78.
敵の動きを式神を使って監視する。
聖騎士たちは動ける奴らで森に入る様子だ。
あいつらは一つ勘違いしてる。
戦う相手が、黒獣という知性なき化物であると。
または、力をもって暴走する、ただの悪童であると。
だが俺は暗殺者だ。
あいつらは暗殺者の戦い方を知らない。
真正面から挑まず、自分が有利に立てる状況を作り、必ず殺す。
そう、俺の仕事は勝つことではない。
敵を殺すことだ。……まあ今回は殺さないが。
ともあれ、真正面からの斬り合いを向こうは期待してるようだが。
そうは、いかないんだよな。
「うぉ! な、なんだあぁ……!?」
聖騎士たちが森に入った瞬間、やつらの足下がずぶ……と沈んだのだ。
まるで、底なしの沼に足を突っ込んだかのように、ずぶずぶと地中へと落ちていく。
俺は影を使って戦う。
この森の中には影なんていくらでもある。
森の影を、たとえば沼のように変えることは可能。
やつらはそれを知らず、のこのこと森に踏み入れた。
結果、聖騎士どもは沼に沈んでいくというわけだ。
もっとも、強いやつらは気配を察知し、沈む前に逃げたようだが。
「……次だ」