↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/58

1-2

〔まあ、何にしてもです。あと一人倒せば、無事『編入試験』には合格できるのですから気合入れてください詞御。腑抜けた気持ちで闘って、万が一があってはいけませんから〕

〔ああ、分かっているさ。ここまで来て不合格じゃ、話にならない〕


 詞御は、今この国――月読つくよみ王国というのだが、その国が有する特殊な二つの養成機関の一つ、その高等部の編入試験を受けに来ていた。

 編入試験の内容はまずは午前の筆記。正午に筆記の合否が発表され、合格した者が午後の実技試験に挑める。実技試験はいたってシンプル。


 機関が擁する実技教官五人抜きを達成すること、それが条件。勝敗はこの国で武道大会なるものが時折開催されているのだが、それに準拠――相手を気絶させるか、〝戦闘領域〟の壁にぶつけること(いわゆる場外を意味する)――、それがこの機関に編入する為の条件。


 詞御は無事に午前の筆記に合格し、午後の実技試験に挑んでいた。だが、午後の試験は、内容のシンプルさとは裏腹に、永きに亘る養成機関の歴史の中で、編入試験の合格者は未だ無しと言われている。それほどまでに、超難関な試験なのだ。理由は単純明快。


 正規の試験で合格し入学した者は、最初から厳格な教育プログラムで育成されている。しかし、途中から入ってくる者に、一から教える暇も無ければ人員も割けない。故に、編入者には途中からでもついてこれる文武を求められるのだ。故に、その為のふるい掛けも必然的に厳しいものになる。これが、これまで編入者が出ていない理由なのだ。


 だが、それに詞御は挑み、四人抜きという、合格まで後一歩のところまで来ていた。


〔勝ち抜くたびに、相手の力量は上がっています。気付いてますか? 先ほど詞御が倒した相手と〝倶纏くてん〟は、階位的に見れば〝下位・甲型〟に当たります。一般ではまず見かける事はない階位。流石は国家の戦力を育成する機関というべきでしょうか〕

〔確かに、な。このままで臨みたいところだが、そうもいかないかな?〕

〔そうですね。()()〝下位・乙型〟の状態のままではいささかきついかと。私のほうは何時でもいけるように準備万端です詞御。何時でも〝顕現けんげん〟できます〕

〔数人の試験監督官が見ているとはいえ、出来ればお前を現実世界に晒すのは避けたいところなんだがな〕

〔詞御の気遣いはありがたく思いますし、嬉しいです。ですが、この機関に入ろうとする以上は遅かれ早かれ〝私〟という存在はバレると思います。いえ、確実にバレます。私と同等とまでいかなくても先ほどの倶纏以上がここに居ない訳がないですから。そういう事で――〕

〔――分かったよセフィア。でも、可能な限りは現状そのままでいくからな、そのつもりでいてくれ〕

〔了解しました。詞御も頑固ですね。でも、それがいいところでもあるのですが〕


 くすくす、と微笑む声が詞御の脳裏に響く。

 詞御がこの機関を選んだのは、編入試験が実力のみという点であった。


〔次はもう少し手応えがある相手だといいですね〕

〔よせ、セフィア。先ほどまでの相手くらいが望ましい処だ〕

 闘技場の中央で、周りからは分からないのんびりとした会話をしている詞御〝たち〟とは裏腹に、編入試験を監督している試験官たちは大なり小なり慌てていた。


        ◇       ◇       ◇       ◇       


「信じられん! 下位・乙型で下位・甲型級最上位の倶纏を持つ実技教員を倒すとは!!」

「しかし、紛れもない現実です。この少年に対しては常識を捨てた方がよろしいかと」

「十六歳でこの実力は稀有だな」

「よほど倶纏の力が異常なんでしょうね。顕現出来ないのかしないのかはわかりませんが、あれほどの〝昂輝こうき〟量と密度だけ見ればこの機関でも上位に入りますよ」


 詞御が振るっている力は、試験官たちからみれば異常に見えた。


「我が『養成機関スクール』、初の合格者になりますかね?」

「それはまだ分からんさ、最後は――」


 男性試験官の光男みつおが言葉を紡ごうとしたとき、一つの音声通信が入る。


「はい。り、理事長!? い、一体、どうされましたか? え、それは本当ですか?」


 思いもかけない相手の通信を受け取った信也は慌てる。そして、伝えられた内容に驚かされた。それは、五人目の試験相手を変更する、という内容で、その人物の名を聞きさらに驚愕させられる。


「どうされました?」


 訝しげに隣りに居る女性試験官のかすみが訊ねてくる。


「間違いなく……、理事長は絶対に合格者を出したくないようだ……!」


 半ば呆然とした言葉で、通信を受け取った光男は、訊ねてきた霞にそう返すのがやっとだった。勝てるわけがない。それが信也の率直な感想。理事長が出してきた名前の人物と戦闘能力の高さを思いだして。


        ◇       ◇       ◇       ◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
面白いです! 世界観がしっかりしていて、戦闘も緊張感溢れてて、引き込まれます。 ファンタジーは、世界観を読者に伝えるのって結構難しいのに、それを感じさせません。 続きを読むの楽しみです。
まず筆力がとても高いですね。 独特な世界観を見事に描いてます。 戦闘描写も丁寧かつ緻密で読み応え十分でした。 面白かったので、ブクマさせていただきました。
[良い点] 企画:良いところを三点述べるより 【良いところ三点】 1*0-0にて、物語がどんな方向に向かおうとしているのかが分かる。 これから起きることは、国王の望んだことであり、深く国が絡んでいる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。