように館内に降り注いだ。ワダチが立っていた。


「ジーノ!!!利用者の避難だ!」エドガはすぐさま非常口の方へ指を差した。ジーノは確実に今までと違う雰囲気に圧倒されながら、お客様の安全を守ることに全力を出した。


「貴様が魔王か」タヅナは剣先をエドガに向けそう言った。


「地は穢れ 海は雲を突き破る 未来を捨てろ 今ここに列を成せ

徒党を組め 孤独を排せ 天地を揺るがし踏み鳴らせ!

荒唐無稽のアポクリフォス 生きとし生けるグランクチュアリー 撃墜! 天註! 迎え撃て!」ラナの赤魔法が放たれた。


「グゥオッ!」タヅナは降りかかる魔法を剣で構えた。


「なにあれ、魔法を剣で止めてるのー? 意味不明~」ラナはさらに呪力を増した。


「黒の龍泉、群青の君、紺碧の夜を轟かせ! エレーアワープ!」


「ウォォオオオオオ!」男は姿を消した。ワープは成功したのだ。


「エドガ、いつものあのオアシス部屋に追いやったよ! 早く!」ラナは続けてエドガもワープさせた。


「おー、早速やってるっすねー」窓から同じく一人の男が覗き込むように降りてきた。


「あんたら、何の用があってきたの~」ラナはこれまでにない敵の雰囲気に圧倒されならがらも冷静さを維持していた。


「何しに来たかって? んーそっすねー? 勇者ごっこ?」ワダチはニヤリと笑みを見せた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ここは、エドガが作った部屋。オアシス部屋。草原が広がり、居心地のいいバカンスと化している。エドガの好きな音楽が流れ、川のせせらぎと鳥の鳴き声が聞こえる。いつもはラナの魔法でこの地に敵を送り込み、エドガがとどめを刺していた。

「凄い女だ。この俺に魔法攻撃を当てるとは」タヅナは剣を大きく振り回し、勢いを増して剣を真横に放り投げた。炎が全身を伝った。炎を手のひらの上に集め、赤い太刀を作り出し、構えた。先ほどの剣と比べると一回り大きいものだった。

「でもまさか魔王との一騎打ちを自らセッティングしてくれるとは……親切というか愚かというか」エドガはいつ敵が襲ってくるか分からない緊張感に身を包まれながら、本を片手に持ちページを開いた。


「その本が武器なのか?」タヅナは質問した。エドガは無視をした。本がパラパラとめくりあげられていた。


すると同時に炎の太刀がエドガを襲った。タヅナは太刀を大きく振りかぶりエドガの頭上を狙った。


太刀はエドガの頭上ぎりぎりで止まった。ひびが入りかけていた。


「ほう……!!!!なんという固いバリアだ。俺の攻撃を防いだバリアは今まで初めてだぞ!」


タヅナは太刀を更に強く握り、力を振り絞った。


「グォオオオオオオ!!!!!」

バリーーーーーン!!!!

バリアは粉々に打ち砕かれた。エドガは身を引いて間一髪でかわした。


「やるな」エドガは本に書いてある名前を見つけ出した。


「お前の名前は……『タヅナ』」


「そうだ、俺はタヅナだ!! だから何だ! 魔王!!」タヅナはまた勢いよく太刀を振り回しエドガの喉元を狙った。エドガはそれも間一髪で交わした。


(なんという威力とスピードだ……)エドガは後ろに下がり続け、森の中に身を隠した。


「なぜ名前を呼んだのに成仏しない……」エドガは汗が過ぎる喉元を右手でぬぐった。


「悪いが、かくれんぼは嫌いでね……!!」タヅナは太刀を地面に刺した。刺した場所から炎が波のごとく逆立ちマグマとなり、タヅナの周辺に降り注いだ。


火のマグマが流れる海のように周囲を流れた。オアシスは一瞬にして燃え尽き、全てのものが塵すら残らず消えようとしていた。


「うっ!」エドガはとっさに壁を敷いた。下にある本とオアシス内の本を守るために渾身の力を込めた。マグマは下部には侵食しないように精一杯のバリアを作った。だがマグマはエドガを襲った。

