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第13話 ジーノさんのナイフ投げ

異世界にある図書館でお仕事をする女の子の物語


登場人物

館長 エドガ 冷静

司書 ミカミ 主人公 基本いい人

司書 ラナ よくしゃべるギャル

司書 ジーノ 世話焼きで若者にうざがられるおじさん

お客さん ピヨネッタ 音楽家。

お客さん オディバさん 常連

私が仕事をしている時、一番声をかけてくれるのはジーノさんだ。


「ミカミさん、お茶飲みますか?」ジーノさんはいつも笑顔で私に話しかけてくれる。


「ありがとうございます。ジーノさん」


私が仕事で難しいレファレンスに当たった時、


(説明しよう! レファレンスとは、調べたいことや探している本のことなどのご質問について、必要な本・情報をご案内するという仕事なのだ!)


「大丈夫? ミカミさん、手伝おうか?」


「ありがとう! ジーノさん」ジーノさんはいっつも優しい。大好き。


でも最近、勇者がたくさんやってきて戦うことが多くなってしまってから、ジーノさんに疲れが見えてきたような気がする。


基本的に図書館は"館長のエドガさん"と"私ミカミ"と"司書ジーノさん","司書ラナさん"の4人で運営している。(とても少ない)


敵(勇者)は定期的に私たちの図書館を襲ってくる。なんでも図書館の奥底に眠るという噂の"魔王の居場所が分かる本"とか"宝物の在処が描かれた本"だとかそういった便利な本を奪おうとしているらしい。(普通に利用者として来館すれば借りることならできるのに)


私たちは4人で図書館を運営しつつ、彼ら勇者を撃退しなければならない。


基本的に撃退に必要なのはラナさんの移動術だ。


ラナさんは赤魔法のスペシャリストだ。対象のものを移動させることに関しては向かうところ敵なしだ。


まず真っ先にラナさんが敵の勇者をエドガさんの部屋に空間移動魔法で送る。そしてエドガさんが勇者をやっつける。


エドガさんは何をやっているかよくわからないけれど、とにかく勇者の攻撃を全て受け流す。相手が強く攻撃すればするほど、相手はダメージを逆に受ける。反射的な効果なのかも知れない。


エドガさんは相手の名前を瞬時に調べ、その名を呼ぶ。すると名前を聞いた勇者は体を失って元の世界へ帰っていくのだ。


「俺が倒せるのは勇者(転生者)だけだ。他はラナの魔法で遠くに飛ばしてくれ」


こうしてみるとエドガさんとラナさんだけで大体の敵はやっつけているのではないかと思う。


ラナさんとエドガさんが戦っている間、ジーノさんと私は他のお客様の対応をしたり、お客様が少なかったらどちらかが戦いを手伝ったりしている。


「ミカミさん、私はね、つらいんだ。他のメンバーと比べて、私だけ戦いの役に立ってないような気がしてね」ジーノさんは溜息を吐きながら言った。


「そんなことないですよ! ジーノさんはいつも前線で戦ってくれているじゃないですか!」私は落ち込むジーノさんを全力で励ました。


「いつもすぐにやられて瀕死だよ。毎週病院にも通ってるし、頼みのナイフも最近調子が悪いし」確かにジーノさんはエドガさんやラナさんと違って、いつもかなりの大ケガに近いダメージを負っている気がした。


「私の回復魔法、あまり効いていないんでしょうか?」


「そんなことはないよ。病院でもいっつも異常なしだ」急にあっけらかんとした表情になりながらジーノさんは言った。


「じゃあどうして病院に通うんですか?」


「心の病……さ」ジーノさんはまた落ち込んでいるような表情を見せていた。


「う~ん、なんだか複雑な感じですね」私は首をひねった。





「ジーノ!」私たちがおしゃべりしているのを遮って急にエドガさんが大きく叫んだ。


「なんですか急に大きい声出して、ここは図書館ですよエドガ」ジーノさんは呆れるように言った。


「今日、帰りに残業して行ってきてほしいところがあるのだが……」エドガさんはジーノさんに言われたことを気にしてちゃんと声を小さくしながら言った。


「なにぃ? 残業ぉ? エドガが行けばいいんじゃないのかな?」ジーノさんは意地でも残業しないという意思を見せていた。


「俺は今日外せない用事があってな……」エドガさんは右に目をそらしながら言った。


「胡散臭そうに言うねぇ君。私だって今夜は忙しいんですよ?」ジーノさんはだんだん声が荒くなっていってるような気がした。


「お前の用事はギャンブルだろ。最近負けまくりだとラナから聞いている。この際当分は控えたらどうだ?」


(あ、ジーノさん最近ギャンブルで負けまくってるんだ……。もしかしたら調子が悪い理由って戦いの疲労とかじゃなくただギャンブルで負けまくっているからなんじゃ……)


「あのぅ、エドガさん残業なら私が行きますよ」私はそろりと手を挙げた。


「ミカミはダメだ! 俺は今回ジーノの為に言っているんだ」エドガさんはそういって私の手を下げさせた。


「ふーん、私の為ねぇ……じゃあエドガ私と勝負しないか? 私が勝ったら私は定時で帰る。君が勝ったら残業でもなんでもしよう」


「ギャンブラーの目を覚ますにはギャンブルで……か。面白い」エドガさんとジーノさんは互いを睨みつけ合った。


私はおろおろしながらそれを見ていたが、なんだか面白そうだなと思った。ラナさんも見物に誘おう。


「スウィート&ティアーズ図書館は閉館いたしました。」ラナさんのいつものアナウンスが響いた。

そして図書館の後片付けと戸締りをしっかりとして、皆で図書館を出た。ラナさんが持っていたペンをマイク代わりにして高らかに宣言した。


「レディースエンドジェントルメーン! ただいまを持ちまして! 男の決闘の始まり始まり~!」


わーと私だけが拍手をした。


「いらん盛り上げ方をするな」エドガは一喝した。そしてこう言った。


「勝負はどうする? ジーノ」


「ふ、君から申し込んだのだから私が勝負の内容を決めさせてもらうよ」


「いいだろう」


そういうと、ジーノさんはニヤリとしてあらかじめ用意してあった布を勢いよくはがした。


バッ!!!!


