94.
俺は影の触手を伸ばし……。
次郎に追尾させる。
「っと」
次郎は触手を……避ける動きを見せた。
やはりそうだ。
もしも強い力、そして武芸の心得があるなら、棍棒で触手をはらうことができるだろう。
だが、攻撃をしなかった。
いいや、ちがう……。
攻撃ができないんだ。
そうか……それがやつの神器の能力……!
俺は攻撃じゃ無くて触手による捕縛を試みる。
殺気を出さず……。
ただやつを捕まえることに集中する。
上下から触手を伸ばし、やつの体をキツく縛る。
「あれま、気づいたようだねヒカゲくん」
捕まったって言うのに、なお余裕の表情の次郎。
「そのとおり、おれの神器は、攻撃できない代わりに、一切の攻撃を受け付けない能力を持ってる」
「!」
こいつ……なぜ自ら手の内をバラすようなことを?
「ま、ようするに防御特化なんだわな、これ」
……何が狙いだ。
ありえない、だってこの力は……。
「そう、この力は一発ネタだ。タネさえ割れれば対処できる。そう……だからおまえはこう考える。なぜその力をバラすのかって?」
にぃい……と次郎が笑う。
「正解は準備が整ったからだよ」
振り返ると、そこには。
白い強烈な光を発する、騎士が突如として現れた。
「あと頼んだぜ、竜一」