悪役令嬢なんかじゃありません。友達になりたくないだけです。
タイトル何気に酷いですかね?
「プフラウメ・シュトゥルム!ターフェルルンデ王国が第一王子、ダーリエ・ターフェルルンデが婚約破棄を申し渡す!」
「んぇ?」
はじめまして、ご機嫌よう。私、このターフェルルンデ王国の公爵令嬢、プフラウメ・シュトゥルムと申します。この、ダーリエ・ターフェルルンデ王太子殿下の婚約者です。今、婚約破棄を申し渡されましたが。
「んぇ?じゃない!貴様、ナルを虐めただろう!そんな女、王妃に相応しくない!」
「はぁ…そうですか…ナルって誰ですか?」
「なっ…この期に及んで!」
「ラウ様酷〜い!ダーリエ様、いつもプフラウメ様はこうやってナルを虐めるんですよ〜!」
「なんて可哀想なナル!俺が守ってやるからな!」
「ああ、勘違い女さん!貴女がナルでしたか!」
「なっ…勘違い女って貴様…!」
「ナルはナルツィッセだっていつも言ってるじゃないですか〜!」
「さあさあ、勘違い女さん。こんなみんなが食堂に行った後の人気のない教室で騒いでないで、さっさと食堂に行きますよ」
「ラウ様酷〜い!」
「ま、待てラウ!貴様逃げる気か!」
「逃げるというか、お昼なので昼食をとりながらゆっくり誤解を解こうかなと」
「誤解ってなんですか〜!私、本当に虐められたんですから〜!」
「はいはい」
「待てと言っているだろうに!」
ー…
「さて、料理も無事運ばれてきたところで、お話しましょうかね。あ、今日は私の奢りですからいっぱい食べてくださいね」
「ご馳走さまです〜!やっと私とお友達になってくれる気になったんですね〜!」
「いや、全然」
「がーん!」
「おい、ラウ!ナルを虐めるな!」
「いやぁ、私はただ単に礼儀のなってないこの子と仲良くなりたくないだけで…」
「なんでそうやってナルを虐めるんですか〜?酷〜い!」
「だからそういう所が嫌いなんですって」
「な、ナルの何が気に入らない!喋り方や態度はこんなだが、心優しい子だし、特待生なんだぞ!」
「この学園唯一の平民の特待生なんですからそれなりの礼儀を身につけるべきでしょうに、私達貴族に対して特待生である自分に合わせろと言わんばかりの態度。それが気に入らないのです」
「なに?」
「挨拶はご機嫌ようではなく『おはようございます』。平民なのに私とすれ違う際横に避けることもなく、頭を下げることもなく。私から話しかけるのを待たずに自分から声を掛けてきて。大体、一度落としたハンカチを拾って渡してあげただけで『この人なら優しいから仲良くなれるかも!』なんて思い上がって付き纏ってくる時点で面倒くさいです」
「な…そ、それは確かに…ナルが悪いかもしれないが…」
「そんな、ラウ様そんな風に思っていたんですか〜?酷〜い」
「あと、そのラウ様呼び。私、ラウという愛称は愛するダーリエ様にしか許しておりませんわ」
「な、あ、愛…!?お前、一度もそんな態度とったことないだろう!」
「それでも愛しております。まあ、先程婚約破棄を宣言されましたが」
「そ、それは…!お前が全然俺のことを見てくれないから、焦らせてこっちを見て欲しくてだな…」
「つまり勘違い女さんに優しくしたのもそのためだと?」
「あ、ああ。俺が愛するのはお前だけだし、婚約破棄なんてする気はない。その証拠に、あの茶番は人払いをしてから行った」
「まあ。ではこれからもダーリエ様の婚約者でいられますの?嬉しい」
「あ、ああ…うん、俺もお前も言葉が足りなかったようだな。これからは二人きりでお茶会でもしよう。あ、もちろん使用人は側に置いて」
「あら、本当に?ダーリエ様とお茶会だなんて、光栄ですわ」
「お二人とも仲直りおめでとうございます〜!ラウ様、つきましては〜、仲直りのきっかけになったナルとお友達になってくださ〜い!」
「…いやよ」
「そんなこと言わずに〜!あ、じゃあ、ナルがラウ様がさっき言ったこと全部直したら、ナルとお友達になってくれますか〜?」
「まあ…直せるなら…でも、貴女はさっき言ったこと以外にも沢山の礼儀作法を身につけるべきだと思うわ」
「じゃあ、それが出来たらお友達になってくださいね〜?ご馳走さまでした〜!私、これから礼儀作法のお勉強をしてくるので、失礼しま〜す!」
「嵐のような子ですわね…」
「嵐のような子だな…」
ー…
あれから半年。私とダーリエ様はすっかりラブラブカップルに。
「ダーリエ様、見てくださいませ。もう梅の花が咲き誇っていますわ」
「ああ、もうそんな時期か。…ふふ、ラウ。口元にクリームがついているぞ」
「え?」
「とってやろう」
そっと私に口付けるダーリエ様。
「もう、ダーリエ様ったら」
「ふふ、ラウが可愛いのが悪い」
そしてナルさんとの関係も変化しました。
「ご機嫌よう、ナルさん」
「ご機嫌よう、プフラウメ様」
ナルさんはこの半年で礼儀作法を身につけて、私のお友達となったのです。
「ナルさん、今日はダーリエ様とのお茶会があったの」
「それは素晴らしいですね!楽しめましたか?」
「ええ、とっても。でも、たまにはこのきっかけを作ってくれたナルさんを誘うのもいいかもしれないわね」
「ありがとうございます。でも、お二人の邪魔はしたくないのでご遠慮しておきますね。その分、プフラウメ様からお話を聞かせてください」
「ふふ。ええ、いいわよ。今日はね、ダーリエ様が…」
そんなこんなで、私達は今日も幸せです。
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