75.
俺は奈落の森にきた聖騎士どもを、倒す。
……だが相手は人間だ。
殺す、わけにはいかない。
俺は決めたのだ。
元いた場所……火影の一族を抜けたときに、もう二度と殺しはしないと。
相手の戦意を折ることができれば勝利なのだ。
「ご主人様」
俺が木の上にたち、敵を観察してると……。
影から、ダークエルフの女が姿を現した。
「ヴァイパー」
「はい、あなたの性奴隷、ヴァイパーです♡」
……このアホな女はヴァイパー。
元魔王軍の幹部で、今は俺の式神となっている。
高い魔法の力をもつが……まあ……おかしなやつなのだ。
「これからご主人様は、あの者らを殺すのですか?」
「……殺しはしない」
「ですが、向こうは殺す気まんまんのようですが?」
みていれば、わかる。
聖騎士どもの顔は、みな、自分の正義を信じてる顔だ。
すなわち、これから倒しに行く敵は悪で、自分たちは正義であると。
「まったくもって愚かな連中ですね」
ヴァイパーが心底あきれたように、ため息交じりに言う。
俺も同感だ。が……。
「……みんな、それぞれの正義があるんだろ」
俺も火影にいたときには、一族のため、人を殺すのが正義だと思っていた。
でも……そのあとにエステルとであって、考えがかわった。
「100人いれば100人の正義がある。正義の反対が悪なんてことは、ないよ」
「深いお考えですね……さすがです」
ヴァイパーが微笑みながら言う。
馬鹿にしてる様子は無かった。
「それで、これからどうするおつもりで?」
「……影呪法で敵を無力化する。殺しはなし。黒獣化は使わない。ヴァイパー、おまえも殺傷力の低い魔法で援護しろ」
「心得ました」