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令嬢と小姑(男)のあれこれ  作者: 藍澤


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横断幕は失敗だった

 お母様に相談して、デポラが到着する前にウテシュ伯爵夫妻を転移魔法で侯爵領へ呼び寄せることになった。お祝いは大勢の方がいい。

 ディートリヒに話すと参加したいとのことだったので、ディートリヒも呼び寄せた。


 デポラ達が到着すると、歓迎を示す花火もどきに始まり、『デポラおめでとう!!』の横断幕を屋敷に掲げた。主にエーリヒに協力して貰ったのだが、やり過ぎたようだ。


「は、恥ずかしいわ!!」

 デポラがあまりの恥ずかしさで、うっかり力加減を間違えて私を突き飛ばしそうになった瞬間、ブレスレットの防護魔法が働いて、逆にデポラが吹っ飛んで行った。


 デポラも油断していたので、咄嗟に受け止めてくれたクリスに感謝しかない。反応できなかったダーリンに凄い形相でクリスが睨まれているけれど。なんかごめん。

 デポラには、「後で覚えてなさいよ」と言われた。怖い。悪気は無かったのです。出迎えには失敗したが、その後は楽しく過ごすことが出来た。


 お祝いなので勿論お酒も出されたのだが、クリスの厳しい監視下に置かれたため、二杯までしか許されなかった。魔法さえ使わなければ、私はきっと大丈夫なのに。きっと。

 イザベラはお兄様の過保護が発動して、年が若いことを理由に早々に退散させられた。同級生なのに。


 ディートリヒはゲルン卿とウテシュ卿に挟まれて顔を真っ赤にしていた。本当にお酒弱いな。思考が遅くなるみたいで反応も遅いし、むにゃむにゃ言ってて面白い。

 目が合うと、にっこり笑って頭を撫でられるのは何でだろう?撫でられるのは好きなので構わないのだけれど、ゲルン卿とお兄様がとにかくうるさい。


 ほどなく眠ってしまったディートリヒは、エーリヒによって運び出されていた。

 後は女性陣と楽しくおしゃべりをした。


 ゲルン卿とウテシュ卿は、今度はクリスに狙いを定めて飲み比べを始めたが、返り討ちにあっていた。これもエーリヒが回収してくれた。

 女性陣は日付が変わる前に解散したが、残ったお兄様とエーリヒ、クリスはまだまだ飲むつもりらしい。主役がいないのに変なの。


 私はデポラと一緒のベッドに潜り込んで、色々話をするつもりだったのだが、睡魔に勝てず寝てしまった。それでもとても楽しかった。


 翌日はウテシュ伯爵夫妻とデポラと一緒に町に行って遊んだ。この面子で護衛は必要ない。

 今はぽっちゃりして穏やかさを漂わせる伯爵夫人だが、以前は妃殿下の護衛として働いていた。ウテシュ卿は言わずもがなだし、デポラはSS。挑戦する人がいるなら逆に見てみたい。

 町の人にもデポラのSSランク昇進の話は伝わっていたようで、子どもの頃から遊びに来てくれていたデポラを覚えていて、お祝いしてくれた。

 終始照れまくっていたデポラが可愛かった。


 新年のパーティーも大勢で楽しみ、穏やかで楽しい冬休みが終わった。


 *


 冬休みが終わって学院へ戻った。情報収集に協力してくれた令嬢には、お母様と選んだ美容グッズをプレゼントして喜んで貰えた。

 令息にはかなり悩んだが、ディートリヒの協力を得て、珈琲豆と紅茶、キッシュかタルトをプレゼントした。


 かなり価格差が出たので悩んだのだが、クリスにも泣いて喜ぶと言われたので気にしないことにした。実際、ハイテンションで喜んで貰えたので、よくわからないが良かった。

 陛下にディートリヒ、私までもが大量に珈琲豆を購入したのでマックは笑いが止まらない状態だろうな。ここからリピーターが出れば更に喜ぶだろう。


 同じクラスの人たちのほとんどは、父のクーデターについて触れないでいてくれた。とても有難いし、今までと同じ様に接してくれるので居心地が良い。

 ルイーゼ派閥の令嬢や違うクラスの人たちが多少ひそひそ言ってはいたが、直接何かを言って来るわけでもなく、卒業試験が近付くとともに収束していった。


 二年間コース、所謂淑女コースへ進学する令嬢には卒業試験が重要になってくる。

 淑女コースのクラス分けは、魔法学院と違って筆記と実技の成績で決まる。なので、場合によっては下剋上が可能になる。


 将来を考えれば、上位クラスが圧倒的に有利なので、令嬢にとって負けられない戦いになる。

 因みに王子の婚約者や候補などは必ず上位クラスになるので、アメリーちゃんだけは恥ずかしくない成績を取るだけで良かったりする。


 何故上位クラスが圧倒的に有利になるのかというと、優秀な令息と懇意になれる可能性が高いから。淑女コースの実技では、自分がホストとしてお茶会やパーティーを開く。その時に令息たちも招待できるのだ。

