表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
令嬢と小姑(男)のあれこれ  作者: 藍澤


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/130

それぞれの根回し

 休日、エルヴィーラはディートリヒと共にゲルン卿の元へ訓練に行っている。貸切にしたカフェには、エルヴィーラを除く親しい令嬢たちが集まっていた。デポラの呼びかけで集まった令嬢は、デポラが話し出すのを静かに待っている。


 ここにいる令嬢はスーリヤともう一人を除いて社交界デビュー前。パーティーの招待状は当然届いているし、社交的にもこちらの行動的にも全員が不参加という選択肢はない。

 多少の危険はあるが彼女たちも成績優秀、エスコートの男性も必ずついている。相手の目的であるエルから離れてさえいれば、巻き込まれる可能性は低いと信じるしかないと思って呼び出した。


「皆、集まってくれてありがとう。あのポンコツが、やっと自分の意志でエルにエスコートを申し込んだの」

「やっと!」

「遅すぎるわ」

「随分待たされたわ」


 令嬢たちがやっとか、あのポンコツめと気持ちを一つにしながら話し出す。最近では毎日朝から晩まで、休日もずっと一緒にいることを全員が知っていた。

 なのに一向に縮まっていかない二人の距離に、事情を知らない全員がヤキモキさせられていたのだ。二人はそんな甘い理由で一緒にいる訳ではないのだけれど、それを今言う必要はない。


「そこで今度のパーティーで皆がエルに話しかけると、エルがそっちの方が楽しくなっちゃうかもしれないから、わかるよね?」

「ポンコツ見守り隊としては、遠巻きに見守ります!」

「その意見に賛成!」

「そうなの。お願い。フォローが必要な時は私に任せて欲しいの」

「勿論!むしろ頼んだ!」

 皆が微笑ましいという笑顔で納得し、デポラは満足そうに微笑んだ。



 いつも通りのポンコツ見守り隊の話かと思っていたら、微妙にデポラの雰囲気が違うことに気が付いた。決意が漲っているが、その方向性が何か違うと感じた。解散した後、デポラに小声で話しかけた。

「デポラ、パーティーで何かあるの?」

 一瞬、デポラの瞳に宿った決意が揺らぐのを見逃さなかった。何かあるのだ。それも、おそらくエルに。話したくても話せない、そんな感じだった。


 最近エルがとても忙しくしていて、心に余裕がなさそうなのには気が付いていた。デポラもそうだった。ディートリヒが朝から晩まで一緒にいるし、休日もどこかに二人で出かけている。

 一度見かけたことがあるけれど、二人はとてもぐったりと疲れた様子で、デートしてきたような甘い雰囲気ではなかった。


 気になって何か協力できることがあればとデポラと鍛錬を繰り返しているクリストフルに声をかけたが、見守っていて欲しいと言われた。


「…大丈夫よ、スーリヤ。私に任せて」

「そう、なら…。デポラも気を付けて。後でちゃんと話すのよ」

「わかったわ」

 デポラはふにゃっと笑って、足早に学院へ戻っていった。あの感じだと、今から鍛錬でもするつもりなのだろう。

 私ではパーティーの招待状も入手できないし、もし入手できても、邪魔にしかならないだろう。参加する友人たちの無事を祈るしかなさそうだ。


 他にも何か気付いていそうな友人への根回しくらいはしておこう。おそらく、そのパーティーで誰もエルに近付かないことが、デポラの、そしてエルの助けになる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そこを何とかディートリヒには許してあげて下さい(笑)
[一言] ゲルン侯爵家での会議と内容はほとんど変わってないですけど、エルちゃんの暗殺の件が追加されましたね。 まぁ、エルちゃん本人がいるところで、彼女の暗殺云々の話は出来ないでしょうけどね。 それに…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