これから
私の卒業式にはお母様、お兄様、エーリヒも転移魔法を使って駆けつけてくれた。特大の花束を貰えて、照れくさいやら嬉しいやらだった。
私の卒業と同時に、フランツは学院を円満退職した。無事に私の新たな使用人としてフランツを申請出来た。
引っ越し当日。私は自分の空間収納にデポラの分も一緒に入れて移動するだけなので、楽だ。
他の子の分も手伝っても良かったのだが、この時の引っ越しを手伝うことでお金を稼いでいる人もいるので、手伝わないのが正解だ。
ルイーゼの空きには西にある魔法学院から編入して来た西の辺境伯令嬢マレーナ・アストルティアさんが入って、私とデポラが入るはずだった本館には、二部屋の空きが出来る。
スーちゃんはいずれ私やイザベラ、ベルンハルトの婚約者候補が入寮することを考えて、広い部屋は避けていた。
広い三部屋には左からアメリーちゃん、イザベラ、マレーナさんが入寮したらしい。
アメリーちゃんは嫌がってスーちゃんに泣きついたらしいが、スルーしたそうだ。頑張れ、唯一の婚約者候補。
まぁ、この夏のシーズンで婚約解消になるけどね。それを本人は知っているから余計に嫌がっているのだと思う。
ベルンハルトの催眠術は解けたらしい。その代わり、幼い子どもの様な感じになってしまったそう。それが回復するには時間が必要で、それまでアメリーちゃんを待たす訳にはいかないと決まったそうだ。
この夏のシーズンでそれを発表し、王妃陛下がアメリーちゃんを褒めちぎる予定とディーに聞いた。アメリーちゃんの実家をルイーゼ派閥から脱却させて、一応ガロン侯爵家派閥になる。
王妃陛下のお気に入りだからちょっかいかけるなよ公爵家、ってことらしい。ディーの婚約者としてフォローよろしくと言われて、何かによによしてしまった。
引っ越し期間の設定は一週間なので、デポラと一緒にディートリヒに四年生の仕組みを聞いた。騎士コース、文官コース、跡取りコースとか言われているけれど、基本は自分の好きな授業を取ればいいらしい。
騎士を目指すなら、剣術、護身術、魔法、総合戦闘、戦略戦術は必須、上を目指すなら座学も満遍なく。文官なら政治、経済、経営、交渉術、帳簿が必須で必要最低限の実技もいる。跡取りコースは満遍なくそれなりに。
結局皆ほとんど同じような授業になるが、私とデポラはどれにも当てはまらないので自由だ。
「ねぇ、卒業試験に関係する授業はどれなの?」
最近元気になってきたデポラがやる気だ。
「実技は総合戦闘と交渉術、筆記は政治と経済、後は帳簿とかもかな」
その言葉にデポラ様がにやりと笑った。はい、一緒に受けます…。更にじっくり相談に乗ってもらった。
入学式で、今まで見たことがない人を何人か見かけた。あれがバルナバスさんの言っていた、西の魔法学院からの生徒だと思う。女性は一人しかいないので、あれがマレーナさんだと思う。ワーグナーさんもみっけ。
再び駆けつけてくれたお母様、お兄様、エーリヒに贈り物を貰った。お母様からは懐中時計、お兄様からはネックレス、エーリヒからは魔法が組み込まれたブレスレットだった。今回はきちんとブレスレットの魔法について説明を受けた。色々と凄い代物だった。
専門学院は魔法学院から見て左から女子寮、パーティー会場、茶会会場、多目的ガーデンがあって、丁度真ん中に校舎と図書館、魔法学院と共通の鍛錬場、男子寮の順に建物がある。魔法学院の四倍くらいの敷地があった。
女子寮と男子寮まではかなり離れていて、正門から遠い男子寮は外に出るだけでも時間がかかりそうだった。
早速授業が始まったが、女性が少ないだけで魔法学院と雰囲気は変わらなかった。マレーナさんも四年間コースと知って、たった三人の女性なのでデポラと三人で行動するようになった。
早速淑女コースのお茶会に、スーちゃんから招待して貰えた。二年生のスーリヤは、既に規模の大きなお茶会を開けるようになっていた。
スーちゃんは出来る女なので、マレーナさんが早く馴染めるように彼女も誘っていた。
淑女コースの令嬢は全員本番と同じ格好をしている。対して四年間を選んだ私たちは制服で参加する。参加する私たちの単位にもなるのだが、着替えたりしている時間はないのだ。
昼休みの後のお茶会時間。招待を受けていない人や、勉強したい人は別のことをしている。
魔法学院で親しくしていた令嬢令息が集まって、ただただ和やかで楽しいお茶会が始まった。
授業中なので、皆言葉遣いが丁寧になっています。笑いそう。私もだけど。
辛い時や嫌なこともあったけれど、これからの人生の方が長い。だったら楽しまなきゃね!
長い間エルヴィーラの物語にお付き合い頂き、ありがとうございました。これにて本編は一旦完結とさせて頂きます。
今後はおまけの話を数話投稿する予定です。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。