 四年間コースの令息は授業が忙しいので、招待を断る権利もあるし、限られた時間を有効に使おうと考える。

 そうなると、自分が欲しい人脈や婚約者を探す目的に集中するので、自然と優秀な令嬢が集まる上位クラスのものを優先する人が多くなるからだ。


 逆に四年間コースの場合は、受ける授業によってまちまちなので、卒業試験の結果はさほど重要ではない。専門学院を卒業した時の成績が一番重要になる。

 だけど今回に限っては、令息はかなり真剣に鍛錬や勉強に取り組んでいた。一位だったベルンハルト、二位のスヴェンがいなくなり、令息たちは上位を狙って鍛錬に気合が入っているのだと勝手に思っていた。

 実は、三位だったディートリヒがハーレムを作って学生生活を謳歌していたのだから、ハーレム男に負ける訳にはいかないと、盛り上がっているだけらしいことを知った。それでいいのか。


 私はもう実力を隠す必要はないので、思い切りぶっ放そうと思って魔法の鍛錬をしつつ、座学の復習をしている。

 空いている時間は、冬休みの間にお兄様といい感じになったイザベラの惚気話を聞いて過ごすことが多い。イザベラの乙女フィルター越しにお兄様の話を聞くと、凄いイケメンに感じるから不思議だ。別人の様にしか思えない。


 そんな時、デポラが顔を絶望に染めて部屋を訪ねてきた。どうした、デポラ。


 ダーリンが、デポラの隣に相応しい男になる為に、武者修行の旅に出てしまったらしい。しっかり修業したいので、しばらく婚約は待って欲しいと言われたそうだ。

 当初の予定ではデポラが専門学院を卒業した年に結婚するはずだった。


 話を聞く限り、それがほぼ無期限の延期になったので、恐ろしい程荒れ狂っていた。デポラの夢が脆くも崩れ去ったのだから当然だろう。

 元々SSランクを目指していたのだって、ダーリンとの幸せな結婚生活の為だ。


 デポラのお母様は王妃陛下の護衛に決定していたので、王妃陛下が婚約者として発表される前に急いでウテシュ卿と結婚。

 その後長男を出産はしたが、僅か一歳の息子を置いて王城勤めになってしまったのだ。


 本来であれば最長でも五年間なのだが、当時の王城は王弟のせいで不穏だった。陛下は王妃陛下を守るために、高い実力を持っているウテシュ伯爵夫人を手放すことができなかったのだ。

 そのせいで、王妃陛下の護衛を十年ほど勤めることになってしまった。


 国王が地道に王太子として実力を示し続けてようやく情勢が落ち着いて、任を解かれた。

 伯爵家へ戻ってきた時には既に息子は十二歳。手紙などで交流はしていたが、普通の母子の距離感ではないとデポラが言っていた。


 その後デポラを出産したが、デポラの物心がついた時には兄は魔法学院へ入学済みで、専門学院卒業後にはそのまま騎士団へ入学している。

 特殊な家柄なこともあり、長期休暇を訓練に費やすことも多いことから、デポラとお兄様の関係にもぎこちなさがあると言う。

 過剰なシスコンでも、デポラはお兄様と私の関係を羨ましがっていた。


 散々お酒も飲んで暴れたデポラは、「四年間一緒に専門学院へ通わない?」と非常に据わった目でおっしゃったので、直ぐにお兄様に相談して、「好きにしたらいいよ」と言ってもらえた。


 こういう時に頼りになるマーサとユキちゃんも投入して、何とか表面上は落ち着いて頂いた。

 興奮して眠れなさそうなので私の部屋にお泊りして、マーサの睡眠魔法で強引に寝て頂くしかない程の荒れようだった。

 ここまでデポラを悲しませるダーリンが憎い。


 何とかデポラを寝かしつけてウテシュ伯爵夫人に連絡を取った所、ダーリンはきちんとウテシュ卿の元を訪れて相談し、署名済みの婚約宣誓書も置いていったそうだ。

 浮気をするような人ではないと思うし、ウテシュ卿が最長四年と期限を切ったことで、自分が強くなれなくても期限になれば帰ってくる約束らしい。無期限延期ではなくてもやっぱりデポラを悲しませるダーリンが許せん。


 どうやらデポラはショック過ぎて、最後まで話を聞いていられなかったらしく、通話を切った後直ぐに私の部屋に駆け込んでいた。

 その後通話が繋がらない状態が続いていたので、ダーリンは伯爵夫人に連絡を入れていた。


 伯爵夫人を心配させ、デポラを悲しませるダーリンにとてももやもやする。

 しかもダーリンが伯爵夫人に残したデポラへの伝言は待っていて欲しい、だったそうだ。自分で言えや。そして待たすな。私も荒れてしまい、マーサのお世話になってしまった。

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