83.
罠を見抜いて、ひとりやってきた、次郎という人物。
彼は開口一番に言う。
「話し合いしない?」
「……話し合い」
【俺】に向かって次郎が言う。
「そ、話し合い。おとなしく身柄を拘束される気はないかい?」
ナニを突然言い出す……?
俺の殺気を悟っても、次郎は余裕を持った態度で言う。
「まあきけ。おれらの命令は黒獣……ようは、あんたを本国に連れて行くことだけだ」
「……木花村の連中も殺す気だろう」
「まあな。だがそれはあくまで、おまけにすぎん。主目的は黒獣。それ以外はどうでもいい。意味がわかるな?」
「……つまり、俺がひとり身を差し出せば、他の連中には手を出さない……と?」
「そ? どうだい、悪い話じゃないだろう。あんたは村の女の子を守るためにやってるんだろ、そんな森番みたいなこと」
なるほど、そこまで次郎は呼んだ上で提案してるわけだ。
俺が守るべき物のために戦っていると。
「彼女たちの安全はおれが保証しよう。君が、おとなしくクビを差し出せばね」
なるほど……いいところをついてくる。
俺は別にバトルジャンキーではない。
戦っているのは守るためだ。
エステル達に危害を加えないっていうのなら、俺に戦う理由は無い。
「君がいなくなったあと、聖騎士を配備させよう。村を守る、約束する」
「…………」
良い提案に思える。
この村を守れるなら、俺じゃ無くても良いわけだからな。
「どうする?」
俺は……答えを出す。