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令嬢と小姑(男)のあれこれ  作者: 藍澤


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侯爵令嬢は日課のランニング

 今日もイザベラと日課のランニング。これが終わったら、デポラの部屋に集合して筋トレだ。

「あの、エルさん、…好きな方とか、いらっしゃいますか?」

 どうした、急に。もうちょっとペースあげる?私はまだいけるけど。


「いないかなぁ?どうせ私の意見は聞き入れられないから、考えない様にしてる」

「ご両親は意見を聞いてはくださらないの?」

「父が全く」

「…そうですか。そう思っていてもときめいてしまった方とかは…」

「既婚者だった…」

 初恋はギルドで出会った二十歳くらい年上の人でした。愛妻家で、子煩悩でしたが、何か?

「そ、そうですか。私も以前は母の意見に従うしか無かったので考えなかったのですが、急に選んで良いと言われて困ってしまって…」


「確かに。急に言われたら困るよね」

「ええ。絵姿だけで百枚近く届いてしまって」

「えー!凄い人気!!面白そう!!」

「うきうきしたのは最初だけでしたわ…」


 面白そうだから見たいと言ったら、イザベラが放課後部屋へ招待してくれた。応接室のテーブルに、大量の絵姿が山積みにされていた。

「これだけ並ぶと凄いね」

「ええ」

 美味しい紅茶とお菓子を頂きながら、好奇心だけで遠慮なく見ていくが、絵姿は二割増しは当たり前なので、痩せている人は逞しく、太っている人も逞しく。顔だって本人とは違うだろうし、むむむ…。

 当然だが、相手の性格は絵姿では全くわからない。全員と会ってみるにも人数が多すぎる。見た目でも性格でも、絵姿では選びようがないではないか!


「何を基準に選べばいいか、さっぱりだね!」

 あっさり絵姿を見るのを諦めて、美味しい紅茶とお菓子に専念することにした。

「そうなのです、わかって頂けました!?」

 同意を得られて嬉しいイザベラが、ぐいぐい来たので恥ずかしい。近い、近いよイザベラ。近くで見ると睫毛がバサバサで素晴らしい。性格もいいし、素敵な人とご縁があればいいのになぁ…。


「あ!イザーク様に見てもらいましょう!」

「えっ?イザーク様に、ですか?」

「イザーク様は交友関係が広いから、伯爵令息をたくさん知っているのよ」

「でも、私とは挨拶をする程度の仲ですし、ご迷惑になってしまいますわ」

「いいの、いいの!大丈夫だよ。美味しいお菓子だけ用意しておいて!」

 恐縮するイザベラを放置して、その場でイザーク様と約束を取り付けた。こういう時に頼れるのは、絶対にイザーク様だと思う。


 イザベラ友人にも手伝ってもらって、大量の絵姿を続きの間に持ち込んだ。

「多いな…」

 イザーク様がうんざりした顔をしたので、イザベラがしゅんとしている。

「め!イザーク様!」

「ああ、ごめんごめん」

 やれやれと言った顔で、自然にイザベラの頭を撫で撫でしていた。イザベラは顔が真っ赤だ。新鮮な反応に胸きゅんです。

 私は時々イザーク様に撫でてもらいたくて、強引にアピールしているからな。関係ないけど私も撫でてアピールをして、撫でてもらった。本当に関係ないけれど、頭を撫でられるの大好き。個室に入ってお茶を注文した。


「イザベラ嬢の好みのタイプは?」

「そ、それが…、今まで考えたことが無く…」

「デブは好き?」

 直球過ぎるぞ、イザーク様。イザベラが真剣に悩みだしてしまった。

「汗まみれの男と密着してダンスできる?」

 ええ、そんなこと聞くの?答えにくいよね…。

「自分より足も遅い、体力のない男は?」

「うっ…」

「ガリガリは?」

「えっと…」

「ダンスで自分を支えられない様な男は好き?」

「うぁ…」


 イザーク様が質問攻めにして、イザベラの様子を窺っている。

「あ、あの、容姿ではなく、性格を重視したいと考えております。将来支え合って生きていくのですし、性格が合わない方が困ります。それと、最低限領地を維持できる方が良いです」

 イザーク様が満足した顔をして仕分けを始めた。真剣に選んでくれる気になったみたいで良かった。イザベラならイザーク様のお眼鏡に適うと思っていたよ!


