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令嬢と小姑(男)のあれこれ  作者: 藍澤


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侯爵令嬢はパーティーを開く

 次の週末から、王都で社交シーズンの始まりを告げるセレモニーが始まる。王都中で様々な催し物が一週間に渡って行われる。

 それに合わせて、ほとんどの人が領地から王都へ移動を始める。この週は学院も休みになり、毎年生徒もセレモニーに参加する。


 特に重要なこともないし、お母様もシーズンになってから王都へ行くそうだ。私たちも来なくていいと言ってくれたので、行かない。

 生徒とは逆に、使用人はほとんどが寮に残る。馬車の料金がどこに行くにも高騰する上に、混雑するから当然だよね。やるならこの時だと思っていた。

 フランツに町のカフェのものだが大量のお菓子を入手したので、一緒にパーティーをしませんかと誘った。


「いやいや、我々とだなんて。セレモニーには行かれないのですか」

「はい。他の方は皆さん王都へ行かれると聞きました。頂いたお菓子が大量で、私たちだけではこのまま捨てるしかなくなってしまうんです…」

 嘘ついてごめん。空間収納で永久保存できます。


「しかし…」

「場所はこちらの応接室でいいですから」

「いえ!それこそいけません!!」

 どうしたらフランツを説得できるのだ。ノーラかマーサを連れてくれば良かった。


「あああ…。わかりました。我々の食堂ででもよろしいでしょうか」

「はい、もちろんです!お日にちも皆さんがたくさん参加できる日にして下さいね。こちらはいつでも構いませんので」


 私たちが行くのは良くて、こっちに来るのはダメ。基準がよくわからないな。マーサに言ったら、使用人が何か破損しても弁償できないからだろうと言われた。なるほど、納得。

 もちろん、お兄様も引っ張って来るつもりだ。仲良くなった人は皆セレモニーに行くので、参加する貴族は私とお兄様だけになる。


 当日、応接間にベルンハルトに貰ったお土産を並べておいて、運び出すのを手伝ってもらった。

 私服の人が多い。今日は特別勤務体制にして、全員がパーティーに参加できるように変更したそうだ。さすがフランツ。楽しみ。

 結局皆応接室へ入っているのだが、それはいいのか?まぁいいか。気にしない。


 人数が集まると聞いて、マーサとお菓子を、ノーラとは軽食を追加で用意した。お兄様とお兄様専属使用人のヨアヒムもやって来た。

 お菓子を運ぶのやテーブルセッティングも手伝って貰ったら、二人ともすぐに馴染んでいた。

 私は馴染むのに結構時間がかかったのに!悔しいけど、さすがお兄様とヨアヒム!


 ヨアヒムもノーラやマーサとほぼ同時にお母様に雇われた、幼い頃からの付き合いだ。もう一人のお兄ちゃん。

 お兄様ほどベタ甘ではないけれど、普通の兄妹ならこういう距離感が普通なのかなと思わせてくれる人だ。ノーラやマーサとも仲がいい。


 お昼からパーティー開始。一応改めて自己紹介した。

「エルヴィーラ・ハーヴィスです」

「エルヴィーラの兄、ヴェルナーです」

「ヴェルナー様専属使用人のヨアヒムです」

「エルヴィーラ様専属使用人のノーラです」

「同じくマーサです」

 寮の使用人は良く見かける面々はともかく、人数が多すぎて名前を覚えきれなくて申し訳なかったが、後は皆でわいわい好きにした。


 途中でフランツの弟、フレドリクを紹介された。見覚えがあるような…。

「男子寮の受付で、一度お会いしましたよ」

「……。ああ、天使と一緒の時!」

「天使?」

「ハルトヴィヒくんと一緒の時ですよね。すみません、すぐに思い出せなくて」

 天使に夢中で受付なんてまともに見てなかったわ。


「あの日は大変な騒ぎになりましたよ。エルヴィーラ様が少年と一緒に来ただけで驚きなのに、出迎えたのが殿下とディートリヒ様ですからね。すぐに帰られてしまったので、皆様残念がっていましたよ」

 うまいこと言うな。

「何の話?男子寮って?」

 あ、お兄様が怖い雰囲気で乱入してきた。逃げよう。肩を捕まれた!逃げられない!!


