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第11話 失恋したゴワス様を励ませ!

登場人物


館長 エドガ 冷静

司書 ミカミ 主人公 基本いい人

司書 ラナ よくしゃべるギャル

司書 ジーノ 世話焼きで若者にうざがられるおじさん

お客さん ピヨネッタ(ピヨちゃん)音楽家。

お客さん オディバさん 常連

「はーあー」私ミカミは溜息を吐いた。


最近、どうもやる気が出ない。天気が悪いからだ。


私はスウィート&ティアーズ図書館の窓からふと景色を眺めた。


「ザーッ!」雨が強く激しく振っている。梅雨の時期はもう終わってもいいと思うのだけれど、まだまだ激しく降り続いている。


「凄い雨だな」エドガさんは私の隣で黙々と書類作業をこなしながらそう言った。


今日は私とエドガさんがカウンターの当番なのだ。


(ラナさんとかジーノさんと一緒の日は気軽に仕事中の世間話がはずむんだけど、エドガさんは寡黙で真面目に仕事をするし声をかけたらなんか怒られそうだからなあ)


そう思って声をかけていなかったが、まさかエドガさんの方から声をかけてくれるとは!


「そうですね! なんでこんなに強く振るんでしょうか? 私低気圧だと頭痛になっちゃうんですよ」私はノリノリで返事をしたが、エドガさんからの反応はなかった。


「エドガさんも雨嫌いなんですか?」私はさらに言葉を続けてエドガさんからの返事を待ったが、やはり返事はない。


エドガさんは仕事に没頭しだしたようだ。私はムカッとしながら


「……エドガさんのばかやろー」とそっとつぶやいた。


すると、「聞こえているぞ、バカ」エドガさんは返事をした。


「まもなく、スウィート&ティアーズ図書館は閉館いたします」いつものラナさんのアナウンスが聞こえてきた。ラナさんの放送の声は本当に落ち着いていて、心地いい。私は放送を聞きながらお客さんが帰っていくのを見守るのが好きだ。お客さんは時間を忘れたようにハッと時計を見やって、慌てて本を書棚にもどし、支度をして帰っていく。


「ただいまを持ちまして、スウィート&ティアーズ図書館は閉館いたしました」ラナさんの最後の放送が響いた。もう閉館時刻だ。

スウィート&ティアーズ図書館でいつも最後まで残っているお客様は必ずピヨネッタさんだ。


ピヨネッタさんは優れた音楽家でエドガさんも認めるほどだ。


「アメガツヨイデスネサヨウナラ」(雨が強いですね。さようなら)


いつもピヨネッタさんはラナさんに挨拶をして帰る。


「ピヨちゃんも気をつけてね~」お客様に堂々とピヨちゃんと呼んでしまうほどの仲になっているラナさんは流石だ。


「ザーッ」雨はいつまでも強く振り続けていた。


「皆様、今日もご苦労。」最後に図書館の皆で終礼をいつもしている。終礼はいつもエドガさんの単純な一言コメントで終わりを迎える。だが今日はちょっと雰囲気が違うようだ。


「近頃、雨が強くなっている。これ以上振り続けると、図書館の本も危うい。そこでだ、今からゴワス様の様子を見てくれる人員を募集したい」


「え? ゴワス様って誰ですか?」私はすぐさま質問をした。


「ミカミさん、ゴワス様ってのはこのスウィート&ティアーズ図書館の森に存在する神様みたいなものだよ」ジーノさんが解説をしてくれたが、いまいち全容がつかめない。


「そうか! ミカミちゃん知らないのねー」ラナさんが一つ結びにしていた髪をほどきながら言った。


「ミカミは行くの決定だな。誰か教えてやる奴はおらんか。ラナはどうだ?」エドガさんは勝手に話を進めだす。


「私、濡れるの勘弁だから今回はパス! ごめんねミカミちゃん」とラナさんが言った。


「私も今日は外せない用事があるので……」ジーノさんも帰り支度をしながら言った。


「そんなこと言ってまたギャンブルっしょー?」ラナさんは睨んだ。


ジーノさんは「ち、違うモーン」と言いながら帰り支度を終えた。


「あいにく俺も今日はとある映画を見たくてな、すまんがミカミ一人で行ってくれ」エドガさんもそういって帰宅しようとしている。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよー」


「まぁ、行ってみれば分かるから」エドガはゴワス様?の居そうな場所のメモを私に渡して車に乗って帰っていった。私は図書館の入り口に一人ぽつんと立ち尽くされた。


「無茶ぶりにもほどがありすぎるよおお」


とりあえず、件の場所へ向かってみた。その森は図書館から1キロも離れていないほどの場所にあった。


「ここは……、洞窟ぅ?」私は洞穴を見つけたので、中へ向かって挨拶をした。


「あのぅ、すいませーん!」


……返事はない。だが洞窟の中から音が聞こえてくる。音は大きい波と小さい波が適度にこだましていて、なんとも言い難い。


「ブオオオン」「ブォォン」なんだか不気味だと思った。


「ブォォォォン!!!!!!!」音がさらにいっそう激しくなる。すると

「ザアアアアーッ!!!!!!」雨の音がさらに激しくなった。


「多分、ゴワス様なんだろうなぁ。怖いよぉ」私はそろそろと洞窟の中に入っていった。


「ブォォン!」「ブォォォォン!!」


音がすこしづつ近づいている。もうすぐゴワス様に会える。


「ブォォン!!」「ブォォオオン!!!!」そこにいたのは5メートルはあるとてつもない大きさ、しかもまるでお餅のように真っ白な体の色をした巨大ガエルが大泣きしている姿だった。私は口をあんぐりして、泣きじゃくる巨大ガエルを見つめていた。