「うわあああああああっ」エドガの皮膚が崩れだした。エドガのすべてが塵になろうとした。完全にエドガは燃え尽きた。


「ようやく、魔王らしい姿になったな!」


「これは……俺なのか?」エドガは豹変した自分の姿を見た。今まであった自分の姿は幻だったのかと言わんばかりにすべてを凍らせてしまうような青い皮膚。そして白だった髪の毛は紫色に代わり、その姿に異形のイメージを感じないものはいないという姿だった。


エドガは両の手を横にやった。氷の結晶がタヅナめがけてすすんだ。


「ふん! 力比べだな! いいだろう!」タヅナは再び太刀を大きく振るった。炎のマグマがエドガをめがけてすすんだ。


二つの力は重なり合った。氷の結晶とマグマは複雑に絡み合い、芸術作品のようになった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ワダチはガムを膨らませながら、その場にたたずんでいた。


ラナは魔力を完全に使い果たしていたが、まだいつでも魔法で飛ばせるぞという圧を飛ばし続けた。


「あのさ、一つ聞きたいんすけどー。あんたらは魔物っすかー? 見たとこ普通の人間っぽいっすけど」ワダチは膨らませたガムを引っ込め、ラナに問いた。


「何の話なのか全然わからないな~ラナ頭悪いもん~」


「どうして魔王の味方やってんのかってことっすよ」


「魔王って誰? エドガのこと?」


「エドガだかなんだか知らんけど、察してほしいっすね~」


その時、「クリムゾンスノウ!」


数本のナイフがワダチの下へ進んだ。ナイフはすべて逸れた。


「何の話だか知らないけれど、女の子相手にその態度はないと思いますね」ラナは隣を見た。ジーノの姿だった。


「ラナ、下がっていなさい」ラナは下がらなかった。呪文を唱えだした。


「なんすかおっさん。全部スカしといてなにかっこつけてんの」


「ふ、君みたいな若者には私の良さはわかるまい」


「なんだかムカつくジジイって感じっすねー殺してやろー」ワダチは自分の親指を引きちぎった。


「喰らえ~」ワダチはそのまま親指をジーノめがけて放り投げた。


「麒麟落とし!」ジーノはナイフを投げ返して応戦した。親指にナイフは綺麗に刺さってそのまま壁に突き刺さった。


「随分と気色悪い戦い方をするもんだね」ジーノはそのままナイフをワダチめがけて放り投げ続けた。ナイフは何本かワダチの体に刺さったが、ワダチは止まらなかった。


「ほい」ワダチはそういうと失った親指以外の四本指をジーノの顔に「とん」と当てた。


「何をしたんだ?」するとジーノの顔に文字が浮かび上がった。


「慮の事故」


「何だこれは……?」


「あと親指をつけたら完成っすよ~」ワダチは壁にナイフとともに突き刺さった親指を引きはがし、そのままジーノに投げつけた。


親指はジーノの額に触れた。


「不」ジーノの顔に更に文字が浮かび上がった。


「これで『不慮の事故』完成~。あんたはもうすぐ不慮の事故で死ぬことになります」


「なん……だと……」ジーノは顔の頬についた文字を拭おうとしたが消えなかった。


「さて、あとはワープ女を……」


「混沌を纏いし奏での姫 薫風とともに舞い降りる

リルカの歌声 カラルの呻き 根源の音を我に示せ

時は迫る 悔恨の響き 孤独の姫は何を思う

涙の落ちる音がした 刮目せよ 嘲笑せよ 死の淵に立つ我を見よ」


ラナは涙を一筋流した。


「エレーアワープ」


「うぉ」ワダチは何処かへワープされていった。


「大丈夫か、ラナ!」ジーノは駆けた。


「……もう……ダメ」ラナは倒れた。


「ラナーーー!!」ジーノは叫んだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「楽しい! 楽しいぞーー!」タヅナは勢いよく太刀を振るっていた。エドガはその異様な姿のまま氷の結晶で槍を創り出し、タヅナと互角に打ち合っていた。


「あれは……エドガさん……?」ミカミは崩壊したオアシス園で二人の闘いを見て震えていた……。


「どういうこと? エドガさん…本当に魔王なの?」


戦うエドガの姿はひどく無機質で、何物も寄せ付けぬ見た目をしていた。


闘いはまだ続く。



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