デポラとイザベラとスーリヤの会議
「ご覧になりました?エルさんがディートリヒ様のことを愛称でディーと呼んでいましたわ」
「聞いたわ!冬休みに王妃陛下がディートリヒ様を連れてノルンに来たんですって。その時にディートリヒ様が愛称呼びでいいよって言ってきたんだって」
「愛称呼びを許すってことは、やっぱりディートリヒ様は気があるってことよね?」
「彼、ポンコツだからな~。エルも何も考えてなさそうだし」
「二人はとっくに近い存在ですよね?どうして恋愛に発展しないんでしょうか。謎すぎます」
「・・・多分、二人ともポンコツだからだと・・・」
「ポンコツにも限度があるわ!」
「周囲から固めるしかないんですかね・・・」
「周囲はもう固まっているも同然じゃない?成長を促すなら、ディートリヒ様かな。エルは今それどころじゃないし」
「何かあったの?」
「あの家、ああ見えて複雑なのよ」
「・・・そうなんですか・・・」
「イザベラはヴェルナー様とどうなっているの?冬休みの間も頻繁に連絡を取っていたみたいじゃない」
「うっ・・・。・・・・・・」
「何よ、言いなさいよ」
「ヴェルナー様からも気軽に連絡を頂けるようになりまして・・・。以前ノルン卿から婚約打診を頂いていたこともあり、お返事を致しました」
「それじゃあ!」
「はい。いいお返事を頂きまして、ヴェルナー様の卒業後に両家で会う予定になっています。その時に婚約内定になるかと思います」
「おめでとう!」
「良かったわね!」
「ありがとうございます」
「エルは知っているの?」
「まだなんじゃないでしょうか。ヴェルナー様もまだご存知ないようなんです・・・」
「なんで本人なのに知らないの?」
「あそこならあり得るわ」
「エルが拗ねる前に報告してあげてね」
「わかってはいるんですが、自分から言うのは何だか恥ずかしくて・・・」
「早く報告してあげなよ。喜んでくれると思うよ」
「はい。近々必ず」
「・・・イザベラ、詳しい話は私からはできないけれど、ノルン卿には気をつけて」
「えっ?」
「何かおかしいと感じたり、困ったことがあったらすぐにヴェルナー様に言うのよ。もし、言いにくいとか思うなら、私やエル、カリーナ様でもいいわ。とにかくすぐ誰かに言うのよ。約束して」
「は、はい・・・。わかりました。必ずそうします」
「必ずよ」
「ところで、ディートリヒ様の婚約者候補はどうだった?」
「私が調べた方達は、家としてだけではなく、本人もかなり真剣でしたわ」
「こっちもよ。ディートリヒ様が誰にでも同じ優しい態度だから、皆夢中よ」
「…そうね。特に南の辺境伯令嬢は、自分がもうディートリヒ様の婚約者気取りだったわ」
「厄介ね…」
「ハルトヴィヒ様から連絡を頂いたのですが、王妃陛下の視察に同行してから、ディートリヒ様に少し変化があるようです」
「えっ!?どんな?」
「愛想笑いはそのままだけれど、婚約者候補に接する時の雰囲気が変わったとか…」
「そういえば、学院で会った時に変なことを聞いてきたわね?」
「あぁ…。理想の結婚生活だったっけ?」
「ディートリヒ様は何と仰っていたのですか?」
「聞くだけ聞いて、エルと握手してたわね?エルは何て言っていたかしら?」
「領地で引きこもり生活」
「殿下の側近じゃ、無理よね?」
「だとしたら、どうして握手したのかな?」
「…わかりませんね…」