「ブォン!」「ブォォォォン!!!!!!」


「あ、あの、あなたがゴワス様ですか?」


「ブォォォォン!!!」巨大ガエルはまるで私のことに気づいていない様子だった。


私はなんだかかわいそうに思えたので近くに寄って体をさすってあげた。


「大丈夫?」


「ブォォォォン、ブォン……ブォン……」泣き声は少しずつ収まっていった。


「なにかあったの?」私は優しい口調で尋ねた。


「うん、僕またフラれちゃったの」涙の流しすぎでだみ声になりながら巨大なカエルはそう言った。


「あらあら」私はカエルを”よしよし”し続けた。カエルは大人しくなり、私に”よしよし”され続けた。


「ありがとう、君は誰?」


「私はスウィート&ティアーズ図書館の司書のミカミって言います。あなたがゴワス様ですか?」


「いかにも」ゴワス様は腕を組みながら偉そうな振る舞いをした。


「館長エドガにより、様子を見るようにお申し付けられて、来たんです」


「エドガか、僕エドガ嫌い。あいつ僕のこと悪く言う」ゴワス様は唸るように言った。


「あ、同志ですね! 私もエドガさんにはいっつも振り回されてばかりです」私は同調した。


「エドガはいつも俺様面してるし、本を読んでいない生き物を見下している」


「あ、分かりますよ! 私もこの前エドガさんの好きな本読んで感想伝えたのに「「感性が足りない」」とか言って私を罵倒したんですから!」


……なぜか愚痴の言い合いみたいな感じになってしまった。


「君、僕と話し合うね」ゴワス様は大喜びの様子だった。


「私も初めての愚痴り仲間ができて嬉しいです。なんだかんだ言ってジーノさんもラナさんもエドガさんのことを褒めてばかりだったから。私こういう話ができる人ができてちょっと嬉しいです!」


「僕と君、トモダチ」


「友達! 嬉しい! あ、でもゴワス様って私なんかよりずっとずっと偉い神様なんじゃ……」私はふと思い出して自分の非礼を詫びた。そういえばこの方は凄い方だったのだ。


「世間はそういうけど実際はそんなことない。私、君たちと平等。同じ生き物。差別されてるの。エドガもジーノもラナも敬語でこちらのご機嫌窺うばかりで本当のことを話してすらくれない。私のこと理解してるの"ミカミだけ”」


私は”ミカミだけ”という言葉が特別に感じて嬉しくて思わず飛び上がってしまった。


私とゴワス様はそれからいくつか話をした。なんの意味もないただの世間話だ。


「じゃあまた遊びに来るねーゴワスさん」私は手を振った。ゴワスさんも嬉しそうに手を振ってくれていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日だった。


ミケランドールの街からスウィート&ティアーズ図書館のある森に入ろうとすると、驚くべき現象が起こったのだ。


「あれ、桜が満開だ! なんで?」私は振り散る桜の花びらを受けながら図書館の中へと向かった。


「ミカミ!!!」エドガさんはカンカンに怒っていた。


「エドガさんおはようございまーすって、朝っぱらからなんですか」


「お前! ゴワス様に惚れられたな!」


「えぇっ? どういうことですかー」


「このスウィート&ティアーズ図書館の天気はな、ゴワス様の気持ちや感情がそのまま反映されるんだ!!」


「つまり……?」


「つまり、ゴワス様にいま春が訪れているんだよ!!」


「えぇぇぇぇぇぇぇええええ!!!」私は思わず飛び上がった。


「あーあ、ミカミちゃん、やらかしちゃったねー。私も2年前に同じことになったけど(笑)」ラナさんは半笑いしながらそう言った。


「とりあえずミカミ! お前この異常気象を元に戻してこい!!」エドガは叫んだ。


「ってことは、どういうことですかー?」


「フッてこいってことだあああ!!」エドガは限りなく大きな声で叫んでいた。


「そんなの無理ですよおおおおお」私が慌てふためいた。


その時スウィート&ティアーズ図書館の入り口では赤いバラの花束とリングケースを両手に片方ずつ持ち、美しいスーツに身を包んだゴワス様が入り口で図書館が開くのをいまかいまかと待っていた。


「そもそも、その大きさじゃ中に入れないでしょー。ゴワスさん……」


私はがっくしと肩を落としながらゴワス様の姿を眺めていた。

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