そこにあったのは……5メートルくらいの長机の上に均等に並ぶリンゴ10個。


「なにあれ……? あれで何をするの?」ラナさんは実況するのをやめて素の声で私にそっとつぶやいた。


「ルールは簡単。今から我々はここからあの机めがけてナイフを10本投げる。多く刺さったほうの勝ち」


「ズッル……。ジーノ有利に決まってるじゃん」ラナさんは茫然としながらそう言った。


「なんとでもいいたまえ。私がルールを決めるのだから私有利の戦いにするのは当然の思考。そこにズルもクソもない」


こんなの確かにジーノさんが有利に決まってるよ……エドガさん、どうするの? 私は心配するような表情でエドガさんの顔を見た。


「いいだろう」エドガさんは冷静に言った。


(きっとエドガさんのことだ。何か考えがあるんだな)と私は思った。いったいどっちが勝つんだろう?


最初はエドガさんからだった。


1本目

エドガさんはのナイフをまず感覚を図るためにリラックスした。それから気軽にひょいっと飛ばした。ナイフはありえない方向に行って遠くに飛んで行った。


「おい、エドガあんなに遠く飛ばしたら回収できなくなるじゃないか」ジーノさんはたしなめるようにそう言った。


2本目

エドガさんは今度は先ほどの感覚を考慮して冷静に的を見計らってダーツのような持ち方をして投げた。だがナイフはダーツ程まっすぐ飛ばず、斜めに逸れていった。

「ナイフ投げって難しそうだよねー」ラナさんが私にそうつぶやいた。


それから8本目まではまったく当たらず、9本目で奇跡的に一本リンゴに刺さった。


「これってさ、もう残りのナイフ全部リンゴに刺さってもエドガに勝ち目無くない?」


「そうですよねーラナさん。エドガさんはずる賢い人だから何か考えがあると思ってたんですけど、ここからどうやって逆転するつもりなんでしょうかね」


そして10本目。エドガさんは言った。

「時間がかかったがようやくコツをつかんだ。ここをこう持ってこのように風に沿うようにして、投げるっ!」

シュッ

ナイフは綺麗に円を描いて飛んだ。

「ぎゃあああああ! いったぁアアアアア!!!!」ナイフはジーノさんの後頭部に綺麗に刺さっていた。


私はすぐさまジーノさんの下へ跳んでいった。白魔法をかけてジーノさんを癒した。


「エドガさん、最低!!!!」私は叫んだ。

「最低エドガ!それが作戦なの?シャレにならんわ。見損なった」ラナさんはエドガさんの顔面に一発殴ろうとした。だが

「そんな……」エドガさんは顔を青ざめさせながら(こんなはずでは……)という表情をしていた。

「本当にすまんかった! ジーノ」エドガさんは若干涙目になりながらジーノさんの手当てをした。


「幸いノーダメですんでよかったね。ミカミちゃんの白魔法のおかげ~」ラナさんは私の頭をなでなでしながらそう言った。嬉しい。


結果 エドガさん 10本中1本命中


「さ、気を取り直して次は私だ!」安静の為、頭に包帯を巻かれたジーノさんは激しく荒ぶりながらそう言った。


「今日はいつも苦渋の思いをしている私が初めてエドガよりも活躍できるいい機会だ」ジーノさんはヒュンヒュンナイフを人差し指で振り回しながらそう言った。凄い。本当にナイフ投げの天才なんだ。この人は。

「それやってこの前ケガしてたでしょーやめなよー」ラナさんは言った。

「こういう時くらいかっこつけさせてくれッ!」ジーノさんは恥ずかしそうに叫んだ。



「今回は私のナイフ投げの奥義をご覧に入れよう」ジーノさんは息巻いた。


1本、2本、3本目

「麒麟落とし!」3本のナイフが上空を泳ぎ、急降下!


「スッゴ!」ラナさんは持っていたペンを落とした。


4本、5本、6本目

「クリムゾン……スノウ」放たれたナイフはジグザグに進み、風を切るような唸り声をあげた。


「凄すぎだ!」エドガさんは口をあんぐりと開けていた。


7本、8本、9本、10本目

「そして、とどめは、月華五月雨吹雪!」ジーノさんの手だけでなく肘と肩からもナイフが飛び出し、列を作ってナイフが勢いよく発射された。


「凄すぎる……!!」私は普段出さないような叫びをあげた。それから私とラナさんは口を揃えてこう言った。


「「本当に凄いや! 一本も当たらないなんて!」」


「どうしてだ……」ジーノさんは落胆するように膝をついた。


「これで分かっただろう、ジーノ。今お前は調子が悪いんだ。俺の勝ちだ。当分はギャンブルをやめてもらおう」


「いや、もう一度だ! エドガ!」


「いや、だめだ」


「もう一度! 次なら勝てる! 次なら勝てる! 次なら……」


「ダメだこりゃ」ラナさんは溜息を吐いた。


「趣旨変わってきてますね……」私も溜息を吐いた。


それからジーノさんとエドガさんはもう3戦ほどナイフ投げを競い合ったそうだ。(私とラナさんは付き合いきれなくてそのあとすぐ帰った)


今日分かったこと

ジーノさんはギャンブルの勝ち、負け状態でその日の強さが変わるみたい。


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