誰かと誰かの話
「女子寮には別館があってね、ヒロインがそこに入るから」
「別館ですか」
「そう、本館から出入り口が見えなくて、誰でも出入り自由なんだよ!」
「それって、警備上問題じゃないですか」
「いやいや、そうじゃなくて。デートですよ、お家デート」
「はぁ…」
「使用人通路も使うから、使用人とも仲良くなるんだよ。そこでフランツの好感度をあげると、フレドリクルートに入れるんだよねぇ」
「フレドリク…。男子寮の専属使用人ですね」
「そうそう。真面目そうに見えるかもだけど、結構チャラいの。ライバルはお兄さんのフランツね」
「兄弟でですか?」
「フランツは真面目だからね、使用人が特定の人だけを特別扱いすることに反対するんだよ。平民と伯爵令嬢で身分差もあるし」
「まぁ、普通に考えると使用人としては失格ですよね」
「そういうこと。入学式はどうだった?」
「普通でしたよ」
「普通?ヴェルナー様は?」
「来られてましたよ」
「騒ぎは起きなかったの?」
「特にありませんでしたよ。殿下が保護者と令嬢に取り囲まれたくらいです」
「ええーー。専門学院のヴェルナー様ルートに入るのはここだけなのに!出入口付近で二人がぶつかって、騒ぎになるんだよ?」
「ぶつかっただけで騒ぎになるんですか?」
「いや、もちろんそれだけじゃないんだけど。イベントは起こらなくて良かったのかな?でもライバルのルイーゼはライバルじゃないし、そしたらもしかして幸せに…?」
「はぁ…」
「ルイーゼがライバルのままだとね、公爵家からの圧力とかで大変なことになるんだよ。私が知る限りでは、エルヴィーラさえ婚約していなければ、皆が幸せになるのはベルンハルトルート一択だから」
「はぁ…」
「少しは真面目に聞いてよ!」
「…すみません」