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令嬢と小姑(男)のあれこれ  作者: 藍澤


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ビアンカの誤算

 入学した学院では、四組あるうちの四組になった。多少無理をしたのだから、四組になるのは想定内。ただ、思っていたより爵位による差別が激しいのに驚いた。同じ四組なのに、伯爵家の令息令嬢に全く相手にされなかったのだ。

 少しだけいた、違う組の子爵や男爵家の令息にも話しかけたのだが、彼らにも鼻で嗤われた。上位の侯爵家や伯爵家が差別をしていないのに、家格が落ちた方が差別が多いと言うことか。令嬢の友達さえ、まだ出来ていない。

 正直、見た目には自信があった。クリスに近付けたのも私の美貌が役に立ったと思っている。実際、そこら辺にいる伯爵令嬢にも負けていない。なのに全く相手にされない、意味がわからない。


 初めてのセレモニーを一人で回るのが嫌で、妥協して気の弱そうな男を捕まえた。聞くと伯爵家の次男らしい。まぁまぁか。領地収入が安定している伯爵家の嫡男が理想だが、今回は時間がないので仕方が無い。

 セレモニーの会場になっている一画は、どこもかしこもキラキラしていて想像していたよりずっと素敵だった。


 その時、人々のざわめきが近付いて来るのに気が付いた。ざわめきの原因は、こちらに向かって歩いてくる華やか過ぎる集団だった。先頭を歩く二人が美男美女過ぎて驚いた。

 ワーグナーに聞くと、侯爵家のヴェルナー様とイザベラ様だと教えてくれた。侯爵家ともなるとここまでレベルが違うのか。見た目だけではなく、身につけている物、雰囲気が全く違う。家格は同等とされてはいるけれど、辺境伯とは大違いだと思った。


 そして、その集団の中に辺境伯の屋敷で会った令息を見つけた。彼が侯爵家のディートリヒ様だと判ったのはいいが、横にはまた驚くような美女がいた。小柄で華奢、儚すぎて庇護欲をそそられる。

 可能であればディートリヒ様と縁を結び、友人から恋人にステップアップできたらなどと考えていたが、隣の美女も侯爵家の令嬢だと聞いて、あれとは流石に勝負するだけ時間の無駄だと思った。


 デポラ様もダーリング様も、あの時と雰囲気が全く違う。伯爵家なら上位でも然程子爵家と変わらないのだと思っていたけれど、自分とのレベルが違いすぎて、通り過ぎるのをただ見てしまった。

 エルヴィーラ様とデポラ様の間にいた令嬢も誰かはわからなかったが、とても目を引く綺麗な人だった。だけど、チャンスを逃すわけにはいかない。彼らと知り合いであると噂でもされれば、学院での扱いが変わるかもしれない。

 ワーグナーを言い含めて後をついて行き、劇が終わるまで外で待った。演目が終わって出てきた集団の先頭には、イザーク様までいた。話しかけたのに、返事もしてくれなかった。どうして?

 辺境では平民とも仲良くしていたのに、子爵令嬢の私を無視する理由が分からない。


 ワーグナーにはマナー違反も甚だしい。あれくらいで済ませてもらえて幸運だと言われた。意味がわからなかった。マナーの勉強さえ終わっていない人にセレモニーへ参加する資格はないと言われ、馬車へ一人で押し込まれた。

 マナーなんて、こちらに来る前から学んでいる。爵位が上でも知り合いなら話しかけてもいいんじゃないの!?


 その後は一人でセレモニーを回ることになってしまった。


 学院に戻ると直ぐに教師から呼び出され、学院の品位を落とすような行動をするなと厳重注意された。知人だと言っても信用してもらえなかったので、詳しく話した。

「あなたねぇ…それで知り合いになるなら、騎士団の方々は国中が知り合いだらけになるわ」

「でも、二人でお話もしたんですよ!」


「だから?」

「えっ!?」

「本当に何もわかっていないのね。この学院はマナーは出来て当たり前なの。自主退学をお勧めするわ。貴女のせいでこの学院へ入れなかった人がいるかと思うと、本当に可哀想」

 どうして?私はちゃんとマナーの勉強をしていたわ…。将来は辺境伯夫人になる予定だったんだもの。侯爵家と同等レベルのマナーまで勉強していたはず。辺境伯になると、マナーも違ってくるのかもしれない。


 教えてくれる人がいないので、仕方無くお父様に通話した。お父様はこうなることがわかっていたように動揺もなく、自主退学して戻って来るように言ってきた。

 そんな事をすれば戻っても嗤われるだけだし、絶対に嫌だと大喧嘩になった。話は平行線で終わってしまい、今日も授業には参加しているが、確実に以前より孤立してしまっている。今まで以上に周囲の私に対する空気が変わった。


 何を間違えてしまったのか。悩んでいると、談話室で上級生の西の辺境伯令嬢マレーナ・アストルティアに話しかけられた。

「早く自主退学なさい。貴女一人のせいで辺境そのものの評判が悪くなるのは、全ての辺境関係者に迷惑だわ。意味がわからないのでしょう?先ずはマナー学校へ行くか、家庭教師をつけて勉強することね」

「私はマナーを学んで来たわ!」

「それで?信じられないわ」


 彼女は周囲に聞こえないように耳元で囁いた。

「クリストフル様との婚約内定が解消されたのに、いつまで辺境伯夫人気取りなの?貴女の態度はただの子爵令嬢に許される態度ではないわ」

 思わず睨み付けてしまったが、彼女は悠然と談話室から出て行ってしまった。私が上から目線だったってこと?どうしても知りたくて、クリスに通話をしたが、既に魔力を消されていたみたいで繋がらなかった。仕方無く、母にも連絡した。


「良く思い返してみなさい。周囲は貴女を次期辺境伯夫人として扱っていたから、マナーの不備も許すしかなかっただけよ。指摘されても貴女の態度は尊大だったわ。クリストフル様の庇護がなければ、そんな態度は辺境でさえ許されるものではなかったわ。そんなことも忘れてしまったの?恥ずかしいから早く戻ってきなさい。こちらに既に抗議も来ているわ。裏口入学の噂も出ているの。はっきり言ってそれは本当のことだから、これ以上評判を落とす前に戻ってきなさい。これ以上噂が広がれば、辺境でも婚約者を探すのが難しくなるわよ」

 そんな馬鹿な。


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― 新着の感想 ―
[一言] はっきり言ったかー。ディー様頑張ったな(笑) このまま大人しく引き下がるヒロインちゃんでは無いだろうが…(笑)
[良い点] すっかり忘れていましたが、100話達成おめでとうございます。 [一言] ヒロインちゃんに弟まで目をつけられてディートリヒもブチ切れ。 アッサリ引導を渡しましたね。 これで諦めればいいけど、…
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