 こいつは女癖が悪い、馬鹿、ナルシスト。スヴェンと同じ思想。際どい言葉も入っているが、どんどん仕分けされていく。

 結局、女癖が悪い、性格に難あり、馬鹿の山以外に、領地に問題ありや、家族に問題ありなどで一気に仕分けられた。知ってはいたが、本当に凄い情報網だ。そして、女癖が悪いのと性格に難ありが多すぎませんか。


「す、凄いですわ、イザーク様!」

 イザベラが尊敬の眼差しでイザーク様を見て、キラッキラしている。イザーク様の手元に残ったのは二十枚程度。そのうちの一枚を、イザーク様が私に差し出してきた。?開いてみた。

「お、お兄様~~~~!!」

 知らない間にイザベラに絵姿を送っていたなんて!父だな、きっと。


「ヴェ、ヴェ!?」

 イザベラも気が付いていなかったようで驚いている。

「重度のシスコンだが、そこさえ何とかなれば文句なしだな。後これ」

 シスコン…。もう一枚差し出された。まさか、イザーク様??

「てててててて、天使!!」

「甘えたみたいだけど、それが大丈夫なら悪くないと思うぞ」

 まさかのお兄様とハルトくん…。


「貴族思考で考えれば、嫁に行くならヴェルナー、婿をとるならハルトヴィヒかな。侯爵家同士だし、後々問題も少なくて済むだろう。気が合うならいいんじゃない」

 イザーク様は気軽に言ったが、そっとイザベラを見ると完全に思考停止して固まっていた。わかる。私の兄嫁かディートリヒの弟嫁。家族になるかもしれない人が身近にいるとね。想像しやすいだけに何だかな…。


 その隙にちょっと興味があったので聞いてみた。

「私だったら?」

「エルちゃん?」

 テーブル越しに、にじりよって返事を待った。

「…俺かディートリヒが無難だろうな?」

「何故疑問系!!」

「エルちゃんはノルン卿が煩いから、そこを考えると…」

「考えると!?」

「……」

「何!!言って!!」

 嘘くさい笑顔になった。笑顔で誤魔化す気だ。きぃぃぃぃぃぃ!胸ぐらを掴んだ。

「いや、まぁ、何て言うか。そもそも貴族に向いてないかなって思って…」

「…それは、確かに…」

 今の状況も貴族令嬢としてどうかと思う。テーブルに乗り出して令息の胸ぐらを掴む令嬢…。ないな。大人しく椅子に座り直した。

「納得するのか」

「うん。貴族の社交が面倒だなっていつも思ってるから」


「そうだな。今年は十六歳になるから、本格的に男もいる集まりにもでなきゃならないぞ」

 そう、十五歳までは同性だけの社交でも許されるのだが、社交界デビュー前の練習もかねて十六歳からは必ず男性も集まる社交場に顔を出すのが慣例だ。

 今まで面倒だから参加したことはない。ベルンハルトの婚約者候補なので父も見逃してくれていたが、今年はいよいよ参加しなければならない。気が重いわ。


 既婚者や大人は参加しない、堅苦しくないものになっている。そのくせエスコートとか色々なことが必要になる。練習だからね。男は一人で行ってもいいのだが、女性は男性がいる集まりに一人で行ってはいけないのだ。

 もちろん、十六歳になる前にその場に出ている人もいる。デポラとか。ダーリンに他の女が寄りつかないようにするためらしい。けなげ。心配しなくても、どこからどう見てもダーリンはデポラ一筋だよ。


 放心状態のイザベラを放置して、それぞれを分別した状態で袋にしまった。二十人程度なら、今年中に全員と会うことも可能だろうし、お兄様や天使で衝撃はあったが、一応私の役目は終わったと思う。

 イザベラの友人たちを呼び出して、放心しているイザベラと絵姿を回収してもらった。イザベラ思いの友人たちはとても心配そうにしていて、後で話をしっかり聞いてあげて欲しいとだけ伝えておいた。そんなにショックだったのかな?

 私は個室に戻って、イザーク様と一緒に夕食を食べてから部屋に戻った。


 後日イザベラから呼び出されて、続きの間でイザーク様と一緒に会った。お礼に私もお菓子を大量に貰った。イザーク様が絞ってくれた全員と、まずは食事をしてみることにしたらしい。それは良かった。

 イザーク様はイザベラのことにはあまり興味がないようだった。普通に考えたら、イザーク様の絵姿があったっておかしくないのに。イザーク様はどんな女の人がいいんだろう。


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