「エル、男子寮には行っちゃダメだよ」

「はぁい」

 フランツとフレドリクがクスクス笑っている。過保護でしょ?心配性過ぎるでしょ?私が男子寮に行ったって、何も起こらないよ。


 途中からお酒が投入され、料理人がおつまみを追加してくれた。私はお兄様に本格的に飲むのはまだ早いと止められているので、飲まない。

 嘘か本当かはわからないが、お酒を飲み過ぎると、身長が伸びるのが止まるって言うのだもの!

 嘘だとは思っていても、食前酒でさえ手が伸びなくなった。身長欲しい。


 使用人は全員が楽しそうに飲んでいて、酔った使用人から愚痴を聞いた。

 ルイーゼの使用人たちは、自分たちは公爵家の使用人であり、貴方たちとは格が違うと言わんばかりの態度であれこれ命令してくるらしい。

 しかも、面倒な事ばかりを平気で言ってくるので困っていて、下手な貴族より貴族のように振る舞うそうだ。

 それ多分、自分が言われて面倒なことを押し付けていると思います。


「朝食の注文も多いんですよね。あれはダメ、これを追加しろとか。要望に応えられるものに関しては応えているうちに、毎朝特別メニューになっている状態で。当日変更も多くて…。最近は自分たちの分まで言ってくるんです。公爵家の使用人はこんなみすぼらしい食事はしないとか…」

 大変だな。ノーラとマーサの話を聞く限り、きちんとした食事だと思う。そんなに言うなら料理人を連れてくればいいのに。


「夜の談話室でも大変なんです…」

「夕食もご友人方全員で同じものを頼むので、できるだけ手間がかからないものをと、毎日祈るような思いです」


「遅く来られる時は、いつもどれを注文されるのかドキドキします。気に入った物を追加で頼んで頂けるのは嬉しいのですが、材料が足りなくなっては困りますからね…」

「材料が無く、ご用意出来なくて一度派手にご一緒におられる方々に注意されまして…」


「最近では、イザベラ様やスーリヤ様が材料の仕入れ具合とかを聞いて夕食を注文して下さるのですよね…。申し訳ないやら、ありがたいやら…」

「食後のお菓子も王都で人気のものをリクエストされるのですが、入手が難しい人気の物や、新作ばかりなんです。毎回お店との交渉が大変で…」

 あぁぁぁ、本当に大変そう。


「他の方が遠慮して下さる深夜や早朝も、使用人の方がお構いなしに来るんですよね…」

「少人数で対応するから大変で…」

 そもそもそんな時間に何を頼むんだ。


「エルヴィーラ様のわがままなら、喜んで聞くのに!」

 え?何で?そんなことしないよ。

「本当に。タルトもケーキも凄く美味しいです!いつもありがとうございます!」

 いやいやいや、こちらもいつもお菓子をありがとう。

「あれは癒やしですよ、癒やし」

 ついには泣き出してしまった。色々大変なんだな。


 色々あったが、なんだかんだで楽しかった。途中、厨房でお兄様がおつまみを作り出して皆を驚かせたりもした。

 令息で料理を作る人は、令嬢よりも更に珍しいらしい。久し振りに食べるお兄様の料理は、雑なのに何故か美味しい。

 洗い物はノーラとマーサが浄化魔法をかけたフリをして、全部私がかけておいた。二人に任せるには、ちょっと量が多かったのだ。

 酔っ払いも含めて、全員で食器を食器棚に戻して終了。楽しかったぁ。お腹もいっぱい。ベルンハルトもたまには役に立つな。


 お兄様たちを門まで送って、本当に終了。送る間、ずっと男子寮に行ってはダメだと言い続けていた。

 はい、はいっと。真面目に聞けと怒られた。ヨアヒムはその様子を呆れた笑顔で見守っていた。


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