73.
ヒカゲが決意を固める一方その頃。
天導教会の聖騎士、竜一は、仲間を率いて奈落の森にきていた。
「竜一、配置終わったぜ」
「次郎。ごくろうさま」
竜一と呼ばれた男は、聖騎士最強の称号を持つ。
13人いる聖騎士たちのなかで、彼が最も強く……。
「よし、全員に伝えるんだ。森の人間はひとりのこらず殺せと」
そしてもっとも、天導の教えに忠実であった。
「いいのかい? 奈落の森には黒獣以外の、普通の人間もいるっていうぜ? 竜一」
「殺していい。黒獣に与してる時点で、それはもう神の教えに背いているといい」
竜一たち天導の聖騎士達は、神の教えに忠実に動く。
彼らは神、そしてその被造物である人間のみを守る。
それ以外はどうでもいいし、むしろこの世に居てはいけない、エラーだと思っている。
「竜一を含めた8人に、通常の騎士たちが992。合計で1000の軍勢。相手はたった数十人……か。正直あんまり気が進まないね、弱い物いじめみたいでさ」
肩をすくめる次郎。
竜一は彼を殺さなかった。
なぜなら。
「それでもやるんだろ?」
「ご命令とあらば」
竜一にとって次郎は幼なじみでもある。
だから、殺さなかったのだ。
「よし、全軍……突撃! 黒獣を、討伐せよ!」
1000の軍勢が、森のなかへと進んでいった。