93.
次郎の前に転移してきた俺。
次の策のために時間を稼ぐ必要がある。
俺は影の中に潜る。
そして背後に回って一撃を加えようとする。
がきん!
「きかんなぁ」
「!」
影の刀は次郎に届いてる。
だというのに、やつはまったくダメージを負っていない……だと……。
「優しいねえ君」
ぶんっ! と手に持った棍棒でなぐりつけてくる。
俺は再び影に潜ってそれをやり過ごす。
……今のやつの一撃。
武人にしては、あまりに動きに洗練さがなかった。
多分やつは本来前に出て戦うやつじゃあないんだ。
でも前線に立てている。
それはなぜか?
……おそらくはあの棍棒の力だろう。
あれに何か特殊な能力が備わっているのだ。
前に出ても、平気なくらいの特殊能力だ。
「考えろ考えろい」
……やはりやつは時間を稼いでる。
まあそれはそれでこちらも好都合だ。
俺は手で印を作る。
しゅるん、とやつの四肢を拘束する。
「あれま、つかまっちった」
「?」
……おかしい。
このくらいの捕縛くらい、なんなくいなせるだろうに。
なぜやつは対処しなかった?
「考えすぎだぜ、ひかげくん」
「「「聖光!」」」
ちっ、仲間の騎士達が魔法を使ってきやがった。
影の触手がボロボロと崩れて、次郎の拘束が解ける。
やつはやはりなにか特殊な力を持っている。
だがその力がなんなのかわからない。
……いや、待てよ。
影の刀によるダメージは入らず、逆に触手は捕まった……。
まさか……。
「……試してみるか」