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侯爵令嬢は寝落ちする

 私たちは一番西にある壁に移動した。背後は高い崖になっていて、館を中心に半円形に壁が設置されている。

 重力魔法で体重を軽くして、剣に乗って壁の上まで放り投げてもらう。最初にデポラ、次がクリスにジョージ。

 デポラが外を警戒し、当然のようにクリスとジョージが私を受け止める体勢をとっている。そうですね・・・。私運動神経ないですもんね・・・。


「はぅ、ぎゃわ」

 綺麗な放物線を描いて放り投げられたのに、危うく壁から転がり落ちるところでした。何故かくるっと回転して、背中から着地しようとしました。はい。皆さんの判断は正しかったです。

「エル、筋トレ増やそうか」

「・・・そうだね」

 もはや筋肉の問題ではない気がする。神経だ。


「どれくらいの威力ならいけそう?」

 軽く魔力を練ってみる。

「うん、最初のと同じくらいいけそう」


「じゃあ、速さを加減してお願い。クリスとジョージは避けようとしたのを狙い撃ちね」

「わかりました」

「もれたのは全部私が対応するから」

 デポラ、惚れ直すわ。本当に格好いい。魔力を練りながら考える。高くなった壁の上にいるし、しっかり考える余裕がある。デポラもいるしね。安心感が違う。


「いきま~す!」

 だいたい壁から二メートルくらいまでにモンスターがいるので、横幅ではなく、縦幅を大きくして放った。ちょっと上に逃げようとするくらいでは皆餌食だ。


「また、エルは・・・」

 デポラが呆れた様に言う。

「えっ?こっちの方が効率よくない!?」

「いいわよ、もちろん。全く・・・」

「何が不満だ、デポラ!」

「普通はそんな簡単に次々形は変えられないものよ」

「へぇ~?」

 よくわからない。


 元々壁の高さを超えられるモンスターは館内に侵入していたせいか、クリスとジョージに出番はほとんどなかった。順調に壁沿いに集まっていたモンスターを殲滅した。


「ついでに魔石も集めようか?」

 壁の上を戻りながら、重力魔法を応用して魔石を吸い寄せて空間収納へそのまま放り込んでいく。お兄様の防護魔法を補助するのにいいのがあるといいんだけど。


「どうやってるんスか?」

「重力魔法の応用だよ。磁石みたいなイメージで、魔石の魔力を引っ付けてるの」

「・・・・・・」


「クリス、真似しようとしちゃダメよ。魔力の選別が確実にできないと、モンスターも私たちも引っ張られるってことよ」

「そう、でスよね、やっぱり・・・」


「エルちゃんは天才だな!!」

「やだぁ、ジョージさん!もっと言って~」

「・・・・・・」

 僅かに残ったモンスターを排除しつつ、元のところまで戻った。


 館では既に武器防具が補充され、食事の準備が整っていた。クリスもご両親と再会して抱き合っている。横にいるの若い女性が噂の彼女かな?良かった。


「壁沿いにいたモンスターはとりあえず一掃したわ」

「さすがデポラ嬢!!」

 元気になったサムさんがにこにこして言った。


「エルよ。エルが一人でほぼ殲滅したわ。私はついていっただけ」

「エルちゃんは天才だな!!」

「やだぁ、サムさん!もっと言って~」

「よしよし、凄いぞ!」


 頭をくしゃくしゃに撫でてもらった。えへへ。褒められると嬉しい。イザーク様とお兄様がこちらに向かって歩いてくる。あ、そうだ。


「お兄ちゃ~ん!さっき魔石を集めたんだけど、使えるのある?」

 駆け寄って、イザーク様と抱擁。つい、両手を広げられると飛び込んじゃう。元気になったみたいで良かった。

 安心して、ついついぎゅっと抱きついたら、お兄様にイザーク様が頭をはたかれていた。お兄様、理不尽。今のは確実に私からだ。


