82.
俺は夜を待つことにした……のだが。
『! ご主人様……敵です』
「…………」
やはり、そうか。
向こう側でも俺が暗殺者だと、理性無き獣じゃ無いと理解してるやつがいるわけだ。
そのうえ、影の森を抜けるほどの力を持つ相手、か。
……想定内だ。
「数は? そんなにいないだろう?」
『ひとりです』
「そうか……わかった」
タイマンなら暗殺術が使える。
俺は影に潜んで敵の出方をうかがう。
すると背の高い、ひょろりとした体つきの男がやってきた。
「あーあー、黒獣……いや、焔群ひかげくーん」
……俺の名前を呼んだ。
やはり俺の出自、そして職業を知るものか。
「おれは13使徒のひとり、次郎ってんだ。ちょいとお話ししないかー」
これでバカ正直に応えるやつはいない。
やつは殺気を出していない。
だが、それは正確ではない。
殺気を隠してる。
隠してるってことは、嘘をついてるわけだ。
その理由は?
きまってる、俺を油断させるためだ。
ならば、どうする?
ずぉ……と【俺】が姿を現す。
「あらー、驚いた。まさか姿を現すとはね」
「まあな」
【俺】は真っ正面から、次郎に近づく。
彼は驚いてる、振りをしていた。
多分こっち側の策を読んでいるのだろう。
……罠をあっさり見抜いたり、裏をかこうとしてきた。
それを指示していたのは、なるほど、こいつか。