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令嬢と小姑(男)のあれこれ  作者: 藍澤


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鍋パ

 気温がすっかり下がってきた。いつもより、季節の移り変わりが早く感じる。今日はデポラ達と一緒に鍋パーティーをすることになっているので、毎日の鍛錬をウキウキした気分で過ごした。

 イザベラも誘っていたのだが、急用ができたとさっきわざわざ断りに来てくれた。今度また機会があれば誘って欲しいと非常に残念そうに言うので、こっちまで切なくなった。何かごめん。デポラは先にダーリンと通話するから遅れると言われた。相変わらず仲良し。


 デザートにモンブランが食べたいとリクエストがあったので、全員が私の部屋に集まる前に土台にマフィンを焼いて、栗の皮をむく所までコタローと頑張った。コタローはつまみ食い専門だけど、可愛いので許す。そのつもりで最初から多めに作った。クリスとフラウ、ディートリヒが鍋の材料と一緒にやって来た。

 今日は味違いの鍋二種類がメインで、そちらはクリスとフラウが中心になって作ってくれる。私達は何度も一緒に料理をしているので、無言で役割分担と共に動き始めると、応接室に取り残されていたディートリヒも手伝いたいと言ってきた。


 全員で顔を見合わせた後、誰からともなく言い出した「じゃーんけーん」の言葉で、負けたフラウにディートリヒは任された。ディートリヒとフラウが何とも言えない顔をしていたが、全員でスルーした。頑張れフラウ。

 間もなくディートリヒの包丁さばきが怪しすぎてフラウが泣きそうになったので、ディートリヒはモンブラン用の栗を潰すのと色々混ぜる担当になった。

 魔法を使わず地道に手作業でしているが、再び包丁を握らせるのはまずいと思ったので、そのまま頑張ってもらった。ディートリヒを見守っていたマーサは、戦力外になるほど付きっ切りでハラハラしていた。それくらい、料理慣れしていなくて危なっかしかった。


 私やノーラは唐揚げやカリカリのポテトフライなどを作った。ディートリヒ、クリス、フラウは良く食べるので、お鍋だけでは足りないのだ。後でフランツとサラ(デポラの使用人)も合流するので九人分になるが、作る人数も多いしメインが鍋なのでさくっと終わった。


 今回はフラウとフランツがディートリヒに緊張するとのことで、貴族と使用人で分かれることにした。テーブルに出来上がった料理を並べ終えた頃、ようやくディートリヒと主にマーサの努力が実ってモンブランも完成した。

 そのタイミングでデポラがサラとフランツとやって来た。挨拶の後、フランツとサラはノーラに連れられて二階に上がっていった。私たちは一階の応接室で食べる。


「あれ、イザベラは?」

 既に鍋に視線を固定しているデポラが言った。

「イザベラは急用ができたんだって。凄く残念そうだったよ」

「あぁ、学院の冬休み頃に、事件全体について公表する目途が立ったんだよ。次期侯爵夫人だし、色々と打ち合わせがあるのかも」

 ディートリヒが当たり前のように言ったけれど、私は何も聞いていない。

「えっ、何で私が知らないの?」


「今日僕が皆に言う予定だったから。昨日の夜に僕は先に聞いたけれど、ヴェルナー様も今日聞いた所だと思うよ」

「それなら気にせず参加すれば良かったのに」

「他の話だってゆっくりしたいでしょ。婚約者になるんだから」

「まぁ、そっか」

 いずれは婚約して、結婚するんだもんなぁ。イザベラから聞くお兄様の話は、乙女フィルターがかかっているのか別人のようにも感じるけれど、仲も良いみたいだし、当然か。


 ぼんやりしていたら鍋が出来上がったようで、クリスが蓋を取っていい匂いが部屋に充満した。

「こっちが辛いので、こっちはまろやかな味にしました」

 辛い方はちょっと赤いスープになっていて、まろやかな方は白濁したスープになっている。食欲をそそるいい匂いだ。

「いい匂いね!」

 デポラがパタパタと手で仰いで匂いを嗅いで、喜んでいる。わかる。胸いっぱいに吸い込みたい。早速皆で食べ始めて話をしていると、自然と冬休みの話になった。私は当然だけれど、今年は領地に帰る。


「デポラは何するの?」

 唐揚げじゅわ~。ノーラの唐揚げ大好き。

「ダンジョンに行って、SSランクを目指すわ」

「デポラさんならなれると思いまス」

 私もそう思うよ、クリス。白菜に味が浸みて美味しい。もぐもぐ。


「だといいけどね。このままだとアメリーちゃんかレオンハルト殿下の婚約者の近衛騎士にされるし、後二年で何とかしなきゃ」

「余裕だよ。あの魔法も使いこなせるようになったんだもん。後は実戦でお試しでしょ?すぐにSSになるんじゃない?」

 クリス特製のエビ団子ピリ辛でうまうま。

「健闘を祈るよ」

 ディートリヒが当たり障りのない言い方をした。いつもデポラにこてんぱんにやられているもんな。本当のデポラの実力を知らないはずだ。一度、クロムと本気でやり合ったのを見たけれど、鳥肌ものだった。強すぎる。それにギリギリながらも対応したクロムも凄いけれど、デポラが凄すぎたという印象しか残らなかった。


 あれこれ話をしながら、楽しい夜を過ごしました。友達と集まって鍋をつついて、緩い話をしながら過ごすのはとても楽しい。使用人たち大人組はお酒を飲みだしたので、クリスはそこにちゃちゃっと追加で作ったおつまみと共に参加し、デポラは使用人通路から自分の部屋に戻っていった。私はディートリヒのお見送り。


「ねぇ、エル」

「なにー?」

「ノルン侯爵領にハルトも行きたがっているみたいだから、冬休みに一緒にお邪魔してもいいかな?」

「うーん?あの件が発表されたら領民がどう反応するかはわからないし、一応お兄様に聞いておくね」

 イザベラは同じタイミングで侯爵領へ行くことになっているし、フランツを連れて行く許可も問題なく貰えたので大丈夫だとは思うけれど、念のため。


「あぁ、ヴェルナー様に聞いたら、エルに聞けって言われたんだよ」

「何で私に?」

「さぁ?」

 お兄様がいいなら私が断る理由はない。どうやって侯爵領に戻る予定かを軽く説明してからお見送りした。転移魔法で帰るつもりだと聞いて、驚いていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] エーリヒ様が知らぬ間にタウンハウス居付いてる(笑) とりあえず、邪魔者(お父様)が居なくなったんで万々歳ですね! エルの酒乱魔法は面白過ぎるww
[一言] >庭に目を向けると花の美しさに感激したし、ただ青い空を見るだけでもとても綺麗だと思った。風が頬を撫でるのも気持ちがいい。庭に響く笑い声、美味しい紅茶にお菓子、全てがとても楽しい。憂鬱な気持ち…
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