「凄い量だね。誰かに選別を手伝ってもらって、俺たちは先に食事にしよう」

 お兄様が近くにいた人に頼んで、入れ物を用意してもらった。そこに空間収納から重力魔法を利用して、先ほど集めた魔石をじゃらじゃら注ぎ込んだ。


「何て量だ。どうやって・・・?」

 入れ物を用意してくれた人たちに凄く驚かれているけれど、満足するまでいっぱい誉めてもらったし、気分がもうご飯だ。褒めてくれなくても、もう大丈夫です。


「壁沿いにいた、モンスターの分ですよ」

 いいにおい。これはノーラが作った気がする。お腹がかなり空いていたみたい。よだれでそう。


「いこうか」

 お兄様に促されて適当にテーブルに座って、デポラたちと一緒に食事を始めた。やっぱりこの味はノーラだな。


 皆が今後のことを真剣に話し合っているが、あまり耳に入ってこない。美味しい料理を食べていたら、凄く眠くなってきた。まだ食べたいけど、眠い・・・。


 ・・・・・・。

「エル!?」

「ま?????」

 誰かが何かを言っているけれど、もうわからない。



 ぱっちりスッキリ目が覚めた。丸一日眠っていたらしい。起きたらまた昼食だった。色々な人が交代で私の様子を見に来てくれていたらしいが、起きた時にいたデポラにグーパンされた。

 まぁまぁ痛いよぉ。片時も側を離れなかったというユキちゃんにもペロペロされた。ごめんよ、心配かけて。でも眠かったんよ。


「魔力枯渇を起こしたのかと思って、大騒ぎになったのよ!」

 デポラ、グーパンからのぐりぐりは普通に痛いよ。


「そんな感じじゃなかったよ。ただ、眠すぎて・・・」

「エルの体内、魔力、いっぱい流れたから、活性化した」

「活性化すると眠くなるの?」

 ユキちゃんが首を傾げた。ユキちゃんにもよくわからないらしい。でも、確かに何か凄い元気。お腹空いた。


 昨日寝落ちした広間についた。交代で食事を取っていて、たくさん人がいる。

「皆様、ご心配をおかけしましたぁ」


 できるだけ大きい声で言ったら、一斉に人が集まってきて頭をくしゃくしゃに撫でられたり、ハグされたり。あ、またグーパン、誰だ!もみくちゃになった。

 あ、ぐりぐりも!誰だぁ~!でも皆元気で良かった。最後は悪のりのもみくちゃからお兄様に救出された。どっと疲れた気がする。さっきまでの凄い晴れやかな気持ちを返して欲しい。


 昼食を頂きながら、どうなっているかの話を聞いた。すっかり状況は好転したようだ。このまま領館に滞在して、魔法騎士団が到着してダンジョン内まで殲滅してくれるのを待つことになっていた。魔法騎士団が到着するまでに二週間以上かかるそうだ。


 本当に遅いな。避難する人に分けていたので、食料の備蓄もかなり減っていて、武器も消耗が激しかったと聞く。エーリヒが現場にいて本当に良かった。間に合わなかったかもしれない。


 こんなに長い間行方不明では、怪しまれることに突然気が付いた。慌ててお兄様に言うと、お兄様が既に各方面へ根回しを頼んでくれていた。さすが。今年も寮に滞在していることになっていた。


 お母様とノーラたちに通話した。お兄様が私が突然倒れたことは秘密にしてくれていたけれど、丸一日私からの連絡がないので皆を心配させていた。ごめんね。寝ちゃったで誤魔化しておいた。事実だし。


 それからクリスのご両親ときちんと挨拶をした。二人とも素敵な方だった。凄い感謝されて、びっくりした。クリスが大げさに話したようだ。困るよ~。緊張しちゃう。

 忘れないうちに、フラウも領館に転移魔法で呼んでおいた。登場は遅れたけれど、一緒に来た体です。

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